マダガスカル大統領が国外逃亡 アフリカで過去5年間で8回目のクーデタ なぜ政変が多発するか #エキスパートトピ

六辻彰二国際政治学者
マダガスカルの首都アンタナナリボで市庁舎に迫るデモ隊(2025.10.14)。(写真:ロイター/アフロ)

アフリカ南東の島国マダガスカルのアンドリー・ラジョエリナ大統領は10月12日、国外に逃亡した。

マダガスカルではインフレだけでなく停電や断水も続き、先月から若者を中心に抗議デモが拡大した結果、治安部隊との衝突で20人以上が死亡した。

この状況で軍が抗議活動の支持にまわったことで、ラジョエリナなど政権幹部は孤立し、相次いで国外に逃れたのだ。

ただし、こうした変動はマダガスカルに限らない。

アフリカではこの数年、かつてなく抗議活動が広がっていて、それに呼応して2020年からだけでクーデタが7回成功してきたからだ。

ココがポイント

Z世代(1990年代後半―2000年代前半生まれ)が主導した反政府デモに軍が同調し、クーデターが起きた。出典:ロイター 2025/10/14(火)

先週末に仏軍機でマダガスカルを離れたもようだ。出典:時事通信 2025/10/14(火)

一部のメディアや論者はアフリカ各国で広がる抗議デモと政治変動を“アフリカの春”と呼ぶ。出典:六辻彰二 2024/11/14(木)

エキスパートの補足・見解

クーデタが発生した国にはそれぞれ事情があるが、共通点もある。とりわけ無視できないのは、海外の一般的反応と異なり、ほとんどのクーデタが多くの国民に支持されることだ。

マダガスカルの場合も、クーデタを歓迎する声の方が目立つ。

なぜクーデタが支持されるか。

その最大の要因は生活苦の広がりだ。アフリカの多くの国は2020年以降、新型コロナ感染拡大やウクライナ侵攻の影響で経済が停滞し、インフレや食糧不足も深刻化している。

昨年、アフリカ平均のインフレ率は15%に達した。これは地域別でみて最も高い。

ところが、多くの国で政府は有効に対応できていない。

アフリカの多くの国は多民族国家で、そのなかでほとんどの政治家は出身民族や特定の支持基盤を優遇して立場を固めやすい。それは政治腐敗と紙一重だ。

たとえ選挙が行われても、買収などが横行していて政権交代は難しい。

こうした背景のもと、各国では年長者の既得権益に批判的な若者を中心に抗議デモが拡大しやすくなっており、マダガスカルのように軍の一部がこれに呼応するパターンは珍しくない。

インフレと生活苦に歯止めがかからないことから、アフリカでは今後も抗議デモとクーデタの連鎖が広がる公算は高いといえる。

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