ハーバード大が26ドルで購入したマグナ・カルタの写本、実は原本だった

© Harvard Law School

まさかのお宝発見!

1946年、ハーバード大学は25ドル70セントでマグナ・カルタの写本を購入。マグナ・カルタは1215年に作られたイギリス憲法の土台となった重要文書で、「大憲章」と訳されるもの。その写本が、実は何百万ドルもの価値がある「原本」であることが判明しました。

どうやって見つかった?

このマグナ・カルタの写本と思われていた原本は、ロンドン・キングス・カレッジの中世史教授のデイビッド・カーペンター氏がハーバード大学図書館ウェブサイトのデジタル所蔵品で発見することになった2023年まで、ハーバード・ロー・スクール図書館のアーカイブに埋もれていました

ハーバード・ロー・スクールの声明の中で、カーペンター氏はこの文書を「イギリスの政治発展における基本的な段階の顕著な証」であり、「世界で最も価値のある文書の1つ」と表現しています。

ハーバード・ロー・スクール図書館のデジタル所蔵品で「HLS MS 172」と表示されていたこの文書は、「やや擦れと湿気によるシミがある、1327年のマグナ・カルタの写本」として記述されていました。

原本だとすぐに見破った教授

写本の研究をしていたカーペンター教授はそれを見てすぐに、これが原本である可能性に気づきました。そして文書の真正性を確認するため、イースト・アングリア大学の中世研究教授であるニコラス・ヴィンセント氏に協力を要請。ふたりはハーバードの図書館司書が紫外線とスペクトル撮影で撮った画像を使用し、HLS MS 172の文書を1300年に作成された他のマグナ・カルタの原本と比較しました。

カーペンター教授とヴィンセント教授の研究・調査によって、HLS MS 172の寸法は原本に見られるものと一致していることが明らかになりました。また、冒頭の「Edwardus」の大きな大文字「E」や最初の行の伸ばされた文字など、筆跡も類似していることを発見したのです。

近代憲法の基となっている

マグナ・カルタは1215年にジョン王によって作成され、「君主が法の上に立つものではない」という原則を文書化した最初の文書でした。王であっても法には従わなければならないという内容を記した「最初期の人権宣言」と考えられています。以降、マグナ・カルタはアメリカ憲法を含む多くの憲法に影響を与えています。

1215年に最初のマグナ・カルタが記された後、5つの版が書かれました。今回発見された文書は、1300年にエドワード1世が王の印章で承認した原本で、1300年版として現存しているのは他に6部のみとなっています。

この発見は、ハーバード大学が資金削減や強い政治的な圧力に直面している今だからこそ、いっそう意味深いものとなっています。

カーペンター教授は声明の中で「この文書がどこから来たのかという背景は本当に素晴らしいです。今のアメリカで自由や憲法の価値が問われている中、この場所で見つかったという事実は、まさに奇跡的と言えるほど完璧です」と述べています。

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