ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが示すAI時代のインフラ戦略 今後は「上り」「低遅延」が重要に:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

 10月13日から16日の4日間に渡り、千葉県の幕張メッセでCEATEC 2026が開催された。会期2日目にあたる14日には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社幹部が集結。「AI×6G」をテーマに、AIと通信をどう融合させていくかが語られた。4社とも、ネットワークにAIを取り込み、通信品質の改善や省電力化に利用しているが、その取り組みが紹介された格好だ。

 一方で、AIの利用が拡大し、社会に広がっていくことで、必要とされるネットワークも変わろうとしている。人間がスマホやスマートグラスを使って通信すれば上りの帯域が必要になるが、それに加えて、ロボットや自動運転などでは遅延の小ささも重要になる。「ネットワークのためのAI」と「AIのためのネットワーク」に4社がどう取り組んでいるのか。講演から、その注目点をまとめた。

CEATECでは、AIがモバイルのネットワークをどう変えていくかを4社の幹部が語った。写真はドコモが目指す「AI for Network」と「Network for AI」

 日進月歩以上のスピードで進化しているAIのフロンティアモデルだが、キャリアのネットワークも、その恩恵や影響を受け始めている。基地局やネットワーク全体の制御にAIを使う一方、AIが社会に浸透していくにつれ、そのトラフィックをどうさばいていくかがキャリアにとって新たな課題になりつつある。CEATECでは、そんな各社のAIに関する取り組みが披露された。

 AIの活用という観点では、各社がネットワークの制御や通信の効率化、さらには省電力化などに生かすAIを導入済みで、商用環境への展開に向けた実証実験に成功しているものも多い。例えば、無線で端末の接続などをコントロールする制御信号やその中のパイロット信号を、AIで最適化するというドコモの実証実験はその1つだ。

パイロット信号を送信する代わりに、受信データをAIで分析。スループットを改善する実験を行っている

 ドコモは、ノキアやSKテレコムと共同でチャネル推定を行う際に必要なパイロット信号をなくし、代わりにAIを活用。「CU(Central Unit)にGPUを置いて、デバイスと連動させ、周波数の伝送効率を上げる」(代表取締役副社長CTO、CAIO 坪谷寿一氏)実験に成功している。これにより、パイロット信号で使っていた帯域をデータの送受信に回せるため、より高速な通信が可能になる。

ドコモの坪谷副社長が、その実験内容を紹介した

 KDDIは、制御信号のリソースをどう割り当てるかにAIを活用し、通信不能になる端末をなくしていく分散型AIを、全国100の混雑エリアに導入し、実証実験を行った。これまでは、一律に制御信号を割り当てていたこともあり、混雑エリアでは、あふれた端末が制御不能になり、通信を開始できなかった。AIでこれを分散させ、広く薄く配分することで、全体的に通信が可能になるというのがこの取り組みだ。

KDDIはCEATECに合わせ、分散型AIで制御信号のリソース割り当てを動的に変更する実証実験の成果を披露。この取り組みは、商用環境で行われた

 KDDIで執行役員専務CTO コア技術統括本部長を務める吉村和幸氏は、「混雑時の状況を改善するには、それぞれの周辺に対応する莫大(ばくだい)なパラメーターがあればいいが、人でできるもの(量)ではなかった」とAIを導入するメリットを語る。この実証実験では、混雑時の上りの速度が60%向上した他、低速度になっていたエリアを30%削減することに成功している。AIが「設定を判断することで、品質改善につながる」(同)というわけだ。

KDDIの吉村専務は、設定の判断をAIに任せることで、品質改善につながると話す

 ソフトバンクは、商用展開を予定しているAI-RAN基盤のAITRAS上で動作する、レーダー検知の機能を披露。米国海軍が使うレーダーシステムを5Gの信号の中からリアルタイムで検知し、干渉を抑制。AIで「その後の挙動を決めるということも実現している」(技術統括 先端無線技術統括部 船吉秀人氏)という。

ソフトバンクの船吉氏が紹介したAI-RANによるレーダー検知。センシングの一部ではあるが、AIによる計算を無線品質の向上に生かすという点は、他社の取り組みと共通している
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 そのネットワークを利用するサービスにAIが組み込まれ、さらに人間だけでなく、ロボットや自動運転などのAIそのものが発生させたトラフィックがネットワークに乗ることで、必要とされる要件も変わろうとしている。ダウンリンクとアップリンクの割合が変わり、後者の重要性が増しているのは、その一例といえる。

 ドコモの坪谷氏は、自社のデータを引きながら「特に上りのトラフィックが、想定を超える1.2倍ではないのではないかということで、設備の増強に拍車を掛けている」と話す。AIの発生されたトラフィックではないものの、既に「イベントでは、アップリンクの(割合が)徐々に上がってきていることが顕在化している」(同)という。

ドコモによると、上りのトラフィックが増加傾向を示しているという

 例えば、スマホとリンクしたAIグラスで目の前にあるものを映像として捉え、それをサーバ上にあるAIで認識して、結果を返すというときには、写真や動画のデータを送信し続けることになる。クラウド上のAIアシスタントとのやりとりも、会話となれば音声データのアップロードが必要だ。こうしたサービスが定着すれば、SNSや動画サイト、メッセンジャーなどでの送信とは頻度も大きく変わってくることが容易に想像できる。

 こうしたトラフィックに対処する一例としてドコモの坪谷氏は3つの周波数帯に対応した「Tri-Band Massive MIMO」を挙げ、下りだけでなく「上りも4倍近いスピードになることを確認している」とその成果を強調した。現在は、イベントなどのトラフィック対策に活用しているが、今後は「フィールドに展開していく計画」(同)だという。

Tri-Band Massive MIMOの導入で、上りのスループットも大幅に向上した

 また、AIに素早く要求を出し、返ってきた応答をどのように反映させるかという点では、遅延も今まで以上に小さくしていく必要がある。ソフトバンクの船吉氏は、「リクエストやプロンプトに対して、どれだけ早くトークンを返すか。場合によっては、1秒に100回返さなければいけない。分散をすることで、物理的に(AIが置かれている場所が)近くなり、応答時間も早くなる」と語る。

 丹波氏は、ロボットを例に挙げつつ、「動いているものが時速60kmで近づいてくると、1秒たったら16~17m進みます。仮に10分の1の時間で反応できたとしても、その間に1.7m進んでしまう。その相手に対して『止まれ』と言っている間に、指示が伝わったときにはもうぶつかっている」と話す。AIのフィードバックを反映させるにも、低遅延が重要になるというわけだ。

ソフトバンクは、AIの浸透で、スループットではなく、トークンをいかに素早く送受信できるかの低遅延が重要になるとし、ネットワークの質的な変化が起こる見通しを語った

 ソフトバンクのAITRASは、基地局そのものが計算基盤になっているため、こうした処理を低遅延で行うことができる。同様に、ドコモの坪谷氏も、ドコモビジネスの取り組みとしてGPUやAIモデルそのものをネットワーク内部に配置していく方向性を示しており、各キャリアとも狙いは近い。6Gに向け、こうした融合がより進んでいくことになりそうだ。

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