音楽療法の浸透をAIが後押しする──特集「THE WORLD IN 2025」
検索履歴や位置情報、一緒にいる人物、カレンダーの予定や連絡先一覧、ソーシャルメディアの閲覧状況など、クラウド上に存在するあなたのあらゆる情報のことを考えてみてほしい。
一部の企業は、あなたがどんな音楽を聴いているか、どの曲をスキップしたか、いつどこで音楽を聴くかなど、あなたの音楽の好みについて多くのことを知っている。また、生体情報を取得するスマートデバイスは、心拍数や心拍の変動、血中酸素濃度、呼吸数、皮膚の導電率、体温、血圧を記録しており、それらが時間帯や活動に応じてどう変動するかもわかっている。
さらに、走っているか歩いているか、階段を上っているか、クルマを運転しているか、眠っているかなどの状況もリアルタイムで把握している。眠っているなら睡眠のどの段階にあるか、どれくらいの時間眠っているかまで、もちろん把握しているだろう(あなたが寝ているか起きているか、悪いことも善いことも全部筒抜けだ。悪いことはするもんじゃない!)。
わたしたちは近い将来、生体情報に基づくオンデマンドの音楽サブスクリプションを利用できるようになるはずだ。そこで配信される音楽が、あなたの気持ちを落ち着かせ、運動へのモチベーションや仕事の集中力を高めるようになる。さらには慢性疼痛やうつ病、パーキンソン病、アルツハイマー病などのさまざまな病気の治療にも効果を発揮することだろう。
ダニエル・レヴィティン | DANIEL LEVITINカナダのマギル大学名誉教授。認知心理学、行動神経科学の研究のかたわら、レコードプロデューサーとしても活躍する。著書にベストセラーとなった『音楽好きな脳』のほか、『「歌」を語る』『武器化する嘘』などがある。
(Originally published in the January/February 2025 issue of WIRED UK magazine, translated by Eiju Tsujimura, edited by Erina Anscomb)
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