海苔の養殖かと思ったら水上太陽光発電だった
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長谷川賢人 ( GIZMODO編集部 )「あれ、海苔の養殖でもしてるのかな」
海に何かが浮かぶ写真を見て、最初はそう思いました。整然と並んだ浮き、それを支える網目状のロープ。でも正体は……太陽光発電所!
しかも、これまでの「水上太陽光」の常識をひっくり返すかもしれない技術でした。
波高3.5メートルの荒波にも耐えられる
image: Fred. Olsen 1848開発したのは、1848年創業という歴史ある企業、ノルウェーのFred. Olsen 1848社。
同社は水上太陽光技術「BRIZO」が、第三者認証機関DNV(Det Norske Veritas)の技術検証をクリアしたと発表しました。検証では、設計手法や物理模型実験による波力評価、構造挙動などが厳しくチェックされたそうです。
地味なニュースのように見えて、結構すごい話です。というのも、水上太陽光ってこれまで「波の穏やかな内陸の池やダム」でしか実用化が進んでいなかったから。
海に近い沿岸部や、高潮・強風にさらされる場所では、パネルごと壊れるリスクが高くて手が出せなかったんです。
BRIZOがすごいのは、波高3.5メートルの荒波にも耐えられるよう設計されている点。
image: Fred. Olsen 1848仕組みは意外とシンプルで、浮きを1枚の板のようにガッチリ固定するのではなく、それぞれの浮きをロープの網で個別に「泳がせる」構造になっています。
浮体を固定してしまうと、波が来ると浮体同士がぶつかって、連鎖破壊を引き起こしてしまうんですね。それらを個別に泳がせることで力が分散され、波の衝撃が伝わりにくくなるというわけです。
まさに柔道の「柔よく剛を制す」といいますか、柔道の乱取りのような構造というか。それでいうなら合気道か。
image: Fred. Olsen 1848部品も浮体モジュール、パネル、ロープ用ブロック、ロープ、PE製チューブの5点のみとシンプ。リサイクル素材を使い量産にも適した設計は、コスト減にも効いてきます。
DNVでエネルギーシステム部門の北欧地域責任者を務めるPrajeev Rasiah氏は、こんな趣旨のコメントを寄せています。
水上太陽光は、穏やかな海域だけに頼ってきたフェーズを抜け出す時期に来ている。より厳しい環境で稼働できる技術は、土地が限られていたり送電網がひっ迫していたりする地域で、市場を大きく広げる可能性がある。
ため池や海がたくさんの国、日本でも?
2019年の千葉・山倉ダムの水上メガソーラーimage: 自然エネルギー財団 / 京セラTCLソーラーコメントにあった「土地が足りない」「送電網もひっ迫気味」というのは、日本が抱えている悩みそのものですよね。
実際、日本には全国に約20万カ所ものため池があり、農林水産省も「農業用ため池における水上設置型太陽光発電設備」の検討をするなど、活用を後押ししています。ただ、その多くは波の穏やかな内陸の池限定です。
日本最大の水上メガソーラーとして知られる千葉県市原市の山倉ダムでは、2019年9月に台風15号による強風が原因とみられる火災も起き、2年がかりで復旧。確かに日本には台風があるので、強い風で波が高くなると、浮きどうしがぶつかって壊れるリスクがありますね。
ため池だと渇水の懸念もあるはずですが(最近、水不足もよく聞きますし)、その点、海上なら渇水の心配はないはず。BRIZOのような荒波耐性のある技術が育てば日本でも脈はあるのかもしれません。
でも、やっぱり台風がなぁ。と思いつつも、沿岸部や比較的穏やかな海域・内海なら可能性は感じさせますね。もちろん、景観の問題はありますけれど……。
BRIZOも、実際の商用プロジェクトへの導入時期や、発電コスト・価格については、まだ明らかにされていません。荒波の中で本当に何年も安定稼働できるのか、答え合わせはこれからです。
Source: Fred. Olsen 1848 プレスリリース, HDblog, 農林水産省 , 自然エネルギー財団 , SOLAR JOURNAL