富士山噴火のAI動画、東京都が公開 住民に備え促す

東京(CNN) 日本で最も有名な山から、巨大な煙が立ち上る。

瞬く間に火山灰が人口の密集した首都・東京へ広がり、空気を曇らせ、建物や車を覆い尽くした。

これらは全て、東京都が公開した人工知能(AI)生成の動画からの抜粋だ。動画は息を呑(の)むほど美しい富士山が噴火した場合、東京都の住民に何が起こるかを警告するために作成された。

実際の噴火が差し迫っている兆候はないものの、富士山は活火山だ。最後の噴火は318年前の宝永噴火だった。

東京都総務局総合防災部が公開したAI動画では、賑やかな通りにいる女性が、突然、携帯電話で火山噴火の警告を受け取る様子が映し出されている。

「『その時』は、なんの前触れもなく訪れるかもしれない」とナレーションが流れ、動画は富士山から巨大な煙が噴き出す劇的な映像へと切り替わる。

動画は、火山灰が2時間以内に東京に到達し、健康被害を引き起こすだけでなく、電力供給、交通、食料供給に支障をきたす可能性があると警告している。

内閣府も火山防災の日に当たる26日に、別のシミュレーション動画を公開。具体的なシナリオをイメージすることでより効果的な備えをするよう、人々に呼びかけている。

日本では激しい地震や火山活動は珍しくない。同国が位置する環太平洋火山帯は、太平洋の両側で活発な地震や火山活動が発生する地域となっている。

当局は国民の警戒レベルを高めることを念頭に、過去1年間で警戒姿勢を強めてきた。

今回の富士山噴火の動画を受けて、一部の住民は不安を表明した。

あるインターネットユーザーはX(旧ツイッター)への投稿で、火山灰が首都圏の交通を混乱させる事態に対する恐怖感を表明。別のユーザーは、日頃から防災用品を備える重要性に言及した。ユーザーらは日本の夏の酷暑にも触れ、噴火で停電が起きれば大変なことになるとの認識を示している。

一方で日本当局の対応は過剰だとの見方も出ている。Xにはこうした警告が危機感や恐怖感を煽(あお)るために使われる傾向があると指摘する書き込みもみられる。また観光客が日本への渡航を避ける要因になると指摘する向きもある。

当局が富士山周辺の都市の住民に備えを呼びかけるのは今回が初めてではない。3月には、大規模な噴火が発生した場合に備えて、住民に対し2週間分の必需品を備蓄するよう勧告するガイドラインを発表した。

政府によると、大規模噴火では推定17億立方メートルの火山灰が発生し、そのうち約4億9000万立方メートルが道路、建物、その他の陸地に堆積(たいせき)すると予想されている。

ある専門家は以前、堆積した火山灰は耐荷重性の低い木造住宅の倒壊を引き起こす可能性があると警告していた。

政府はさらに、空が黒い火山灰に覆われ、市街地は昼間でも暗闇に陥るだろうと付け加えた。

富士山の噴火による経済損失は最大2兆5000億円と推定されている。

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