切断遺体の頭部だけ廃虚マンションに「猟奇的というより運搬」「無計画に犯行」元科捜研が心理読む|FNNプライムオンライン

東大阪市の山中に、切断された国家公務員の男性の遺体が見つかった事件で、逮捕された男とよく似た人物が、男性のキャッシュカードで50万円を引き出していたことが新たに分かりました。

2人の間に一体、何があったのでしょうか

■逮捕の男は「金髪かつら」で変装し遺体を運んていたのか

去年12月28日、大阪市内の防犯カメラが捉えた映像には、キャリーバックを手にした男が映っています。髪は金髪です。

【記者リポート】「金髪の男が映っていたカメラから約500メートル。こちらの防犯カメラが捉えた同じ男は、約20分後、金髪から黒髪となっていました」

この男とみられるのが、逮捕された無職の大木滉斗容疑者(28)です。

大木容疑者は去年12月28日頃、東大阪市の山中の空き家などで、国土交通省・航空保安大学校に勤務する神岡孝充さん(52)の遺体を遺棄した疑いが持たれています。

切断された状態で発見された神岡さんの遺体。頭部は大阪市内で見つかります。

【記者リポート】「遺体の頭部が見つかったこちらのマンションには、誰も住んでおらず、高い塀があって中にも入れない状態です」

廃虚となったマンションに、神岡さんの頭部と保冷バックのような銀色の袋が置かれていました。

■逮捕の男と被害者は同じマンションの住人

無職の28歳の男と52歳の国家公務員。年の離れた2人は同じマンションに住んでいるという共通点がありました。

大木容疑者が逮捕されるまでの足取りから浮かびあがったある謎。

最初に遺体が発見されたのは東大阪市の山中。2人が住むマンションからは直線距離で約15キロです。

【記者リポート】「大木容疑者は近鉄額田駅まで電車で移動してきたとみられています。その際、金髪から黒髪に変わっていたということです」

大木容疑者とみられる人物はかつらで変装し、遺体が入ったとみられるキャリーバッグを持ちながら電車で移動。

神岡さんの遺体を遺棄したとみられるのは去年12月28日ごろ。

同じ日、大阪市内に設置された防犯カメラが大木容疑者とみられる男の姿を捉えていました。

午後6時20分頃、金髪姿でキャリーバッグと袋を持つ大木容疑者とみられる男。キャリーバックの上には、保冷袋のようなものが確認できます。

約20分後に、別のカメラが捉えた大木容疑者とみられる男は、金髪ではなく黒髪になっていました。

大木容疑者はこの後、電車で東大阪市の遺棄現場に向かったとみられます。

■遺体で発見された神岡さんの妻「突然夫と連絡が取れなくなった」

【神岡さんの妻】「突然、夫と連絡が取れなくなった」

異変があったのは去年12月27日。自宅で仕事を終えた神岡さんは、その日のうちにフィリピンにいる妻に会いに行く予定でした。

しかし、約束の日になっても神岡さんが現れず、29日に妻が警察に連絡したことで、事件が発覚したのです。

去年10月ごろに神岡さんに会ったという同級生は…。

【神岡さんの小中学校の同級生】「フィリピンの子と結婚すると聞いた。年末もフィリピンにいると思ってた。普通の真面目なやつですよ。もうただ単にショックですよ」

■「就職活動を頑張る」と父親に話していた容疑者

一方の大木容疑者について…。

【大木容疑者の父親】「1月中旬から息子と連絡が取れず、心配になって様子を見に来た」

1月20日、大木容疑者と連絡が取れないことを心配した父親が、マンションを訪れました。マンションでは神岡さんの行方を追う捜査員が聞き込みをしていて、大木容疑者の父親が「息子も行方不明」だと告げたのです。

関西テレビの取材に対し父親は…。

【大木容疑者の父親】「最後に会ったのは去年の11月末。これから就職活動頑張るからと、スーツを2着買いに行った」

しかし、大木容疑者は死体遺棄の疑いで逮捕。

また、逮捕前の新たな行動が明らかになりました。1月10日、大木容疑者とよく似た男が大阪市生野区のコンビニで神岡さんのキャッシュカードを使い、現金50万円を引き出していたのです。

父親に「就職活動を頑張る」と言っていた大木容疑者。一体、何があったのでしょうか。

■犯罪心理学の専門家 現場で容疑者の心理を読み解く

遺体をキャリーケースに入れ「電車」で運ぶという異様な事件で逮捕された大木容疑者は、どのような心理だったのでしょうか。

静岡県警の科学捜査研究所出身、犯罪心理学に詳しい関西国際大学の中山誠教授に聞きました。

【関西国際大学 中山誠教授】「猟奇的というよりかは、死体の運搬をしやすくするため、バラバラにして運びやすくするため。それがバラバラにする主たる目的ですね」

【関西国際大学 中山誠教授】「殺害後の計画がしっかりしていなくて、遠ざけたいっていう気持ちはあったけど車がないあるいは運転してくれる仲間がいない。遠くへ運ぶためには、山の中に捨てようということで電車に乗って運んだんじゃないかと思っています」

電車に乗った大木容疑者が降りたのは、東大阪市の近鉄額田駅。

駅から遺体を遺棄した現場まで実際に歩いてみると、直接向かって約10分ほどの距離でした。

【関西国際大学 中山誠教授】「駅からどれぐらい離れているかということも、感覚的に分からなくなっているでしょうし、道がかなり細くなっているから、どこまで行けるか分からないし、そろそろこの辺でいいんじゃないか。屋内に捨てる方が見つからないだろうと。最初からここに決めていたとか、計画的に考えてここまでたどり着いたのではないと思いますね」

そして頭部が見つかった大阪市内の廃墟マンションへ。現場を確認し、大木容疑者の心理を読み解きます。

【関西国際大学 中山誠教授】「どうやって捨てた?投げ捨てた?」

このマンションの周囲には高い囲いがあります。

【関西国際大学 中山誠教授】「ここが閉鎖されていたということを知っていたんでしょうね」

ここから2人が住んでいたマンションは歩いて10分ほど。2人の関係性はいまだ同じマンションの住人としか明らかになっていません。

【関西国際大学 中山誠教授】「エレベーターで一緒になるぐらいしか、接点はないように思いますね。どこで接点があったか、そこが一番知りたいところです。金銭上のトラブルとか考えられますけど」

2人の間に一体、何があったのか?

大木容疑者は調べに対し容疑を認めていて、警察は神岡さんの殺害に関与したとみて捜査しています。

■「金銭目的ではない可能性。無計画に犯行か」専門家指摘

容疑者と被害者の関係性、それから犯行の動機はどこにあったのか。事件の流れを整理します。

・去年12月27日 神岡さんがテレワークをした後、行方が分からなくなる ・12月28日 大木容疑者とみられる人物がキャリーケースを引く様子が防犯カメラに映る

2人の関係性ですが、大木容疑者と神岡さんは同じマンションに住んでいて、それぞれマンションの4階と9階に住んでいました。現状それ以外の関係性は分かっていません。

2月6日に新たに分かったことがあります。

・1月10日 大木容疑者と似た男が神岡さんの口座から、神岡さんのキャッシュカードを使って50万円を引き出す

犯罪心理学の専門家、関西国際大学 中山誠教授によると、「最初にお金を引き出したのが1月10日で、亡くなったのが28日頃ですから、かなり時間が空いている。金銭目的ではない可能性がある。無計画に犯行をした後、金に困ったか。カードの暗証番号をなぜ知ったかが一番の疑問点」だということです。

■「頭部だけ別に置いたのは、非常に混乱、破綻」と菊地弁護士

犯罪心理学の専門家は金銭目的ではない可能性があると指摘しています。

【菊地幸夫弁護士】「私もそう思います。報道によると、凶器が出てきておらず、窒息が死因ということは、首を絞めたんじゃないか。そうすると事前に脅す目的で刃物を持っていたのではない。争った形跡もないということです」

【菊地幸夫弁護士】「遺体をバラバラにして、頭部だけ別なところに置いた。頭部が出てきて誰か分かってしまうと、犯行が自分にすぐ結びつくような人間関係にあったと言えるのか。だから暗証番号も知っていたのか。そういう構造かなと思うんです」

また菊地弁護士は、遺体の遺棄状況が事件のポイントだと言います。

【菊地幸夫弁護士】「ポイントはやっぱり遺体の遺棄状況などです。かつらをかぶっている。恐らく事件が起きた翌日運搬する時にかつらをかぶっているのは、急いで買いに行ったんじゃなくて、もともと持っていたんじゃないか。自分の容貌を隠すという意味で計画的ですが、遺体の頭部だけマンションに置いたというのは、非常に混乱して、破綻している。だから計画的な犯行というよりは、非常に戸惑いながらやってしまったのかなと思います」

今後の捜査の進展が待たれます。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年2月6日放送)

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