BYDなど中国自動車大手、適時支払いを約束-仕入れ先はなお懐疑的
中国の自動車メーカー各社はサプライヤーへの適時支払いを約束したが、これが順守されるかどうかについて仕入れ先の多くは懐疑的だ。中国当局は長期化する自動車業界の価格競争への監視を強めており、メーカーの動きは当局の懸念を和らげる狙いがある。支払いを遅らせる慣行は、サプライヤーの資金繰りを圧迫してきた。
6月上旬に規制当局と自主規制改善の必要性について協議した後、比亜迪(BYD)や浙江吉利控股集団など業界大手は、サプライヤーへの支払いを60日以内に実施すると表明。国際標準に近づく動きで、BYDを含めて支払いサイクルが数百日にも及ぶ企業にとって大きな転換となる。
これに関連し、中国工業情報化省は、「支払期間が長期に及ぶことは供給業者の資金繰りを一層困難にし、業界にとって好ましくない」との見解を示している。
先週香港で開催された自動車やサプライチェーン会社が集まる展示会に参加した部品メーカーによれば、長い支払いサイクルは業界に深く染みついた慣行で、自動車メーカーは抜け道を探す可能性があると話す。
配線・電機部品メーカーの市場開発技術者によると、代替手段の一つは約束手形の発行による先延ばしだという。
60日以内の支払いを約束した自動車メーカー17社のうち、国有の上海汽車集団(SAIC)と北京汽車集団(BAIC)が約束手形を使わないと明言した一方で、他のメーカーは支払い方法について明言しなかった。
約束手形やサプライチェーン・ファイナンスは、中国の自動車業界で一般的だ。BYDの「Dilink」はよく知られた仕組みの1つで、手形は後日に償還が可能。他者との取引や手数料を支払って早期に現金化することもできる。発行総額は、BYDが最後に開示した2023年5月時点で4000億元(約8兆円)に上る。
手形を担保に借り入れが可能なため、一部のサプライヤーは業界慣行に不満を持っていないが、支払いの遅延が広がっている現状は、価格競争による利益圧迫に業界が苦しんでいることを示している。
会計コンサルタント会社GMTリサーチの報告書によれば、24年6月末時点のBYDの実質的な純債務額は、サプライヤーへの支払いの遅延や他のファイナンスによって簿価の10倍超に達しているという。
とりわけ厳しい影響を受けているのが中小企業だ。欧州や韓国の大手ブランド向け車載ライトの部品を供給する企業の幹部によると、自動車メーカーからの支払いが早くても半年先になることが珍しくないという。この幹部は「競争の激しいこの業界で中小企業が生き残って、成長していくのはますます難しくなっている」と語った。
政府機関および大企業に対し60日以内の支払いを義務づける規則は6月に施行された。約束手形のような現金以外の支払い手段を中小企業に押し付けたり、それによって支払いを引き延ばしたりすることも禁じている。
同幹部は、自社が自動車メーカーへの直接供給を行っていないことを踏まえて、「60日以内の支払い対象に含まれない可能性がある」と不安を示しながらも、議論を通じて広範な改善につながることに期待を示した。
中国では昨年、新エネルギー車(NEV)メーカーのうち16社が撤退、13社が新規参入する中で、初めての業界再編が起きた。競争が一段と激化する中、多くの業界関係者は様子見をしている。
車載半導体メーカーの営業責任者によると、競争の激化によりすでに倒産した顧客もおり、債権の回収ができなくなっているという。
同営業責任者は、法的措置を取ることは可能だが全額回収は不可能だとしたうえで、政府の政策が定着するかどうかは、その実行力にかかっていると語った。
原題:China Parts Suppliers Are Wary of Carmakers’ Bill Payment Pledge(抜粋)