「インデックス投資では億り人になれない」――年収600万円以下から“超富裕層一歩手前”まで登りつめた、元アパレル社員の5つの投資哲学
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- 「インデックス投資では億り人になれない」――年収600万円以下から“超富裕層一歩手前”まで登りつめた、元アパレル社員の5つの投資哲学
- 地方都市で暮らすごく普通の会社員だったうりと氏は、外資系金融や大手商社といった「高属性」とは無縁だった。
- しかし、テック企業への上場直後からの集中投資と、20年以上にわたる長期保有によって、2億円超の資産を築き、2021年にFIREを達成。
- 「凡人には凡人の戦い方がある。リスクを取らなければ、何も変わらない」と、うりと氏は自身の経験を振り返る。
「私のような低年収の人間がインデックス投資を続けても、億単位の資産にはならないと気づいたんです」
こう語るのは、2021年に2億円超の資産を築いてFIREを達成した50代後半の元会社員、うりと氏(ハンドルネーム)である。
うりと氏のキャリアは、投資の世界でよく「成功者」として語られる人物像とは大きく違う。大手アパレル企業での最高年収は600万円台。その後転職したデザイン系の中小企業では400万円台、最後に勤めた零細企業に至っては300万円だった。外資系金融や大手商社といった「高属性」とは無縁の、地方都市で暮らすごく普通の会社員である。
しかし現在、うりと氏の金融資産は年間生活費の100倍を超え、「超富裕層一歩手前」の水準に達している。その原動力となったのが、グーグル(現アルファベット)、フェイスブック(現メタ)といったテック企業への上場直後からの集中投資と、20年以上にわたる長期保有だ。
「インデックス投資は高属性の人の手法。凡人こそリスクを取るべきなんです」。多くのメディアが「インデックス投資こそ最適解」と説く中、真っ向から異を唱えるうりと氏。その投資哲学を5つのポイントから紐解く。
美術大学を卒業後、大手アパレル企業でブランド企画・開発に携わり、その後はデザイン業界でキャリアを築く。その傍ら長期投資家として、上場直後からグーグル(2004年)、バイドゥ(2005年)、フェイスブック(2012年)に投資し、アマゾンなどの成長企業も早期に保有。 20年以上に渡って、金融資産は年率17.51%(2024年末時点)の複利で着実に成長を続けてきた。それにより、2億円超の資産を築き、2021年にFIREを達成した。
うりと氏が投資を本格的に始めたのは2001年。新築一戸建てを購入した直後のことだった。
「家を買って精神的に安定したら、次は金融資産を増やしたいという欲求が膨らんできました」
当初はインデックス投資から始めた。在日アメリカ人が書いた投資本『日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?―普通の日本人が金持ちになるべきだ』に影響を受け、「一日も早くインデックス投資を始めよ」という教えを忠実に実行。ネット証券で米国のインデックスファンドやバークシャー・ハサウェイ株を購入した。
しかし、数年続けるうちにある現実に直面する。
「私の入金力では、インデックスで資産を大きく殖やすのは無理だと悟りました」
アパレル企業や地方の中小デザイン会社の給与水準は、都会の大企業とは比較にならない。毎月の積立額には自ずと限界がある。うりと氏はこれまでの累計投資元本を約2200万円と明かすが、仮に同じ元本をS&P500に投資していた場合、約1億5000万円(年率約10.7%)になる計算だ。
一方、うりと氏が実際に達成した運用成績は年率約17.5%。同じ元本でも、到達した資産額には大きな開きが生じた。
「どうせ私たち低年収の勤め人は、高年収層と同じようにインデックス投資をやっていても、満足のいく結果は得られない。入金できる毎月の積立額が少なすぎるから」
つまり、インデックス投資が「最適解」として機能するのは、毎月数十万円単位で積み立てられる高年収層に限られる。年収300万〜600万円台の「普通の会社員」が同じ土俵で戦っても、FIREに必要な資産には到達しにくい——。
この気づきが、うりと氏をインデックス投資から個別株への集中投資へと舵を切らせることになる。
#2 「捨て身」の精神——失っても生活は変わらない金額で勝負する
2004年8月、グーグルがナスダック市場に上場した。うりと氏はこの歴史的瞬間を見逃さなかった。
「グーグルの株を買ったのは上場から1カ月後くらい。投じた金額は146万円です」
当時の年収は400万円前後。146万円は決して小さな金額ではない。だが、うりと氏の思考回路は一般的な投資家とは異なっていた。
「この146万円が紙くずになっても、私の生活は何も変わらない。でも、もしグーグルが大化けしたら、1億円になるかもしれない」
この「捨て身」の発想が、うりと氏の投資スタイルの根幹にある。失っても生活に支障のない範囲で、将来の成長が見込める企業に集中投資する。分散投資でリスクを抑えるのではなく、「当たれば大きい」銘柄に賭ける。
結果として、146万円で購入したGoogle株は20年後、約1億1000万円にまで成長した。70倍以上のリターンである。
2012年にはフェイスブックにも上場直後から投資。こちらも長期保有を続け、大きなリターンを得ている。
グーグルやフェイスブックには、上場当初から投資している。Mijansk786/Shutterstock「お金に対する執着が薄いんだと思います。周りからは『心臓に針金が生えている』と言われますが、株価が下がっても気にならない。むしろ気にしないからこそ、長期保有ができるんです」
うりと氏はこれを「鈍感力」と呼ぶ。株価の日々の変動に一喜一憂しない。含み損が膨らんでも狼狽売りしない。この鈍感さこそが、20年という長期保有を可能にした最大の要因だという。
#3 「イネビタブルズ(なくてはならない企業)」を見抜く目を養う
では、うりと氏はなぜグーグルやフェイスブックに「賭ける」ことができたのか。そこには、長年にわたる情報収集の蓄積があった。
「牧野洋さんが書いた『バフェット』という本に、ものすごく影響を受けました。バフェットは『イネビタブルズ』、つまり『なくてはならない企業』に投資せよと説いている。コカ・コーラやジレットのような、人々の生活に不可欠な存在になる企業を見極めろ、と」
うりと氏はこの考え方を自分なりに咀嚼し、「次世代のイネビタブルズは何か」を探し続けた。
グーグルへの投資を決めた理由を、うりと氏はこう振り返る。
「当時はヤフーが検索シェアトップでしたが、どの専門誌を読んでもグーグルが抜くと書いてあった。技術力が違う。そして何より、検索エンジンは"インフラ"になると確信したんです。どんなに良い情報がネット上にあっても、それを整理して届ける存在がなければ誰も情報にたどり着けない。グーグルはなくてはならない企業になる、と」
バークシャー・ハサウェイのCEO、ウォーレン・バフェット(2015年5月3日撮影)。REUTERS/Rick Wilkingこの「目利き」の力は、一朝一夕に身につくものではない。うりと氏は20年以上にわたり、週に1冊、年間52冊のペースで投資や経済に関する本を読み続けてきた。毎朝の「モーニングサテライト」視聴も欠かさない。通勤電車、昼休み、あらゆる隙間時間を読書に充てた。
加えて、アパレル業界でのキャリアも投資眼を磨く土壌となった。
「ブランドのコンセプトやシーズンテーマを打ち出す仕事をしていました。常に『次の世の中はこうなる』という予測を立てなければならない。未来を読む訓練を、毎日の業務で叩き込まれていたんです」
情報を集め、分析し、未来を予測する——この習慣がグーグルやフェイスブックを「イネビタブルズ」と見抜く眼力を養った。
#4 暴落でも「売らない」——信頼できるメンターを持つ
20年以上の投資人生で、暴落局面は何度もあった。2008年のリーマン・ショック、2020年のコロナショック、2022年のテック株急落——。それでもうりと氏が持ち株を手放すことはなかった。
「暴落しても、またいずれ戻す。気にしない、気にしない。その精神です」
この「売らない」姿勢を支えたのが、投資の「師匠」の存在だった。
うりと氏が師と仰ぐのは、ニューヨーク在住のファンドマネージャー、堀古英司氏である。1990年代にテレビ東京「モーニングサテライト」でその存在を知り、2006年に堀古氏が運用するファンドを購入。以来、毎月開催されるオンラインの運用報告会に欠かさず参加してきた。
「堀古さんの運用報告会は、投資クラブの勉強会のような雰囲気なんです。事前に質問を送れば丁寧に答えてもらえる。『自分はこう考えるけど、堀古さんはどう思いますか』という答え合わせができる」
約20年間、毎月欠かさず参加してきた運用報告会。その中で、堀古氏が「売れ」と言ったことは一度もなかったという。
「どんな暴落局面でも、堀古さんは売れとは言わなかった。師匠が売らないなら、私も売らない。それだけです」
うりと氏は、ダウ平均株価の超長期チャートを引き合いに出す。
「100年単位で見れば、どんな大暴落も微々たる動きでしかない。常に右肩上がりで推移している。人類の発展や進歩が止まったと思わない限り、株価はまた高値を更新する。そう信じられるかどうかなんです」
「堀古さんがいなかったら、どこかで売っていたかもしれない」とうりと氏は振り返る。
#5 「出口戦略」を持て——資産形成期はグロース、達成後はディフェンシブへ
2021年10月、うりと氏は2億円超の資産を手にFIREを達成した。しかし、そこで新たな課題が浮上する。
「テック株グロース株オンリーのポートフォリオは、ボラティリティが凄まじい。資産規模が大きくなるにつれ、さすがに堪えるようになってきたんです」
資産規模が大きくなると、数千万円単位で資産が上下する。さすがに精神的な負担が増した。FIRE直後から、うりと氏はポートフォリオの「出口戦略」を練り始めていた。
転機は2025年2月末に訪れた。ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ米大統領の会談が決裂したニュースを見て、「これは下がる」と直感。翌3月の第一営業日、保有するテック株の約半分を売却した。
「感性の人間なので、『タイミングはここだ』と直感的に動きました。FIRE以来の懸案事項だったので、肩の荷が下りた感覚でしたね」
ゼレンスキーとトランプが口論になった、2025年2月28日の会談。REUTERS/Sipa USA売却資金は、高配当株や債券、カバードコールETFなどに振り分けた。現在のポートフォリオは、半分強がマグニフィセント7などのグロース株、残り半分弱が高配当・債券系の投信やETFという構成である。
「グロース株は『殖やす枠』として残しました。株が成長するのを見届ける楽しみは捨てたくなかった。一方で『生活費枠』からは年間生活費の2〜3倍の分配金が出るように設計してあります」
当初、うりと氏は一般的な「FIRE4%ルール」よりもさらに保守的な「3%ルール」に基づき資産取り崩しを想定していた。しかし、SNSで他のFIRE達成者の発信を見るうちに考えが変わったという。
「賢い人たちは資産を取り崩していない。配当やインカムで生活している。それに気づいて、自分も配当生活にシフトしようと決めました」
資産を売却するストレスから解放され、毎月安定した配当収入がある。この状態を、うりと氏は「スムース・ジャズのような平穏」と表現する。
「若いうちはリスクを取ってグロース株で大きく殖やす。超富裕層が視野に入ってきたら、インデックスや配当重視にシフトすればいい。順番を間違えてはいけないんです」
#まとめ——「凡人には凡人の戦い方がある」
うりと氏の資産形成を支えたのは、妻の存在だった。
「妻が私の少ない給料をやりくりし、30年間家計簿をつけ続けてくれた。妻が主婦として家計を守り、私が勤め人として働きながら資産を殖やす。この役割分担がなければ、今の私はありません」
現在、うりと氏は地方都市で妻と二人暮らし。規則正しい生活を送りながら、大好きなスキーの技術向上に情熱を注ぐ日々だ。自宅では北欧の家具に囲まれ、スムース・ジャズを聴いて過ごす。
「FIREを目指すなら、まず本を読んで知識を増やすこと。そしてインデックス投資を続けながら、『これだ』と確信した個別株があれば、思い切って買ってみる。100万円でも投資すれば、人生が大きく開ける可能性がある」
最後に、低年収でFIREを目指す人へのメッセージを求めると、うりと氏はこう答えた。
「私のやり方に再現性があるとは思っていません。運が良かっただけかもしれない。でも、エリート層と同じ土俵で戦っても勝てないのは確かです。凡人には凡人の戦い方がある。リスクを取らなければ、何も変わらないんです」
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