<あかし「深」発見>@西明石 職員室を改造、あのカフェ風に? 「サワバックス」で息抜き、座談会

職員室の一角にある「カフェ」で歓談する(左から)寺田有紀さん、渡部公貴さん、水田良さん=明石市明南町3

 職員室がおしゃれなカフェになっている-。昨年、ユニークな教育の実践などを紹介する「オモロー授業発表会in明石」の会場で沢池小学校(明石市明南町3)の画像を見て、衝撃を受けた。こうした思い切った試みは、職員室だけではないという。ぜひ現場を見てみたい、と同校を訪ねた。(森 信弘)

沢池小、理念は「やってみよう」 独自の取り組み

 カフェのようになっているのは、職員室の一角だった。れんがの壁紙が貼られ、人気カフェを思わせる「SAWABUCKS(サワバックス)」と書いた直径90センチのロゴマークも飾られている。ホワイトボードやカウンター、ソファがあり、コーヒーを飲みながらの打ち合わせもできそうだ。

 職員室の改造を始めたのは、図工専科の渡部公貴さん(38)だ。同校では近年、児童数の増加で職員室が手狭になっていた。このため、当時の福本悟前校長=現教育長=が、職員室の座席を固定しないフリーアドレス制に変更。渡部さんは「カフェみたいになったらいいな」という教員の声を聞き、実現しようと思った。

 2022年の2学期に着手。もとは、印刷機が置かれたスペースに少しずつ手を加えていった。翌年にはほかの教員にも手伝ってもらい、壁や天井をしっくいやペンキで塗装。天井に暖色系の電球を付け、床にはフローリングのシートを張った。職員室の反対側にある管理職の机もベニヤ板で囲い、カウンター風にした。

 カフェスペースでは、毎週金曜日に座談会が開かれる。参加は自由で、テーマを決めてざっくばらんに話したり、研究授業について考えたり。4年担任の水田良さん(42)は、作業に集中したいときにも利用する。給湯室も含め、雰囲気はカフェそのもの。「もう普通の職員室には戻れないんじゃないか」と笑う。

 2年担任の寺田有紀さん(42)は「フリーアドレスは、学年を超えて気軽に話しやすい」と、「(カフェで)リラックスして話せるので新しい発想が生まれやすく、若い先生もベテランに意見を言いやすくなっていると思う」と話す。

 22年度から、すべての学年の目標に「やってみよう」を掲げる同校。24年春に小島圭二校長に代わった後も、「沢池クエスト」と称した学習につながる体験の場づくりや、児童が主体的に学べる家庭学習の仕組みの導入など、教員らのアイデアを生かした独自の取り組みが続いている。渡部さんは「職員室(の改造)は『やってみよう』の象徴だ」と語る。

新たな試み、市内外から視察相次ぐ

 沢池小学校(明石市明南町3)には、市内外の学校関係者らから視察や見学が相次ぐ。フリーアドレスになった職員室の現状や、ユニークな「カフェ」が誕生した経緯、子どもたちが主体的に関わる学習づくりなどが関心を集めているという。

 各地の「オモロー授業発表会」を見てきた全国オモロー授業発表会実行委員長で、奈良県内の公立高校教師でもある坊佳紀さん(32)は「職員風土の改革を、学校単位であそこまで実践している学校は少ない」と絶賛する。職員研修などはよく見られるが、ハード面での改革は珍しいという。

 「理念の『やってみよう』が、教員や子どもたちに浸透しているのがすごい」と坊さん。校長が代わっても継続している点に注目し「短い言葉で分かりやすい理念がいいのではないか」と分析する。

【私のひと言】

 取材中、沢池小の先生たちが楽しそうなのが印象的だった。全国オモロー授業発表会実行委員長の坊佳紀さんによると、モンスターペアレントと思われたくなくて、先生との距離感に悩む保護者は多いという。学校が楽しい場所になることでその距離も縮まるといい。

関連記事: