参議院選挙:「国民は総選挙に真剣でなければなりません」100年前の話です…「初めての普通選挙」ポスター展 : 読売新聞

 選挙権の納税要件が撤廃された戦前の普通選挙法に基づき、1928年に初めて実施された衆院選のポスターなどの展示会が、鳥取県南部町の祐生出会いの館で開かれている。20日投開票の参院選に合わせて「一票の大切さを考えてもらおう」と企画。「一票の力は天下の政治を動かす」と呼びかける当局の啓発ポスターや同情票を狙う候補者ポスターなどが並ぶ。28日まで。(冨野洋平)

「投票スレバ明クナリ」、「棄権スレバ暗クナル」

会場には第1回普通選挙時のポスターなどが並ぶ(鳥取県南部町で)

 企画展「選挙の熱気 第1回普通選挙展」。大正から昭和にかけ、様々なポスターを集めた孔版画家・板祐生氏の収集品から、選挙啓発や政党、候補者のポスターを中心とした普通選挙 黎明(れいめい) 期の資料約100点を並べた。

普通選挙の投票を呼びかける内務省の啓発ポスター

 1890年の第1回衆院選時、有権者は15円以上の直接国税を納める25歳以上の男子で、全人口の1%だった。大正デモクラシーの盛り上がりとともに、この納税要件を撤廃した普通選挙法が1925年に成立。「第1回普通選挙」となった28年の第16回衆院選は20%に拡大した。

候補者の似顔絵付きのポスター。掲げられた政策から当時の世相が浮かぶ

 当時の内務省が作成した選挙啓発は、投票へ向かう気持ちを高めさせようと、投票へ向かう人の多さを明暗で表現。右半分の行列をなす様子は明るく見せ、投票に向かう人がまばらな左半分を暗く描き、それぞれに「投票スレバ明クナリ」、「棄権スレバ暗クナル」とのキャッチフレーズをつけた。

 政党ポスターでは、敵対する政党を「借金して見えを張る」と一方的に指摘し、有権者に「おまどひなさらぬやうに」と自党への投票を呼びかけるもののほか、地方分権の実現を訴えるものも。候補者ポスターは、当時の荷車税や自転車税の廃止、土地を持たない農民の生活向上などの政策が訴えられ、顔写真や似顔絵付きでPRするものもある。

 中尾慶治郎副館長は「国も候補者も待ちに待った普通選挙を祝い、有権者に積極的に語りかけるような力強さを感じさせるデザインばかり。『国民は総選挙に真剣でなければなりません』との文言もあり、ハッとさせられる人もいるのでは」と話す。

 問い合わせは、同館(0859・66・4755)。

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