潜水艇がクジラの巨大な「墓場」を発見、深海に眠るのは骨だけではなかった
ディアマンティナ断裂帯から見つかったアカボウクジラ類の化石。絶滅した2種(上の二つ)と現生種のものが写っている/Global TREnD
(CNN) インド洋南東部の深海域を潜水艇で調査した科学者らが、数百点のクジラの化石が眠る海底の一帯を発見した。その中には、これまで知られていなかった新種を示す化石も含まれていた。研究チームによると、この場所は世界最大級かつ最深部に位置するクジラの「墓場」の一つとみられる。しかし、この深海の墓場にあるものすべてが死んでいるわけではない。
海面下数千メートルの深海では、死んだ、あるいは死にかけたクジラが広大な墓場へと漂着し、その骨が約1200キロにわたる範囲に散在している。最も古い骨のそばには現代の骨格も見つかっており、化石の年代から見て少なくとも500万年にわたりクジラの遺骸がこの場所に堆積(たいせき)し続けてきたことを示しているという。研究成果は10日、科学誌ネイチャーに掲載された。
遺骸の大半はアカボウクジラ類に属する。アカボウクジラ類はイルカのように細長い吻(ふん)を持つ頭骨が特徴だ。深く潜水する習性があり、水面近くで過ごす時間が短いため目撃例は少なく、その生態についてはほとんど分かっていない。
研究者らは、この墓場で比較的新しいクジラの死骸も確認した。中には腐肉食生物がまだ付着したままのものもあった。こうした死骸は「ホエールフォール(鯨骨生物群集)」として知られ、骨を食べるゴカイ類や巻き貝、長い腕を持つクモヒトデ、化学合成によって生きる二枚貝など、多様な深海生物群集を支えている。これらの生物の多くは新種である可能性もあると研究チームは報告している。
ベルギー・ブリュッセルのベルギー王立自然科学博物館で古脊椎(せきつい)動物学を専門とするオリビエ・ランベール氏はCNNへの電子メールで、「これまでホエールフォールの研究は主に大型クジラ類、とりわけヒゲクジラ類の死骸を対象としてきた」と説明。「今回の研究は、アカボウクジラ類の死骸も、特定の深海域では同様の役割を果たし得ることを示している」と述べた。
ランベール氏はまた、何百万年にもわたってクジラの骨が蓄積した墓場の存在自体は完全に予想外というわけではないと指摘する。この海域には多数のアカボウクジラ類が生息していることが知られており、同様の化石頭骨はイベリア半島沖や南アフリカ沖、ケルゲレン諸島周辺の深海域で、底引き網漁船や、はえ縄漁船によって過去にも引き揚げられている。それでも、「極めて壮観な発見であることに変わりはない」と話した。ランベール氏は今回の研究に関与していない。
「まったくの驚きだった」
この墓場が見つかったのは、オーストラリア南西沖に位置するディアマンティナ断裂帯だ。この海域は海嶺(かいれい)と海溝が入り組んだ地形で、3000万~4000万年前にオーストラリア大陸と南極大陸が分離した際に形成された。水深は約5000~7000メートルに達する。
論文の共同筆頭著者で、中国科学院深海科学・工程研究所の研究者は「極めて巨大なクジラの墓場だが、非常に深いため、到達はきわめて困難だ」と説明した。今回の探査は、地球の海洋で最も深い未知の領域の一部を調査する国際共同プロジェクトの一環として実施されたという。
研究者は「それでも、この場所を初めて観察したときは、誰にとってもまったくの驚きだった」と述べた。
調査には調査船「探索1号」から有人調査船「奮闘者」を投入して現地を調査した。奮闘者は2020年、地球上で最も深い海域であるマリアナ海溝のチャレンジャー海淵(かいえん)にも到達している。
研究チームはディアマンティナ断裂帯で墓場の画像を撮影し、潜水艇のロボットアームを使って43点の化石と腐肉食生物の一部を回収した。
科学者らを最も驚かせたのは、化石の密度の高さと、その分布が広範囲にわたり途切れなく続いていたことだった。一部の区域では1平方キロ当たり約760点の化石や遺骸が確認された。研究者は「推計では、この海域の海底には1000万点を超えるクジラの遺骸が横たわっている」と話す。
その数字だけでも驚異的かもしれないが、海底堆積物の下にはさらに多くの骨が埋もれている可能性があるという。