モノマネ上手のセキセイインコの発声の仕組みは人間に近いものだったことが判明!(2025年3月22日)|BIGLOBEニュース

Photo by:iStock

 インコやオウムなど、鳥の中には驚くほどの人間の声マネが上手い仲間がいる。新たな研究によると、そうした鳥たちの脳が、人間の声を司る領域と同じように働いていることが明らかとなった。

 ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルスのマイケル・ロング博士らの研究によると、セキセイインコの脳には人間の言語中枢と似た構造があるという。

 人間と同じように「鍵盤」のように発声が音と結びついており、それを組み合わせることで、あらゆる音を脳内に記録しておくことができるんだそうだ。

 ペットとしても人気のある「セキセイインコ[https://karapaia.com/archives/52240633.html](Melopsittacus undulatus)」は、もともとオーストラリア原産の鳥だ。

 鮮やかなグリーンが美しいが、和名のセキセイとは背黄青のこと。最初に伝わった個体の背が黄と青だったことから、そう呼ばれるようになった。

 野生のセキセイインコは、オーストラリア内陸部の乾燥地帯で群れを作り、その歌声で仲間とコミュニケーションを交わしながら生きている(生来の社交上手なようで、びっくりするくらい人懐っこい[https://karapaia.com/archives/52241703.html])。

 だがペットのセキセイインコでよく知られるのは、その類稀なるモノマネ能力だろう。この鳥は鳥だというのに人間の言葉を覚えて、それを真似るのだ。

 その記憶力もバツグンで、米国で飼育されていたパックという名のインコは、1728語もの単語を覚えて、1994年ギネス世界記録[https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/70967-largest-vocabulary-for-a-bird-ever]に認定されている。

Image byAnil sharma[https://pixabay.com/users/anilsharma26-13475484/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6910683]fromPixabay[https://pixabay.com//?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6910683]

 はたしてセキセイインコは、どうやって人間の声を真似ているのか?

 今回、この謎を解明するために、ニューヨーク大学ランゴーン医療センターのマイケル・ロング氏らは、セキセイインコの脳の鳴き声を司る領域に電極を移植し、モノマネの際の脳の活動を記録している。

 鳥の声は、喉にある「鳴管(めいかん)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%B4%E7%AE%A1]」という器官によって作られている。

 セキセインコの脳がこの器官をどうやって操作しているのか観察すれば、そのモノマネの才能を知るヒントが得られるかもしれない。

Unsplash[https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%9C%A8%E3%81%AE%E6%9E%9D%E3%81%AE%E4%B8%8A%E3%81%AB%E5%BA%A7%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E7%B7%91%E3%81%AE%E9%B3%A5%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AB-uzcHURQBnbQ?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash]

 そこから明らかになったのは、セキセイインコの脳の働きが人間によく似ているということだ。

 比較のために調べられた「キンカチョウ」というモノマネをしない鳥の場合、歌声は複雑で解読不能な神経活動の配列によって脳内に記録されているようだった。

 ロング氏は、キンカチョウの脳波を見ても、何が何だかさっぱりわからなかったという。その脳から”音符”のようなものはまったく読み取れず、「バーコード」のようだった。

 キンカチョウは確かに複雑な歌を学ぶことができる。だが、その脳活動を観察する限り、学んだ歌をアレンジしたり、即興で歌ったりすることは得意ではないようだ。

 ところが、人間やセキセイインコの脳の働きは、機能がはっきりとした”モジュール(部品)単位”で構成されているという。

 たとえば人間なら、唇や舌の筋肉の特定の動きが特定の神経パターンと結びついている。

 実際、その関係はかなりはっきりしているので、神経パターンからどのような言葉を話そうとしているのか解読しようという試みもある。

 セキセイインコも同様で、鳴き声の音色に応じた神経細胞がある。ロング氏によれば、「個々の脳細胞が子音や母音の音を鳴らしている」かのようで、楽器の「鍵盤」を思わせるという。

 これらを組み合わせることで、基本的にどんな声でも脳内にプログラムしておくことができる。どうやら、これが彼らのモノマネの才能の秘訣であるようだ。

 その神経活動は、鳴き声ときわめて密接に連動している。そのため、たった5つの神経細胞が発するシグナルから、鳴き声の揺らぎ周波数をほぼ正確に描き出すことまでできたという。

 ロング氏によれば、人間以外の動物で脳と声との関係が記録されたのは史上初のことであるそうだ。

Image byJosef Stückel[https://pixabay.com/users/dragh-4722718/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=8042770]fromPixabay[https://pixabay.com//?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=8042770]

 ロング氏らは今後、セキセイインコの脳内で”鍵盤”を演奏していると思われるより高次の領域を特定しようとしている。

 たとえば、セキセイインコはどのようにして音を選択し、それ以外の音を出さないようにしているのか? またセキセイインコはそれによって何を伝えようとしているのか?

 こうしたモノマネが得意な鳥の脳を調べることで、いずれは失語症のような人間の言語障害を治療する新しい方法につながる可能性もあるとのことだ。

 この研究は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-025-08695-8]』(2025年3月19日付)に掲載された。

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-025-08695-8] / Popsci[https://www.popsci.com/environment/budgie-brains-reveal-parallels-between-parrot-and-human-speech/] / Interestingengineering[https://interestingengineering.com/science/researchers-find-how-budgerigars-mimic-human-speech]

関連記事: