河村たかし「政党交付金もあるにはあるけど、1円もわしのところに来ない」日本保守党の現状に河村たかしが重い口を開く「南無阿弥陀仏」(みんかぶマガジン)
本来、日本保守党の応援団であったはずの保守雑誌「月刊WiLL」「月刊Hanada」から、大きな批判に晒され、日本保守党は対応に追われ、防戦一方に回ってしまっている。いったい、日本保守党に何が起きているのだろうか。日本保守党共同代表で、前名古屋市長の河村たかし衆院議員を直撃した。短期連載全4回の第4回。(聞き手、小倉健一、みんかぶ編集部)
ーー前回の衆院選の時から気になっていたんですが、河村さんは今、日本保守党の共同代表という立場ですよね? その役割として、ガバナンスにも責任を持たれているわけですか? (河村たかし) いま、わし、共同代表になっていますからね。 ーー日本保守党の綱領って、自民党や維新と比べても日本語がわかりやすいし、「減税と愛国」を掲げている点など、私は共感できるところが多いです。ただ、保守党の今の現状を見ると、百田尚樹さんや有本香さんが強い支持者に囲まれてしまっていて、一般市民やメディアの声が届きづらくなっているようにも見えます。 (河村たかし) (手を合わせながら)南無阿弥陀仏……(と拝む)。それもね、2人に直接言いましたよ。何もないところから7万人の党員を集めて、5億円も集めた。これは本当にすごいことです。でもね、政党交付金もあるにはあるけど、1円もわしのところには来ないんですよ(笑)。だから2人には「もっと支部を広げよう」と言っているんです。「保守」っていうのは、共産主義でも管理主義でもないんです。思想は強く持つべきだけど、同時に支持層の間口も広く持たないといけないんです。
ーーどういう経緯で、百田さん、有本さんと一緒になったんですか? (河村たかし) 私はずっと言ってきたんですけどね、議員は“稼業”であってはならないんです。だから「地方議員のボランティア化」や「市民並みの給与水準への引き下げ」は絶対に必要だと考えている。いまの政治構造を根本から見直すには、まずここから議論しないといけないんです。 減税と並んで、もうひとつずっと主張してきたのが、地方議員のボランティア化です。世界中、そうなっている国も多いんです。編集長なんかは「そんなことを言ったら、金持ちしか議員になれないようになる」と言われるけど、それは逆です。今みたいに議員が“稼業”になってしまったら、新しい人なんて出てこられない。 名古屋市議会なんかでは、手当を含めたら年収2000万円ある。そんな状況じゃ、出てくるのは“ボンボン”ばっかりですよ。それに、日本には予備選がないでしょう? アメリカでは、民主党や共和党で候補者を決める予備選があるけど、日本では「衆院に出たい」と言ったら、「まず裏金100万か200万持ってこい」という話になる(笑)
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(河村たかし) こういう話をすると、既得権を持っている人たちからは冷たくされる。孤立しますよ、そりゃあ。でもそれでも、私は信念を曲げなかった。報酬を下げれば、「街のために働きたい」という本気の人材が出てくると思っていたから。報酬が高すぎると、どうしても利権目的の人間が寄ってきてしまうんですよ。 そうした中で、百田さんや有本さんは、この考えに共感してくれた。そこは本当にありがたかった。2人とも、地方議員のボランティア化という理念にしっかり賛同してくれて、「志を持った人が出られるような政治にしよう」と言ってくれたんです。 だからこそ、私は保守党の共同代表を引き受けた。この理念を実現するには、保守党として制度改革に真正面から取り組まないといけない。 ーー保守党の掲げる理念とは、どのようなものなのでしょうか。 (河村たかし) 保守党という組織が大事なのは間違いないけど、それ以上に大切なのは「保守とは何か」という根本の考え方なんです。ただ名前に“保守”とつければいい、って話じゃない。人間の本質とか、伝統とか、常識を守っていく。そういう考え方を忘れてしまったら、もはや保守とは言えないんです。 印象に残っているのが、「LGBT法案」の話です。私はね、大人が自分の意思で判断して生きることには基本的に寛容であるべきだと思っている。ただ問題は、それが子どもたちにまで無制限に拡がっていくこと。 たとえばロサンゼルスなんかでは、「男でも女でも自由に選んでいい」という考えが、学校教育や地域の価値観として浸透してる。そうなるとどうなるか。まだ判断力が未熟な子どもが、性別適合手術を受けてしまうようなことが実際に起きている。こんなの、取り返しがつかないでしょう。深刻な後悔や、命にかかわる問題にもつながっているんです。 百田尚樹さんも、この「極端な自由」のあり方には、はっきりと反対の姿勢を示していた。私もまったく同意見です。自民党の中にも最初は反対していた議員がいた。でも、採決が近づいたら、みんな“ころっと”賛成に回ってしまった。それは組織の都合や政治的妥協であって、本来の保守政党のあるべき姿じゃない。