AIブーム、15兆円超の大型買収案件に現実味-バークレイズ幹部

人工知能(AI)分野で進む軍拡競争により、来年の今ごろまでに千億ドル(約15兆円)を超えるM&A(合併・買収)案件が実現する可能性が高くなっている。英銀バークレイズのM&Aグローバル責任者、アンドルー・ウォーバー氏がこのような見方を示した。

  同氏はインタビューで、「AI分野全体において、われわれの想像を超えるような取引が出てくるだろう」とし、「1年以内に千億ドル超の案件があっても驚くべきではない。巨大プラットフォーム企業は大胆な賭けに出るだろう」と話した。

  イーロン・マスク氏のxAIメタ・プラットフォームズといったテクノロジー企業は既に、AIブームを支えるデータセンターや関連インフラへの投資として巨額資金を投入している。モルガン・スタンレーの試算によれば、こうした支出は今後3年で3兆ドルを超える可能性があるという。

  ウォーバー氏によれば、大型取引はAI業界にとどまらない見通しだ。企業の最高経営責任者(CEO)や取締役会は、市場の不透明感を超えて、成長を後押しする戦略的なディールを模索し始めているという。

  実際、世界全体で6月以降に発表されたM&A案件の総額は1兆ドルを超えており、例年夏場に見られる取引の減速を覆す勢いとなっている。これは記録的な年となった2021年以来、同時期として最大の規模だ。

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  今年前半はトランプ米大統領による貿易戦争が市場ボラティリティーを高め、M&Aへの期待感が一時的にしぼんでいたが、ここにきて取引の勢いは明らかな転換点を迎えている。

  9月に入っても勢いは続いており、今週は英投資会社キャップベスト・パートナーズがドイツの製薬大手スタダ・アルツナイミッテルの経営権取得に合意した。

  ウォーバー氏は「顧客の心理は明らかに慎重から自信と行動へと移った」と指摘。「ここ数カ月でM&A活動は大きく加速し、その流れは今も続いている」と述べた。

  ウォーバー氏は元センタービュー・パートナーズのバンカーで、グリーンヒルとモルガン・スタンレーでも幹部を務めた経験を持つ。バークレイズには今年初めに加わり、競合に後れを取っていた同行のアドバイザリー業務の強化に貢献している。

原題:AI Boom Can Deliver $100 Billion-Plus Deal, Says Barclays Banker(抜粋)

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