ジョブズも辿り着いた「10-80-10ルール」。チームの関係が変わる任せ方
このコラムのテーマは、「10-80-10ルール」として知られる原則がAI時代のチーム管理にどう役立つか、という点にあります。
でもその前に、このルールの効果の本質を理解しやすくするために、ちょっと意外な遠回りをしましょう。
つまり、スティーブ・ジョブズ氏のマネジメントスタイルの変遷をたどり、初期にはマイクロマネジメント(細部まで過度に監視・管理する手法)を実践していたAppleの伝説的リーダーが、いかにして10-80-10アプローチの熱心な信奉者になったのかを見ていきましょう。
若き日のスティーブ・ジョブズはマイクロマネージャーだった
スティーブ・ジョブズ氏は、いまでこそ伝説的リーダーですが、若いころはマイクロマネージャーでした。
少なくとも、1980年代に初代Macintoshの開発チームの一員だったアンディ・ハーツフェルド(Andy Hertzfeld)氏は、そう語っています。
ハーツフェルド氏は、ジョブズ氏のもとでMacの計算機アプリを開発していた時の話を明かしています。
最初の試作品をつくったあと、チームはそれをジョブズ氏のところへ持っていき、コメントを求めました。
「まあ、取っ掛かりにはなる」。ジョブズ氏はそう言ったとハーツフェルド氏は伝えています。
だが端的に言って、ひどい。背景の色が暗すぎるし、いくつかの線の太さがまずいし、ボタンも大きすぎる。
チームは製図板に戻り、あちらこちらの細部に修正を施したあと、さらに数回、ジョブズ氏を再訪して意見を求めました。
ジョブズ氏はけっして満足しませんでした。しまいには、チームの別のエンジニアが型破りな解決策を思いつきました。
次の日の午後、また新しい計算機を考案するかわりに、クリスが新しいアプローチを提案しました。
本人が『スティーブ・ジョブズが自分で計算機を作るためのセット(Steve Jobs Roll Your Own Calculator Construction Set)』と呼ぶアプローチです。
計算機のグラフィック要素に関するありとあらゆる判断事項を、プルダウンメニューでパラメータ表示するというもので、線の太さ、ボタンのサイズ、背景のパターンなどを選べるんです。
ジョブズ氏は、数分のあいだメニューをいじってから、自分好みのデザインに落ちつきました。
「数か月後、実際の計算機UIを実装したときには……スティーブのデザインを採用しました。Macintoshの標準計算機アプリは、長年ずっとそのデザインのままでした」とハーツフェルド氏はまとめています。
Appleを偉大にしたマネジメントスタイル
計算機のインターフェースデザインを隅から隅まで自分で指図したというこの逸話を、ジョブズ氏が2010年に自分のマネジメントスタイルとして語った内容と比較してみましょう。
2010年のジョブズ氏は、こう語りました。
チームワークは、ほかの人たちを信頼し、四六時中見張っていなくてもそれぞれの役割を果たしてくれる、と思えるかどうかにかかっています。
われわれは、それを非常にうまくやっています。物事を分割して、わが社のすばらしいチームに分担させるにはどうすればいいのか。
その方法をうまく見つけだしています。
チームの全員が同じひとつのことに取り組み、頻繁に状況を確認しあい、そのすべてをひとつの製品にまとめあげるのです。
さらに、こう続けています。
「すぐれた人を雇い、その人に自社にとどまって働いてほしいと思うのなら、多くの決断をその人に委ねなければいけません」
だからといって、キャリア後期のジョブズ氏が、細部にこだわらなくなっていたというわけではありません。
しかし、数十年を経るうちに、以前は絶えずあれこれと干渉していたジョブズ氏は、自分のするべき仕事は方向を定めることだと理解しているタイプのリーダーに変貌しました。
優秀な人たちにそれぞれの仕事を任せ、自分は品質、計画の実行、戦略調整に関して(必要とあらば)最終チェックをするべきだと理解したのです。