自衛隊はホルムズ海峡に出動可能か 「米が国際法違反」前提なら厳しく

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イランがホルムズ海峡を事実上封鎖し、日本のエネルギー危機が絵空事ではなくなってきた。政府は2010年代半ばの安全保障関連法の制定を巡る議論の中で、自衛隊の活動を広げる事例として同海峡の封鎖を挙げた。機雷の掃海などを想定した。今回、自衛隊が動く余地はあるだろうか。

自衛隊がホルムズ海峡周辺で何らかの行動をするならば、安全保障関連法に沿った3つの選択肢が考えられる。

まず集団的自衛権の行使だ。日本に直接攻撃がなくても、日本の存立が脅かされるような明白な危険がある場合に「存立危機事態」に認定できる。それが集団的自衛権を用いる前提となる。

安倍晋三首相(当時)は15年、ホルムズ海峡での機雷掃海に向け存立危機事態に認定する可能性についてたびたび答弁した。機雷掃海は武力の行使とみなされる。

同盟国の米国がイランの攻撃を受けた際、米国を支援するため、集団的自衛権を行使して海峡にまかれた機雷を除去するシナリオだ。

自衛隊は1990年代の湾岸戦争の停戦合意後、自衛隊法に基づいて中立の立場でペルシャ湾の機雷の掃海にあたった。エネルギー輸入をシーレーン(海上交通路)に依存する日本の自衛隊は機雷の掃海部隊の能力が高いとされる。

安倍氏は「封鎖されれば直ちにと申し上げているのではない」とも述べた。日本が攻撃を受けたのと同じくらい深刻かつ重大な被害が生じるかが基準になると説明した。

木原稔官房長官は11日の記者会見で、ホルムズ海峡での機雷の敷設が存立危機事態にあたるかを問われ「該当するといった判断は行っていない」と否定した。

脅威のレベルが集団的自衛権を行使するほどではない場合はどうか。放置すれば直接の武力攻撃に至る恐れのある「重要影響事態」に認定することが想定される。

米軍と外国軍を対象に給油や弾薬の提供といった後方支援ができるようになる。日米安全保障条約や国連憲章の目的達成という条件をつけている。

もうひとつ、集団的自衛権を用いないパターンとして「国際平和共同対処事態」がある。国際社会の平和や安全への脅威がある際、国連憲章の目的に従って共同で対処する活動を指す。自衛隊は後方支援にあたる措置がとれる。

今回の米国とイスラエルによるイラン攻撃の状況を予見するような国会審議が15年になされている。

安倍政権と野党だった民主党の岡田克也代表の同年5月27日のやりとりだ。安倍氏は先制攻撃した側の国に後方支援する可能性について「あり得ない」と強調した。

中谷元防衛相や岸田文雄外相は、先制攻撃が国際法上認められていない点を指摘した。岡田氏は後方支援だけでなく、存立危機事態に認定して集団的自衛権を行使することも認めないのか問うた。岸田氏は「まったくあり得ない」と明言した。

ここでいう国際法は国連憲章51条と考えられる。武力攻撃を受けた場合に限り、国連安全保障理事会が必要な措置を取るまで個別的・集団的自衛権の行使を認める。

岡田氏は「米国が先制攻撃をした場合」について重ねて確認した。安倍氏は「仮にある国がなんら武力攻撃を受けていないのにもかかわらず、違法な武力の行使をすることは国際法上認められない。わが国がそのような国を支援することはない」と語った。集団的自衛権の行使、後方支援とも該当するとの認識を示した。

高市早苗政権は今回、米軍の攻撃に関して法的評価を控えている。過去の政府答弁を踏襲し、かつ米軍を支援するためには、米軍の攻撃が国際社会で禁止された先制攻撃にはあたらず、国際法違反でもないという立場を明示する必要がある。

このハードルを越えるのは容易ではない。今回の米軍の行動は国連の議論を経ておらず、イランによる武力攻撃に対応するものでもなかった。

慶大の鶴岡路人教授(国際政治)は今回の米国の攻撃に関して「国際法違反が濃厚だが、証拠が不足しており法的な断定は難しい」と話す。

同時に「国連憲章に反していたとしても、イランのこれまでの行動への評価を含め、総合的には別の判断もありうる」と語った。日本が米軍の支援にあたるならば「イランの攻撃への法的評価は避けられない」と述べ、政府はさらなる説明が必要になるとの考えを示した。

野党は追及を強める。9日、衆院予算委員会で中道改革連合の後藤祐一議員が質問に立った。「国連決議があって、みんなでイランが悪いから軍を出そうと決まれば別だが、そうでもない限り自衛隊を出せないということでよろしいか」と迫った。茂木敏充外相は「国内法に合致した形でなければ活動はできない」と答えた。

立憲民主党の辻元清美参院議員は9日、ホルムズ海峡情勢と存立危機事態の関係についての質問主意書を出した。政府は19日に答弁書を閣議決定する予定だ。

国際法上の評価を避けながらも、日本の平時の活動として自衛隊を派遣する道はある。20年に米国とイランの緊張が高まった際、日本政府は民間船舶を守る独自の取り組みとして、防衛省設置法に基づく「調査・研究」の名目で護衛艦を派遣した。

日本に関係する船舶が不審船に襲われるなど、不測の事態の際には自衛隊法に基づく「海上警備行動」を発令して船舶を保護するとした。1年ごとに延長され、現在も情報収集活動にあたっている。オマーン湾やアラビア海などが範囲で、当初からホルムズ海峡やペルシャ湾内では活動していない。

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