トランプ氏の関税措置に米国際貿易裁判所が違法の判断-政権に打撃

米国際貿易裁判所は28日、トランプ大統領の世界的な関税措置を巡り、その多くの部分について違法だと判断して差し止めを命じた。トランプ氏の主要経済政策にとり大きな打撃となりそうだ。

  トランプ政権は判断を不服として控訴する旨の通知を提出した。最終的には連邦最高裁判所の判断に委ねられることも考えられる。この訴訟は世界貿易に数兆ドル規模の影響を及ぼすことになりそうだ。

  現時点では、控訴審で裁判所がトランプ政権による関税再導入を認めない限り、対象の関税は恒久的に差し止めとされる。この判決はいわゆる略式判決で、正式事実審理なく原告側が下級審で勝訴したことを意味する。

  国際貿易裁判所の3人の判事から成るパネルは、トランプ氏が一部の関税措置を正当化するために国際緊急経済権限法(IEEPA)を適用したのは不当だとする民主党主導の州や中小企業グループの主張を全員一致で支持した。

  裁判所は政権に対し、今回の命令を「実行に移す」ため10日間の猶予を与えたが、関税撤回のために取るべき具体的な手続きの指示は示さなかった。

  トランプ氏は大統領権限の限界を試すかのような勢いで一連の大統領令を発令。これに対し数多くの訴訟が提起されているが、今回の国際貿易裁判所の判断は政権にとってこれまでで最大級の痛手の一つと言えそうだ。

  この判断により、トランプ氏の関税措置の大部分が停止される。対象には貿易相手国・地域に対する一律関税、中国などに対する高率関税、中国およびカナダ、メキシコに対する合成麻薬フェンタニルに関連した関税が含まれる。

  一方で、通商拡大法232条や通商法301条など異なる権限に基づいて鉄鋼・アルミニウム、自動車に賦課された関税には影響が及ばない。

  トランプ氏が大統領令で広範な関税措置を正当化するために根拠とした国際緊急経済権限法は、特定の緊急事態下でさまざまな金銭取引に関する権限を大統領に付与する。トランプ氏は、米国が抱える「大幅で持続的な」貿易赤字が国家安全保障および経済に対する「異例かつ並外れた脅威」に当たるとして、同法を用いて関税を導入することが許されると主張していた。

  国際貿易裁判所判事は、トランプ氏が世界的な関税措置を打ち出した大統領令と、対米報復措置を講じた国々に追加関税を課すとしたその後の大統領令のいずれも、同法で大統領に認められた権限を超えていると結論づけた。さらに、麻薬密輸への懸念を理由にメキシコとカナダに関税を課した大統領令についても、最終的に密輸問題の解決を目的としていないとして違法と判断した。

  ホワイトハウスのデサイ報道官は声明で「国家の緊急事態への適切な対処を判断するのは選挙で選ばれたわけでない判事の仕事ではない」と指摘した。

    ニューヨーク市マンハッタンにある国際貿易裁判所は、連邦裁判所制度の一部。関税を含む貿易に関する専門的な紛争を扱うために連邦議会が設立した。裁判所判断への控訴は、地裁判決の場合と同じ手続きで行われる。トランプ政権が異議を申し立てた場合、連邦高裁を経て連邦最高裁へと進むルートをたどる。他の連邦裁判所と同様、判事は大統領が任命する。

  この判断を受けて、米株価指数先物が上昇し、ドルも買われた。S&P500種株価指数先物は一時1.7%高、ナスダック100指数先物は2.1%高となった。29日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで一時2週間ぶりに146円台に下落した。

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時1週間強ぶりの高水準を記録。米10年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。

  林芳正官房長官は29日午前の記者会見で、判決が日米交渉に与える影響について問われたが、予断を持って回答するのは控えるとした。その上で、内容や影響を「十分に精査しつつ、適切に対応する」と述べた。

  原告の一角であるニューヨーク州のホークル知事(民主)はSNSへの投稿で裁判所判断を高く評価した。

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