日産、新型「リーフ」発表会 新型投入で「航続距離」「インフラ」「価格」というEV普及の壁に挑む

 日産自動車は10月8日、10月17日に受注を開始する新型「リーフ」の発表会をTFTホール1000(東京都江東区有明)で開催した。

 次世代のクロスオーバーEVとして全面刷新された新型リーフは、誰もが安心して乗れるEVを目指してEV性能をブラッシュアップ。バッテリサイズ78kWhのB7グレードで一充電走行距離 最大702km(WLTC)を実現したのが大きなトピックとなっている。

 新開発のEVパワートレーンは、モーター、インバーター、減速機といった主要な3つのコンポーネントを一体化した3-in-1構造とし、従来比でユニット容量を10%削減しながらモーターの最大トルクを4%向上。ローターを複数に分割し、それらを斜めにずらして配置した分割スキューローターの採用や、ハウジングやモーターマウントブラケットを高剛性化することでモーターの振動を大幅に低減し、より滑らかで気持ちの良い走りと静粛性が高い快適な室内空間を実現した。

 また、インテリアでは12.3インチの大型デュアルディスプレイを備えたGoogle搭載のNissanConnectインフォテインメントシステムを搭載。同システムは「Googleマップ」「Googleアシスタント」「Google Play」の各機能に対応するとともに、ナビゲーションが「Googleマップ」になり、Googleアカウントを同期することで充電スポットを予測したルート検索やお気に入りの場所や保存したルートなどを表示できる。さらにNissanConnect サービスアプリ機能の「ドア to ドアナビ」により、充電残量を考慮して必要な充電を加味したルートを乗車前からナビゲーションに共有するといったことも可能になるなど、BEVに求められる性能を徹底的にブラッシュアップしてきた。

B7グレードのボディサイズは4360×1810×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2690mm

 なお、10月17日に受注を開始するのはバッテリサイズ78kWhの「B7 X」「B7 G」で、価格は「B7 X」が518万8700円、「B7 G」が599万9400円。2022年12月に発表された先代リーフの価格改定においては、バッテリサイズ60kWhモデルの「e+ X」が525万3600円、「e+ G」が583万4400円とアナウンスされており、新型リーフでは各性能が向上しながら、Xグレードは値下げされている点にも注目したい。

 また、55kWhバッテリを搭載する「B5」もラインアップに追加することがアナウンスされており、発表は2026年2月ごろを予定する。

 発表会では落語家の三代目 柳亭 小痴楽さんが登壇し、EVに懐疑的な夫婦の会話を落語で進めていく。夫は新しいEVに興味を示しているが、妻は実用性に疑問を持っているという設定で、彼らは航続距離、充電インフラ、価格などに懸念点を持つ。この懸念点をチーフ ビークル エンジニアの磯部博樹氏、日本マーケティング&セールス 執行職の杉本全氏が解決していくというシナリオだ。

落語家の三代目 柳亭 小痴楽さん
日産自動車株式会社 チーフ ビークル エンジニアの磯部博樹氏

 新型リーフの詳細な説明を行なった開発責任者の磯部氏は、初代リーフから受け継がれる「違和感なくEVを受け入れ、快適に扱えるクルマ」「快適で楽しいドライビングをサポートするクルマ」「高い安全性と信頼性を備えたEV」という3つのDNAについて説明しつつ、新型リーフは「ライフスタイルを進化させる次世代のメインストリームEV」をコンセプトに開発され、EVの主な懸念点である航続距離、充電時間、充電インフラの不安を払拭することを目指したと語る。

 磯部氏は新型リーフの2つの主な魅力として「どんなクルマよりも気持ちよくドライブできる」点と「EV性能を磨き上げて誰もが安心して乗れる」点を挙げ、デザイン面では洗練されたエクステリア、クラストップレベルの空気抵抗係数(Cd値0.26)、開放的なインテリア、日産初採用の調光パノラミックガラスルーフなどについて紹介。中でも乗り心地については「日本のお客さまの好みや道路環境に合わせて徹底的に走り込んでいます。荒れた一般道や高速道路の継ぎ目でもしなやかに動く足を作り込み、乗る人全員が快適な乗り心地を実現しました」と述べる。

リーフのDNA
これまで世界で70万台を販売(日本は18万台)し、その総走行距離は280億kmを超えるという
新型リーフの企画コンセプト
EVの課題
新型リーフの魅力
エクステリアデザイン
クラストップレベルの空気抵抗係数(Cd値0.26)
開放的なインテリアでは日産初の調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付)を採用

 そしてEV性能については、「走行距離や充電性能に不安を感じてEVに踏み切れないお客さまが多いのが実態です。われわれは日産の持つ知見をフル動員し、その不安を払拭することを目指します。まず、航続距離について、2010年にデビューした初代リーフは24kWhのバッテリを搭載し、航続距離は当時の基準で200kmでした。2代目ではWLTCモードで最大450kmを実現し、通勤や通学だけではなく週末の小旅行も十分カバーできるようになります。しかし、長距離のドライブでは不安を感じている人も多かったのが事実です。新型リーフは徹底的な空力性能の向上に加え、高性能マッピングや効率化したパワートレーンを搭載することで、WLTCモードで最大702kmという航続距離を達成しました」。

「新型リーフは航続距離を向上させるだけでなく、充電性能も大幅に向上させています。新型リーフは急速充電性能を150kWまで引き上げました。開発メンバーが公道テストを行なったとき、実際に高速道路で急速充電を使ったのですが、15分の充電で250km分の充電ができました。もちろん事前に検証はしていましたが、実際のリアルワールドでそれだけ充電ができることを確認し、開発メンバーも『これはいける』と自信を持っています。ガソリン車の場合も1時間から2時間ごとに休憩をとられる方が多いと思います。新型リーフなら、そのちょっとした休憩時に充電すれば、また250km近く走ると考えていただければEVが不便であるという認識を変えていただくことができると考えています」。

「もう1つ、特に冬に話題に上がるのが航続距離の低下とともに、受電性能の低下です。EVはエネルギー効率が非常に良いため、エンジンの排熱を利用することができず、暖房やバッテリの温度を上げるために、電気で熱を作る必要があります。これが航続距離の低下に繋がります。新型リーフではクルマ全体の熱を効率的にマネジメントするシステムを採用しました。例えば、スマートフォンやパソコンを充電しているときにACアダプターが熱くなることを経験した方が多いと思います。新型リーフでは自宅で充電中に発生した熱をバッテリの消音に活用したり、バッテリの熱を暖房に使うなど、徹底的な熱効率向上を図り、寒い時期での実用航続距離をしっかりと確保する、そういった工夫を施しています。さらにバッテリの温度を適切に保つバッテリ温調システムを採用し、夏場はしっかりとバッテリ冷却し、冬場は素早く温めて充電性能を上げるなどの工夫を施しました。さまざまな環境やお客さまのニーズを把握している、日産ならではの地に足が付いた技術によって暑い夏から寒い冬まで高い実用性を確保し、誰もが安心して乗ることができるEVを実現することができました」などとアピールした。

新開発のEVパワートレーンはモーター、インバーター、減速機といった主要な3つのコンポーネントを一体化した3-in-1構造を採用
日本の道路環境や好みに合わせた乗り心地を追求
ハンズオフが可能な「プロパイロット2.0」も設定
一般道でも車間距離を維持する操作をアシストするインテリジェントディスタンスコントロール
航続距離は702kmに
クルマ全体の熱を効率的にマネジメント
Google搭載のNissanConnectインフォテインメントシステムを搭載
充電ポートに接続する「AC外部給電コネクター」を使えば、ドアをロックした状態でも1500Wの電力を使うことができ、アウトドアアクティビティに加え、災害時の非常用電源としても活用できる
日産自動車株式会社 日本マーケティング&セールス 執行職の杉本全氏

 一方、杉本氏は日産のクルマづくりの理念や電動化への取り組みについて説明し、日産は2010年に初代リーフを発売して以来、EVとe-POWERを合わせて国内累計販売台数160万台以上を達成し、日本で最も選ばれている電動車ブランドとなっていることを報告。

 また、新型リーフの価格戦略についても言及し、78kWhバッテリ搭載モデルの価格を518万8700円(B7 X)に設定したことを発表。これは先代よりも手が届きやすい価格であり、申請中の補助金が適用されると実質負担額は約430万円からになると報告。また、2026年2月ごろに55kWhバッテリ搭載の普及グレード「B5モデル」も発売予定で、仮に先代リーフと同額程度の補助金を受給できた場合の実質負担額は約350万円からになる見込みだとアナウンスした。

 杉本氏は最後に「EV開発から販売に渡るまで15年以上携わってきた私たちの全ての英知を結集したこの新型リーフを通じて、1人でも多くのお客さまに新しいEVのワクワクを味わっていただけることを心から願っています。そして、これからも皆さまの声に耳を傾けながら、より良いクルマ作りおよびサービスの提供に取り組んでまいります」と述べ、プレゼンテーションを締めくくっている。

日産の電動化への取り組み
2010年に初代リーフを発売して以来、EVとe-POWERを合わせて国内累計販売台数160万台以上を達成
日産に寄せられたEVオーナーの声
EV普及の壁に挑む
全国の充電インフラについて。普通・急速充電器を合わせて約3万7000口が用意される

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