娘を性的虐待した男を射殺、公判控える候補が保安官選予備選で勝利 米アーカンソー州

アーロン・スペンサー氏。殺人罪での公判を控える中、アーカンソー州中部の郡保安官選の共和党予備選挙で勝利した/CNN via CNN Newsource

(CNN) 米アーカンソー州中部で郡保安官選の共和党予備選が行われ、娘を性的に虐待した男を射殺した罪で公判を控えるアーロン・スペンサー氏(37)が勝利した。この事件は全米の注目を集め、選挙運動のメッセージは事件を中心に形作られた。

アーカンソー州の州務長官によると、スペンサー氏はロノーク郡の選挙で53.5%の票を獲得。現職のベテラン、ジョン・ステイリー氏は26.5%だった。

ステイリー氏は4日早朝にフェイスブックへの投稿で敗北を認めた。共和党予備選に出馬した3人目の候補、デービッド・バッフォード氏の得票率は約20%だった。

ロノーク郡は2024年大統領選でトランプ氏が76%近い票を獲得した保守色の濃い郡で、スペンサー氏はこの勝利により、11月の本選に最有力候補として臨む可能性が出てきた。

ただ、スペンサー氏は第2級殺人罪に問われている身でもあり、公判は本選前に開かれる可能性が高い。当初は今年1月に公判が始まる予定だったが延期され、今のところ新しい期日は設定されていない。

事の発端は、24年10月にマイケル・フォスラー容疑者(67)が射殺されたことだ。フォスラー容疑者は当時13歳だったスペンサー氏の娘を性的に虐待した容疑で訴追され、保釈中だった。スペンサー氏は容疑者を殺害したことを認めているものの、無罪を主張している。

射殺から1年近くが経過した昨秋、スペンサー氏は保安官選への出馬を表明して郡を驚かせた。今月3日の予備選で勝利したことで、自らを殺人罪で起訴した郡の保安官候補に浮上するという異例のシナリオが生まれた。

スペンサー氏は4日午後、フェイスブックへの声明で「ロノーク郡は昨夜、明確なメッセージを発した。私たちの取り組みはまだ始まったばかりだ」とコメント。「私が立候補しているのは、保安官事務所に説明責任と誠実さを取り戻すためだ。郡の人々も同じ意向であることが示された。この仕事をやり遂げ、より安全で力強いロノーク郡を一緒に築こう。もし皆さんが11月に向けた歩みを共にしてくれるなら、支援に感謝する」と表明した。

スペンサー氏はCNNとの先月のインタビューで24年の当日の夜を振り返った際、「あらゆる良い父親がすることをしたまでだ」と述べ、児童性的虐待の被害者を守るために立候補する義務感に駆られたと説明した。

「私は起きていたことを全てこの目で見た。自分自身のケースだけでなく、名乗り出て(虐待の)体験を共有してくれた人の話も聞いた」「自分がやるべきだと感じた。何もしないでいることに葛藤を感じた」としている。

スペンサー氏の訴追はSNS上で怒りを呼び、取り下げを求める複数の署名活動につながった。また、自分の子どもを守る際の親の法的限界を巡り、アーカンソー州内外で議論を呼ぶ結果にもなった。

射殺されたマイケル・フォスラー容疑者/Lonoke County Sheriff's Office

郡の一部の有権者は先月CNNに対し、自分の家族を守れなかった司法制度の変革を試みるスペンサー氏の取り組みを支持すると語った。一方で、私的制裁を加えたことによる影響を懸念する声もあった。

アーカンソー州カボット在住の女性は「私自身も親なので、自分の娘があのような経験をして彼がどう感じたかは理解できる」と語った。

「ただ、彼は殺人罪で起訴されている。法執行機関の要員には、すぐに銃の引き金を引くような人物ではなく、感情を排してどんな状況でも法律に従う人物に就いてほしい」

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