袴田巌さんに静岡地検の検事正が謝罪「犯人視することはないとお伝えしたい」
1966年に起きた静岡県一家4人殺害事件で袴田巌さん(88)の再審無罪が確定したことを受け、静岡地検の山田英夫検事正は27日、浜松市内の袴田さん宅を訪れ、袴田さんと姉のひで子さん(91)に謝罪した。
袴田巌さん(右から2人目)と姉のひで子さん(右)に頭を下げて謝罪する静岡地検の山田英夫検事正(27日午前11時19分、浜松市で)=須藤菜々子撮影山田検事正は「巌さん、ひで子さんが言葉にできないつらいお心持ちで日々を過ごされたことに大変申し訳なく思っております。検察として控訴しないことを決めた以上、犯人視することはないとお伝えしたい」と述べた。
9月26日に静岡地裁で出された再審の無罪判決では、最大の争点とされた「5点の衣類」について「捜査機関が血痕を付けるなどの加工をし、タンクに隠匿した 捏造(ねつぞう) 証拠だ」と認めるなど、捜査機関による三つの証拠捏造を認定した。
静岡地検の山田英夫検事正(左)の謝罪を受ける袴田巌さん(中央)と姉のひで子さん(27日午前11時19分、浜松市で)=須藤菜々子撮影畝本(うねもと) 直美検事総長は10月8日に談話を発表。判決について「控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容であると思われる」と強い不満を示した一方、袴田さんに対しては「相当な長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致した」として謝罪の意を示した。検察側は同9日に控訴する権利(上訴権)を放棄し、判決が確定した。
談話内容について、弁護団は、袴田さんを犯人視しているとして「名誉 毀損(きそん) にもなりかねないゆゆしき問題」と反発していた。
袴田さんへの謝罪を巡っては、静岡県警の津田隆好本部長が10月21日に袴田さん宅を訪れ、袴田さんとひで子さんに「長きにわたり、言葉では言い尽くせないほどのご心労、ご負担をおかけし申し訳ありませんでした」と述べた。
自宅でくつろぐ袴田巌さん(8月29日、静岡県浜松市で)=高橋美帆撮影袴田さんは長期にわたる身体拘束の影響で、意思疎通が難しい状況にある。