<独自>北朝鮮、朝鮮総連に新年の祝電送らず 統一政策巡り深まる溝 朝鮮総連結成70年

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が今年、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬(ホジョンマン)議長に毎年送っていた新年の祝電を送らなかったことが関係者への取材で分かった。25日に70年の節目を迎えた朝鮮総連だが、会員数の減少や財政難により、本国からの利用価値や関心が低くなっているとみられる。正恩氏は昨年、韓国を「敵対国家」と位置づけ、南北統一政策の放棄を表明したが、結成以来「祖国の自主的平和統一」を掲げてきた朝鮮総連との間に大きな溝が生まれている。

関係者によると、新年の祝電は正恩氏から朝鮮総連の活動に対する指針を示す役割を持つ。もっとも重要視されており、例年送られていた。

また、朝鮮総連幹部訪朝の取り消しや、4月に開催された平壌国際マラソンに朝鮮総連体育連合会が招待されなかったことなどから、総連内部では、本国の「総連冷遇論」も芽生え、不満や不信の声が噴出しているという。

朝鮮学校、補助金は減額の一途

北朝鮮メディアは25日、正恩氏が同日の朝鮮総連結成70年に合わせ書簡を記したと報じた。正恩氏は在日同胞の祖国訪問を奨励する考えを表明した。正恩氏は結成60年の際にも書簡を送っている。ただ、関係者は、新年の祝電とは重要度が違うとし、総連内部の不満や動揺を紛らわすためではないかとみている。

正恩氏は昨年1月の最高人民会議の演説で、韓国を「徹頭徹尾、第一の敵対国」と呼び、南北統一の放棄を表明した。朝鮮総連は、この動きを踏まえて朝鮮学校などに対し、「自主統一」「一つの民族(ハンギョレ)」などの表現を使った指導を禁じる内部文書を示した。

それまで「祖国の自主的平和統一」を綱領に掲げて活動してきた朝鮮総連内部では動揺や不満が広がっているが、本国からは、いまだに教科書修正などに対する詳細な指示はなく、学校関係者は当惑しているという。

朝鮮総連、代表団が訪朝 日本でも祝賀行事

25日で結成から70年となった在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)。節目を迎えるのに合わせ、朝鮮総連の代表団が20日から北朝鮮の首都平壌を訪問している。団長は北海道本部の丁聖漢委員長で、来月初旬まで滞在する見込み。

北朝鮮メディアによると、代表団は平壌にある金日成、金正日両氏の銅像を参拝したほか、金日成氏生家の万景台を訪問したとしている。

機関紙「朝鮮新報」によると、日本国内では、3月15日から5月25日の約70日間にかけて大衆運動を展開すると報じている。今月24日には東京朝鮮文化会館で記念大会を開催。27日には東京都北区で芸術公演を開催する予定だ。

そのほか、総連本部、支部でも同胞祝祭、講演会、芸術発表会、スポーツ大会など各種企画しているとしている。

朝鮮総連は産経新聞の取材に対し、「対応することはできない」と拒否した。これまでも総連側は産経新聞の取材に「取材は断っている」「応えられない」「担当者が不在」などとし、応じていない。

【在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)】 在日朝鮮人の権利を擁護するため昭和30年5月に結成。東京の中央本部のもと、各都道府県に地方本部を持つ。組織の綱領には北朝鮮と韓国の「自主的平和統一」を目指すと明記している。最盛期には会員50万人といわれたが、公安調査庁が明らかにした平成28年時点での会員数は「おおむね7万人」。在日本大韓民国民団(民団)へ移ったり、日本に帰化したりする人も多く、現在はさらに減少しているとみられる。

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