自宅の庭を掘ると奇妙な音が…庭に埋まっていた大量の「ある物」に、家主も考古学者も大興奮(ニューズウィーク日本版)
デンマーク北部ユトランド半島のリビルドで行われた何気ない庭仕事。それがデンマークの考古学史に残る大発見となった。 【写真】自宅の庭を掘ると奇妙な音が…考古学者も驚いた、庭に埋まっていた大量の「ある物」 北ユトランド博物館群の発表によると、住宅所有者が自宅の庭に新しいタイル張りのテラスを造ろうと地面を掘っていたところ、金属に道具が当たる奇妙な音に気づいた。 発見者は「最初は古い鉄かフェンスのワイヤー、陶器の破片かと思ったが、手で掘り始めると金属片が次々と地面から出てきた。しばらくした後、それが宝石や硬貨、銀の延べ棒だと気付いた」と当時の状況を語っている。 発見されたのは合計18.5キロに及ぶ銀製品で、約700点の品と破片からなる。銀塊や腕輪、47枚の貨幣とその断片、小型のトールハンマーなどが含まれていた。これらは、10世紀に土器へ納めて埋められたとみられている。 これまでデンマーク最大の銀の埋蔵品とされてきたテルスレウの銀製品の約6.5キロを大幅に上回り、同国史上最大のバイキング時代の銀製の埋蔵品となった。 今回見つかった銀製品で特に重要なのは、その中身だ。約18.5キロの銀の多くは、貨幣ではなく銀塊、腕輪、切断された銀製品などで占められている。北ユトランド博物館群によると、バイキング時代には銀そのものを重量で量り、支払いに必要な分だけ切り分けて使う方法が一般的だった。今回の銀塊や腕輪片にも特定の重量帯に集まる傾向があり、所有者が銀を一定の価値単位で管理していた可能性がある。 考古学者で、北ユトランド博物館の文化遺産管理者でもあるトルベン・サラウは「これはデンマークのバイキング時代を理解する上で非常に重要な発見だ。その規模の大きさだけでなく、この財宝がバイキング時代における銀の富と支払い手段としての役割を明確に示しているからだ。まるでバイキング時代の金庫を見つけたようなものだ」と興奮を隠さない。
また、今回発掘された銀製品にはアラブ世界のディルハム銀貨やイングランドで鋳造された貨幣も含まれており、10世紀のデンマークが東方のイスラム圏や西ヨーロッパと交易で結ばれていたことも確認できた。 そして、発見場所の近くでは1971年にも約4キロの銀からなる10世紀の「リビルド銀宝」が発見されていることから、サラウは「リビルドは、バイキング時代からの素晴らしい発見を幾度となくもたらしてくれる。今回発見された銀の財宝は、リビルドが辺境の地ではなく、スカンジナビア半島とバルト海周辺地域、東のイスラム世界、そして西の北海地域、イングランド、西ヨーロッパを結ぶ、経済的・文化的つながりの大きな一部だったことの証左だ」と語る。 ただし、今回の銀製品の発見地点は現在の住宅地にあるため、北ユトランド博物館群は周辺で大規模な考古学発掘を実施することは困難としている。 そのため、誰が18.5キロもの銀を所有していたのか、なぜ埋めたのか、近くにどのような居住地や交通路が存在したのかについては現時点では結論が出ていない。 ただ、今回発見された銀の延べ棒の一つにはルーン文字で「hutu」と読める文字が刻まれており、所有者の名前や印などを示している可能性もあるという。 今回発掘された銀製品はデンマーク国立博物館に送られ、鑑定を受けている。北ユトランド博物館群は、この宝物をフュルカト・ヴァイキング博物館に常設展示する計画も進めているが、国宝に指定された場合は求められる警備要件も高くなるため、どの博物館に所有されることになるのかは鑑定次第となる。
エリザベート・ローレンス