トランプ氏の大統領執務室での新たな会談手法、外交官らが対策を助言 「気まぐれな子ども」のように扱うべき

大統領執務室での会談が口論に発展したウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ米大統領=2月28日/Saul Loeb/AFP/Getty Images

パリ(CNN) これまでの外国首脳のホワイトハウス訪問は、対面で外交を行い、親愛の情を示し、礼儀正しく写真撮影に臨む対面外交の場だった。

しかし、トランプ米大統領が2月にウクライナのゼレンスキー大統領を公然と非難したことで、大統領執務室での慣例は覆され、一部の外国首脳はパニックに陥った。

この会談以外にも南アフリカのラマポーザ大統領に対するトランプ氏の根拠のないジェノサイド(集団殺害)非難、そしてカナダのカーニー首相との緊迫したやり取りを受け、諸外国の要人らは、2期目のトランプ氏と大統領執務室で面会するに当たってはこれまでと異なる準備が必要であると悟った。

こうした会合の準備を担当した5人の元上級外交官は、トランプ氏のホワイトハウスでの会談をボクシングのリングやテレビ番組の収録に例えた。

高官らは、指導者たちは外交上の「柔術」、荒らし、さらには「北朝鮮」風の賛辞にさえも精神的に備えるべきだと述べた。もちろん、カメラの前でトランプ氏が間違っているなどと指摘してはならない。

トランプ氏と親密な関係にあるイスラエルのネタニヤフ首相でさえ、7日のホワイトハウス訪問を控え、争いのリスクを回避しようとしている。トランプ氏が1日、パレスチナ自治区ガザ地区の停戦の必要性についてネタニヤフ氏に「非常に断固とした態度」で臨む意向を示した約24時間後、イスラエル当局者は60日間の停戦案の条件を受け入れたことを示唆した。

トランプ2.0

外国要人は、トランプ2.0は1期目と比べても次元が違うと述べている。2017年当時のトランプ氏は「政府運営の方法を学んでいた。そして、自身の権力の限界を学んでいたのだと思う」と、元駐米オーストラリア大使のジョー・ホッキー氏は述べた。

トランプ氏は2期目に権力を行使することについて1期目よりもはるかに自信を持っていることを認めており、制約や批判の可能性をそれほど気にしていないと明言してもいる。

ホッキー氏は、今期のトランプ氏について「はるかに取引重視であることは明らか」であり、「はるかに手強い交渉者」だと指摘する。1月以降、同盟国も敵国もともに前例のない関税にさらされ、有利な通商条件を引き出すためにトランプ氏をなだめるという屈辱に甘んじている。

元フランス大使のジェラール・アロー氏によると、一部の指導者らは動揺しているという。「特に欧州の指導者らはある種の拒否感を示している。パニックに陥っているのだ」

過去からの脱却

金色の装飾で飾り立てられた大統領執務室は、トランプ氏を体現し、壁にかけられた肖像画は同氏独自の米国史観を反映している。執務室は同氏の職場であると同時に、展示会場でもある。

執務室の変化はそれだけではない。

大統領執務室でのトランプ大統領とバンス副大統領=3月12日/Bonnie Cash/Bloomberg/Getty Images

過去の大統領時代の官僚機構とは異なり、トランプ政権のホワイトハウスは王室や国王の宮廷のように機能していると、アロー氏は話す。トランプ氏やその身内との「個人的な接触」がなければ、指導者らはほとんど要求を進めることができなくなる。たとえ国家元首が一対一で会談できたとしても、「それが大統領に影響力を発揮するとは限らない」。

アロー氏は過去の政権には「ルールがあった」と指摘する。ホワイトハウスでの会談は、通常数カ月に及ぶ準備を要するが、外国首脳が米国大統領と会談し、その様子を目にすることのできるまたとない機会とみなされていた。

アドバイス

リトアニアのランズベルギス元外相は、リアリティー番組のスターだったトランプ氏との会談の準備について、「テレビの視点で考えるべきだ」と助言した。

ランズベルギス氏は、世界の指導者らは自国民の世論も考慮すべきだと語る。トランプ氏に反論したり、事実確認をしたりするのはリスクを伴うかもしれないが、必ずしも負け戦ではないという。元駐米メキシコ大使のアルトロ・サルカン氏も、指導者らが米大統領と「柔術」のようにやり合えることを示すことはプラスになり得ると述べた。

バイデン政権時のホワイトハウス職員ルーファス・ギフォード氏は「スムーズに進むと期待すべきではない」と指摘する。「ドナルド・トランプ氏は、こうした外国指導者らに揺さぶりをかけることにたけている」

アロー氏は従属を勧める。「まず十分に感謝すべきだ。大統領を心から褒めるべきだ。ホワイトハウスには北朝鮮のような側面がある」「そして、トランプ氏にじっくりと語らせるべきだ」

ギフォード氏は、トランプ氏を誠意なく喜ばせるべきではないと警告。「それはその場限りの効果しかなく、長くは続かない。そして、彼はあなたを操るだろう」

テレビ放映される大統領執務室での緊迫した時間をうまく切り抜けるには、世界で最も権力のあるトランプ氏を「気まぐれで予測不可能な子ども」のように扱う必要があるとアロー氏は話す。

「決定権を持つのはトランプ氏だけだ」「しかも、彼は衝動的に意思決定をしている」(アロー氏)

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