米FRB、金利据え置きへ-雇用は持ちこたえインフレ減速で静観維持
米金融当局は18日まで開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合で4会合連続となる政策金利据え置きを決めると広く予想されている。借り入れコスト調整の前に、トランプ政権による一連の政策変更が経済に及ぼす影響をもっと見極める必要があるとあらためて指摘する見通しだ。
当局者はトランプ大統領の関税措置について、インフレ率を押し上げて失業率を悪化させる可能性があると警戒してきた。だが、これまでのところ雇用情勢の悪化はなく、インフレ率も鈍化しており、当局は今年に入って金利据え置きを続けることが可能となっている。
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ドイツ銀行のシニアエコノミスト、ブレット・ライアン氏は「静観姿勢は現時点まで当局者にとってうまく機能してきた」と指摘。「インフレ見通しに引き続き上振れリスクがあり、あえて変更する理由もない現状を踏まえれば、これまでの姿勢を変える差し迫った必要があるだろうか」と語った。
見通しを巡る高度の不確実性を背景に、投資家やエコノミストはFOMC会合後に公表される最新の四半期経済予測の景気・金利予想を注目すると見込まれる。エコノミストの多くが予想しているように、当局者は引き続き年内2回の利下げ見通しを示す可能性がある一方、金利予測分布図(ドット・プロット)で示される利下げ回数が中央値で今年は1回だけに減る可能性があると、エコノミストの一部は想定している。
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米東部時間午後2時(日本時間19日午前3時)に金利決定に関するFOMC声明と四半期経済予測が発表され、2時半からパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見する。
FOMC声明
米金融当局はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.25-4.5%に据え置くとともに、FOMC声明も5月6、7両日の前回会合の際の内容とほとんど変更がないと予想される。中国などとの間の貿易摩擦が5月会合以降に幾分和らいだことを反映し、不確実な経済見通しに関する文言は微調整される可能性もある。
ライアン氏らドイツ銀のエコノミストは顧客向けリポートで、不確実性が「さらに高まった」とする代わりに、「引き続き高いままだ」と表現する可能性があるとの見方を示した。
四半期経済予測
注目されるのは四半期経済予測だ。前回の予測はトランプ大統領が広範な貿易相手国・地域に関税措置を打ち出す前の3月に発表されたものであり、今回はそれ以降の当局者の予想を初めて盛り込むものとなる。
トランプ氏が4月初めに発表した関税措置はエコノミストの多くや米金融当局者の事前予想を上回るものだったため、当初は米景気見通しにかなりの重しとなった。しかしその後、関税の多くが一時停止となったり、貿易相手と交渉が進められたりしたことで、エコノミストの間では最も悲観的な見通しを後退させている。
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ブルームバーグが4月に実施した調査では、エコノミストの約26%が今後1年以内のリセッション(景気後退)を予想していたのに対し、今月の調査ではこの割合は10%に低下している。
そうであっても、当局者は最新の四半期経済予測で今年の実質GDP(国内総生産)伸び率見通しを再度可能修正する一方、インフレ率見通しは上方修正すると、エコノミストは見込んでいる。
このほか、景気の加速も減速も招かない中立金利に相当する長期のFF金利見通しの中央値は引き続き小幅上方修正される可能性がある。同見通しが再び上方修正されれば、将来的な利下げ回数がやや少なくなるとの観測を一段と後押しすることになりそうだ。
記者会見
4月の個人消費支出(PCE)価格指数が前年同月比2.1%%上昇と、当局目標の2%近くまで予想外の減速を示したことで、パウエル議長は当局がまだ利下げしない理由を問われる可能性がある。
最近のインフレ減速は歓迎すべきものである一方、米国の高関税率が予定通り今夏に発動となれば、インフレ加速のリスクがある点に議長は言及すると想定される。
投資家は次回利下げは少なくとも9月までないと予想するとともに、その次は12月ではないかと見込んでいる。パウエル議長は今年の金利の軌道について、確定的な発言を避けようとする公算が大きい。
記者団からは議長に対し、トランプ氏との5月の会談に関しても質問があるかもしれない。トランプ氏は重ねて利下げを促しており、今月には1ポイントの利下げを呼び掛けた。大統領は金融当局が金利を引き下げれば連邦債務負担の軽減にもつながると主張している。
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市場関係者は、連邦準備制度が準備預金に対して銀行に利子を支払う権限について、パウエル議長が何か発言するかに注目している。この権限は2006年に議会が付与し、08年に実施された。クルーズ上院議員(共和)はこの権限の撤廃を提案している。「準備預金の付利(IORB)」として知られるこの手段は、大規模なバランスシートを持つ金融当局が短期金利をコントロールする上で極めて重要だ。
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原題:Fed Sticks to Waiting as Economy Chugs Along: Decision-Day Guide(抜粋)