北海での船舶衝突事故、貨物船の船長を重過失故殺容疑で逮捕 行方不明者は「死亡と推定」と英当局
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イギリス東部沖の北海で10日午前、石油タンカーと貨物船が衝突し、炎上した事故で、英ハンバーサイド警察は11日、59歳の男性を重過失故殺容疑で逮捕したと発表した。
クレイグ・ニコルソン刑事警視正は、「ハンバーサイド警察は、船舶2隻の衝突をめぐる、犯罪の可能性がある行為に関する捜査を主導している」と述べた。
「私のチームによる捜査の結果、衝突事故に関する重過失故殺容疑で59歳の男を逮捕した」と警視正は言い、逮捕された男性は勾留中だと説明した。
ソロングを所有するドイツの海運会社エルンスト・ラスは、BBCに対し、逮捕された男性がソロングの船長だと認めた。同社によると、船長はほかの乗組員と共に捜査に協力しているという。
ポルトガル船籍の貨物船「ソロング」とアメリカ船籍の石油タンカー「ステナ・イマキュレート」は10日午前10時ごろ、英イーストヨークシャー沖で衝突した。
英沿岸警備隊によると、これまでに乗組員36人が救出されている。貨物船の乗組員1人が行方不明になっているが、捜索活動は10日夕に打ち切られた。行方不明者は死亡したと推定されると、英運輸省のマイク・ケイン政務次官は述べた。
ソロングからは煙が上がり続けているが、ハイディ・アレクサンダー英運輸長官は、2隻が沈む可能性はないとみているという。
英当局筋がBBCに語ったところによると、ソロングの乗組員にはロシア人数人とフィリピン人数人が含まれる。
ステナ・イマキュレートの乗組員23人は全員アメリカ人だと、BBCの取材で明らかになっている。23人はイングランド東部グリムズビーにいるが、いずれ本国に送還されるとみられる。
英警察は、2隻が衝突した原因について捜査を開始し、沿岸警備隊と連携していると明らかにした。
ニコルソン警視正は、「我々は、行方不明となった乗組員のご家族に思いを寄せている。ご家族と連絡を取り、支援を提供するための、連絡担当者を任命した」と話した。
英海難調査局も事故原因を明らかにするため、予備調査を並行して行っていると、警察は述べた。
所有会社エルンスト・ラスは、行方不明の乗組員の家族を支援しているとしている。
ソロングをめぐっては当初、シアン化ナトリウムが積まれているのではないかと懸念されていたが、積み荷に含まれていないことを同社は確認した。
「過去に有毒な化学物質が入っていたが、現在は空になっているコンテナが4つ積まれている。これらのコンテナについて、監視を継続していく」と、エルンスト・ラスは説明した。
ステナ・イマキュレートを管理する米海運会社クロウリーは、英ハル沖で停泊していたタンカーにソロングが衝突し、タンカーで「複数の爆発」が起こったと説明。積んでいたジェット燃料が流出したとした。流出した量は不明という。
同社によると、タンカーに積まれていた16の分離貨物タンクには、計22万バレルのジェット燃料が入っていた。少なくともそのうちの1つが、衝突事故で破壊されたという。
グレアム・スチュアート下院議員(ビヴァリー・アンド・ホルダーネス選出)は、関係者の話として、いずれかの船から重油が漏れたり、海や大気が汚染されたことを示す証拠は今のところないと語った。
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運輸省のケイン政務次官は先に英下院で、貨物船の乗組員1人が死亡したと推定されると語った。
アレクサンダー運輸長官は、海事沿岸警備庁の職員と面会し、2隻とも浮力を維持できる見込みとの初期報告を受けたと明らかにした。
また、ソロングを「岸から離れた場所に曳航(えいこう)し、サルベージ(引き揚げ)作業を開始」できる状況だと付け加えた。
管理会社によると、ステナ・イマキュレートは、米政府のタンカー・セキュリティー・プログラムの一環として運航されていた。同プログラムでは、商業船の一団が、必要に応じて米軍の燃料を運搬する契約を結んでいる。
ステナ・イマキュレートはハンバー川のキリングホルム港での停泊が可能になるのを待っている間、沖合で停泊していたという。
(追加取材:スチュアート・ハラット、ケヴィン・シュースミス)