「歯みがき」により免疫力が向上、インフルエンザ感染リスクが低減か - ライオン発表
ライオンはこのほど、歯みがき行動により唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを確認したと発表した。
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本研究の成果の概要(イメージ)
唾液の防御機構に着目
近年、各種ウイルスがもたらす感染症リスクが顕在化する中、日常生活における衛生意識が一層高まっている。口腔は感染経路の1つだが、唾液はウイルス不活化能をもつ様々な成分を含み、体内に侵入するウイルスに対する最初の防御機構として働いている。
一方、歯みがきなどの口腔ケアは、口腔内を清潔に保ち、口腔疾患の予防に寄与するほか、良好な口腔衛生状態の維持がインフルエンザの発症率低下と関連する可能性が報告されている。しかし、これまでの研究では、歯みがきなどの日常的な口腔ケアが唾液のウイルス不活化能に与える影響については明らかにされていなかった。
そこで同社は唾液に着目し、歯みがき行動が唾液のインフルエンザウイルス不活化能に与える影響について、生化学的手法を用いて検証した。
歯みがき行動による変化を検証
歯みがき行動と唾液のインフルエンザウイルス不活化能との関連性を明らかにするため、20~50代の健康な男女16名(う蝕・歯周病が無い人)を対象に調査を行った。調査では、各被験者に歯みがきを実施してもらい、歯みがき行動前後の唾液を採取した。その唾液を用い、歯みがき行動前後でのインフルエンザウイルス不活化能と口腔内の総細菌数を測定した。
歯みがき行動前後の唾液のインフルエンザウイルス不活化能を解析した結果、歯みがき行動前と比較して、歯みがき行動5分後の唾液において、インフルエンザウイルス不活化能(細胞感染抑制率)が有意に向上することを確認した。また、有意差は認められなかったものの、歯みがき行動1時間後においても高いインフルエンザウイルス不活化能が維持される傾向が見られた。
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歯みがき行動前後での唾液のインフルエンザウイルス不活化能の変化
さらに歯みがき行動5分後に着目したところ、行動前後の唾液中の総細菌数の変化量とインフルエンザウイルス不活化能の変化量との間に相関が認められた。特に、歯みがき行動により総細菌数が減少した人ほど、唾液のインフルエンザウイルス不活化能が高まる傾向が確認された。
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歯みがき行動前後(5分後)での唾液中の総細菌数とインフルエンザウイルス不活化能の変化量との関係
歯みがき行動の重要性が明らかに
これまで、疫学調査により口腔衛生状態とインフルエンザの発症率との関連性が報告されていたが、本研究では生化学的手法により、歯みがき行動によって唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを初めて明らかにした。このことから、口腔内をきれいに保つことにより、ヒト本来の免疫力(唾液のインフルエンザウイルス不活化能)が向上し、外部から口腔に侵入するインフルエンザウイルスを不活化できる可能性が示された。口腔内の健康維持のみならず、感染症への備えという観点からも、日々の歯みがき行動の重要性が示唆された。
唾液の科学的研究を推進へ
本研究を通じて、日常の口腔ケアが唾液本来の免疫機能を引き出し、全身の健康維持に寄与している可能性が示唆された。同社では本研究に加え、新型コロナウイルスが口腔を介して感染するメカニズムに着目した研究も報告している。同社は今後も、良好な口腔環境を保つ上で重要な役割を担う「唾液」に焦点を当て、健康維持に資する新たな科学的エビデンスの創出を目指すとしている。
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