株急落でも米金融当局に救済措置は期待できず-政策ウオッチャー

トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争を引き金に金融市場で猛烈な売りが世界的に広がったことで、米金融当局が相場下落に歯止めを掛けるべく介入するとの臆測が高まった。しかし、複数の米金融政策ウオッチャーは期待できないと言う。

  インフレ率は依然として当局目標を上回って推移しており、関税発動による値上げも見込まれる中、エコノミストや市場アナリストは、実体経済への影響が出るまで当局は利下げを待つと予想する。ただ、公式統計に影響が表れるには数カ月を要する可能性がある。

  モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏は7日にブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「リセッション(景気後退)に陥らないなら、米金融当局は短期的にこのインフレを静観することは難しいだろう。当局は予見できる将来は、現状維持を続ける」との見方を示した。

  米金融当局は危機的状況において市場と経済を安定させる措置を講じてきた実績があり、深刻な景気後退の可能性を回避すべく緊急利下げを実施したこともある。前回緊急利下げに乗り出したのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)初期の2020年3月だった。

  金利スワップ市場では、当局が5月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合よりかなり早い来週までに0.25ポイント利下げに踏み切るとの予想が7日の早い時間に約40%に達する場面があった。ただその後、そうした見方は後退している。

  しかし差し当たり、現在のデータは米景気が減速傾向にあるものの、米経済の安定を示している。3月の雇用統計では、関税導入前の労働市場が堅調だったことが示され、雇用者数の伸びは市場予想の全てを上回った。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事は7日、関税の影響は経済成長よりもインフレに対する方が差し迫っているとの認識を示した。

市場のストレス

  当局はまた、流動性の低下による信用市場の機能まひを防止するため一時的な融資制度を活用したケースもあり、20年のほか金融危機時の08年にもそうした措置を講じた。

  市場に現在、ストレスがかかっていることは明らかで、7日に株価は急落し、3営業日に世界の株式時価総額は約10兆ドル吹き飛んだ。資金の避難先として米国債や円を選好する動きが広がり米国債相場は取引開始後に上昇したが、その後下落し、イールドカーブ全般に利回りが上昇した。

  しかし、金融市場のこうした痛手でも、FRBが介入し得るような流動性低下はまだ顕在化していない。

  INGのチーフ国際エコノミストであるジェームズ・ナイトリー氏は「市場の機能不全から生じる金融安定リスクがない限り、現段階でFRBが介入するとは思えない」と述べた。

原題:Stocks Are Cratering. Don’t Expect the Fed to Come to the Rescue(抜粋)

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