米司法省、トランスジェンダーの銃所持禁止を検討 憲法上の権利奪う恐れと専門家
テキサス州ヒューストンの拳銃販売店=2022年/Brandon Bell/Getty Images/File
(CNN) 米中西部ミネソタ州ミネアポリスの学校で児童2人が犠牲になった銃撃事件を受け、司法省高官がトランスジェンダーの人々が銃器を所持する権利を制限する案を検討している。内部の協議に詳しい当局者2人が明らかにした。
予備的な協議は、ミネアポリスの銃撃事件以降に保守系メディアの一部で広まっている思想に基づいているようだ。警察によると、この事件の容疑者は23歳のトランスジェンダー女性とされている。
こうした動きは、トランプ政権がトランスジェンダーの米国人の権利を抑圧する姿勢を大幅に激化させることを意味する。
トランプ大統領は、トランスジェンダーに関連する大統領令を発行している。この中にはトランスジェンダーの軍への入隊禁止や、連邦刑務所に対しトランスジェンダーの受刑者を出生時の性別に応じた施設に移送するよう命じる内容が含まれる。
銃の所持権を制限するという考えは、保守派にとって長年超えてはならない一線だった。多くの共和党議員や銃所持擁護団体は、メンタルヘルスに問題を抱える人々に銃を持たせないための法律や政策に反対している。
しかし司法省関係者によれば、同省幹部は、トランスジェンダーは精神疾患を抱えており、憲法修正第2条に基づく銃器所持の権利を失う可能性があると宣言するために規則制定権を行使できるかどうかを真剣に検討している。
司法省の別の高官は、このような提案の議論が本格化すれば、法的な問題に直面する可能性が高いと警鐘を鳴らす。何百万人もの米国人がメンタルヘルスの問題を抱え、その多くは薬を服用しているが、社会に脅威をもたらしてはいないため、権利を侵害することはできない。
連邦法では、判事が特定の人物に対し精神的に「欠陥がある」と宣言した場合に、銃器所持の権利がはく奪される。
ハーバード大学ロースクールの臨床指導員であるアレハンドラ・カラバロ氏は、トランスジェンダーの人々を標的とするこの最新の取り組みを深刻に受け止めていると話す。政権は政府機関に性別違和の人々を銃規制の対象と宣言させたうえで、社会保障局など別の機関に、標的となるトランスジェンダーの人々をリストアップさせる可能性があるという。
カラバロ氏はさらに、同じ手法が他の人々にも使用される危険があるとも警告している。
「トランスジェンダーの人々を対象とするこの前例は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱える退役軍人にも使われる恐れがある」とカラバロ氏は指摘する。「これは、誰もが憲法修正第2条で保障された権利を失ってしまう危険をはらんでいる」
LGBTの支援団体GLAADの広報は、司法省がトランスジェンダーのコミュニティーをスケープゴートにしていると非難した。
米国で発生する集団加害の大部分は、トランスジェンダーの人々とは無関係だ。
非営利団体ガン・バイオレンス・アーカイブによると、2013年1月から現在までに米国で発生した5700件以上の銃乱射のうち、トランスジェンダーだった容疑者は5人にすぎない。銃乱射は4人以上が射殺された事件と定義される。