歯周病が血糖値の日内変動を乱す!〜糖尿病や糖尿病合併症の病態に悪影響を及ぼす可能性を実証〜
2025年10月16日
◆発表のポイント
- 歯周病が血糖値の日内変動を乱すことを,持続型血糖測定(Continuous Glucose Monitoring:CGM)センサーを装着した歯周病マウスモデルを用いて世界で初めて確認しました。
- 歯周病の進行に伴う全身性の炎症亢進と腸内細菌叢の乱れが,インスリン抵抗性を惹起することによって糖代謝を悪化させることを実証しました。
- 糖尿病患者さんの血糖管理および糖尿病合併症の予防していく上で,歯周病の管理が重要であることをあらためて示唆する研究成果です。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野の高盛萌可大学院生,同大学学術研究院医歯薬学域(歯)歯周病態学分野の大森一弘准教授,高柴正悟教授,同大学学術研究院医歯薬学域(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学分野の和田淳教授らの研究グループは,口腔疾患である歯周病の進行が糖尿病の病態に関与する血糖値の日内変動を悪化させることを,持続型血糖測定(Continuous Glucose Monitoring:CGM)センサーを装着した歯周病マウスモデルを用いて実証しました。本研究成果は2025年10月6日付で国際学術誌Scientific Reportsに掲載されました。 糖尿病患者さんにおける血糖値の管理には,従来,血液検査であるHbA1cや空腹時血糖値等が用いられています。しかし,最近は,CGMを用いた血糖管理が主流となってきており,糖尿病合併症のリスクを下げる上でも血糖値の日内変動を管理することが重要となってきています。
今回の研究成果は,口(くち)の病気である歯周病が血糖値の日内変動を質的に悪化させるメカニズムの一端を解明するものであり,従来から進められている糖尿病医療における医科歯科連携の重要性をさらに後押しする重要なエビデンスとなります。
◆研究者からひとこと
ヒト用のCGMを装着した歯周病マウスモデルの構築に苦慮しましたが,マウスでもヒトと同じように血糖値の日内変動をモニタリングすることができました。今回の成果をきっかけに,糖尿病患者さんにおける医科歯科連携医療がさらに進展することを願います。 高盛萌可 大学院生 歯周病と糖尿病は相互に影響し合う病気ですが,血糖値の日内変動に着目した研究はこれまでにありませんでした。歯周病が糖尿病患者さんに及ぼす影響として,全身性の炎症だけではなく,腸内細菌叢も乱すことによって,血糖値の日内変動に悪影響を与える可能性が非常に興味深く,今後は臨床研究を通じてさらに検証していきたいです。 大森一弘 准教授■論文情報 論文名:Continuous glucose monitoring reveals periodontitis-induced glucose variability、 insulin resistance、 and gut microbiota dysbiosis in mice. 掲載誌:Scientific Reports (2025) 15: 34768 著 者:Moyuka Kubota-Takamori、 Kazuhiro Omori、 Chiaki Kamei-Nagata、 Fumiko Kiyama、 Takayuki Ishii、 Masaaki Nakayama、 Kazuyoshi Gotoh、 Kimito Hirai、 Yuki Shinoda-Ito、 Keisuke Okubo、 Shin Nakamura、 Atsushi Ikeda、 Tsugumichi Saito、 Jun Wada、 Shogo Takashiba URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-18594-7 ■研究資金 本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費補助金・基盤研究(B)および挑戦的研究 (萌芽)の支援を受けて実施しました。 課題番号:23K27773、24K22249 <詳しい研究内容について>
歯周病が血糖値の日内変動を乱す!〜糖尿病や糖尿病合併症の病態に悪影響を及ぼす可能性を実証〜
<お問い合わせ> 岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)歯周病態学分野 准教授 大森一弘 (電話番号)086-235-6677(FAX) 086-235-6679
図1.CGMセンサーを装着した歯周病マウスモデルにおいて、歯周病の進行とともに血糖値の日内変動が乱れる(1日の平均血糖値の上昇、TARの亢進)。