老朽化で道路陥没…Z世代「年収500万でもブルーカラーは嫌」が引き起こす「インフラ整備は後回し」の実情(東洋経済オンライン)

・希望しない:75.7% ・収入以外の条件も良いなら検討する:24.3% ・希望する:0% 以前の記事では、この「希望者ゼロ」という結果をもとに、若者の建設業離れが招くインフラ崩壊のシナリオを描いた。  今回は、これほどまでに若者から敬遠されている建設業界のリアルな状況について、13年の実務経験を持つ高内めぐみさん(1級建築士・1級建築施工管理技士・1級土木施工管理技士)に話を伺った。  高内めぐみさん  SANOYA一級建築士事務所代表。建設業界での実務経験13年、資格指導‧教育開発経験15年。 地場ゼネコンの経営層として、住宅の設計‧施工管理から公共土木工事の現場代理人まで幅広く従事。現場の最前線で培った実務スキルを背景に、大手資格スクールでは2級建築士講座の講師や教材開発、講師の指導‧育成を歴任。

■人手が足りないから「インフラ整備を後回し」  川畑:実際の現場感覚として、人手不足はどの程度深刻なのでしょうか。  高内:人手が足りないから事業を縮小せざるを得ないという切実な話を聞きます。特に地方では「公共事業はあるけど人手が足りないので入札できない」という企業が散見されます。この状況はすでに、地域のインフラ整備に影響していると思います。  川畑:人が足りず、やるべき事業が「ほったらかし」になっているのですか? 


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 高内:その自治体が何を優先して予算を振り分けるのかによりますが、インフラ整備を後回しにしている市町村もあるかもしれません。昨年起きた埼玉県八潮市の道路陥没事故は記憶に新しいですが、東京でも首都高の老朽化が指摘されているように、各地でインフラ整備の課題は山積みです。  川畑:国交省のデータを見ると、高度経済成長期に一気に作られたインフラが一斉に老朽化のタイミングを迎えていますよね。  ※外部配信先では図表が見られない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご覧ください。

 高内:はい。昨年の道路陥没事故のあと、国が号令をかけて「点検しましょう」となりましたが、特に下水道や水道は地下に埋まっているので点検だけでも大きなコストがかかります。だから「人の少ないところは下水道をやめて浄化槽に戻そう」なんて話も、実際に出ているようです。  川畑:インフラを「修繕するか、しないか」ではなく「維持するか、手放すか」という究極の選択を迫られ始めているのですね。 ■施工管理とはどんな仕事か

 川畑:そもそも「施工管理」とはどんな仕事か、あらためて聞かせてください。  高内:施工管理は、現場を回って職人さんとやりとりしたり、記録写真を撮ったり、発注者と打ち合わせをしたりします。工程管理にはお金の計算も入ってきますから、頭もすごく使います。  予算内に収めるため、今日は何人働いていくらかかったかなど、経費を毎日積み上げるのも仕事の一部。施工管理にとっては、1つの現場が「1つの小さな会社」みたいな感覚です。

 経理や人事、ものづくりの技術部門をマルチに回しているイメージ。私も現役のとき、常に電卓とスケール(現場で長さを測る器具)を持っている感じでした。  私は木造建築の施工管理も多くやりましたが、自分が全体の舵取りをしてものをつくり出すことに、すごくやりがいを感じていました。  川畑:仕事の核心となるスキルは何でしょう?   高内:結局はお客さんや職人さん、協力会社さんとのコミュニケーションが、いろんな知識よりも一番重要だと思います。一言で言うと、「人と人との信頼構築」ですね。


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 川畑:職人も人手不足。施工管理がいても、職人が足りなければ現場は回りませんよね?   高内:職人さんの数は、私が現場にいた20年ほど前でもすでに足りませんでした。人が足りないからこそ、限られたリソースをどう生かして納期までに完成させるか。それが施工管理の腕の見せどころだと、私自身は感じてやっていました。  というのも、腕のいい職人さんは特に確保が大変です。だからこそ、日頃の付き合いや賃金の支払いを通して信頼してもらうことが肝心。建設業はモノづくりのイメージが強いと思いますが、特に施工管理は「人を大事にする」というソフト面にもっと心を砕くべきだと思います。

■年収600万でも若者が来ない…  川畑:建設現場の賃金や労働環境は、実際良くなっているのでしょうか?   高内:大きく変わっています。国土交通省の「公共工事設計労務単価」は、職人さんの人件費の目安となるものですが、1人あたりの1日の報酬額は14年連続で引き上げられています。底値だった2012年度が1万3000円台だったのに対し、2026年3月は2万5000円超と、2倍近くになりました。  川畑:施工管理職の待遇はどうですか? 

 高内:資格や企業規模によってかなり変わりますが、待遇は決して低くありません。大卒で建設会社に就職するとほぼ施工管理を担当するので、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で建設業の大卒賃金を見てみました。20代後半の年収はもともと高水準で、2007年でも648.8万円でしたが、2025年は674.4万円と上昇傾向が続いているようです。  ただ、それでも建設業は長年人手不足の問題を抱えています。賃金が上昇して、残業も2024年4月から厳しく制限されましたが、それでも3K(きつい、汚い、危険)のイメージが根強いのでしょうね。業界がもっとアピールしないと、求職者には届かないかもしれません。

 川畑:UZUZグループの調査でも、若者の8割が業界の変化を「知らない」と回答しました。確かに業界のPR不足はありそうです。  川畑:建設業界の人手不足が解消されないと、どういう影響が懸念されますか?   高内:都市部で事業を展開する大手ゼネコンであれば、知名度がある分、新卒採用も集まるかもしれません。ただ、問題は地方です。  私の実家は栃木県の建設業者でしたが、数年前に会社を畳んだ際、お客様に一番心配されたのは「うちに何かあったとき、また電話していい?」ということでした。家の外壁や庭の塀が壊れかけているとか、アスファルトの穴を埋めてとか、地域密着の建設業者には「町医者」みたいにいろいろな相談が来るんです。


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 職人を取りまとめる施工管理者がいないと、そういう生活環境のメンテナンスも難しくなります。 ■「河川の決壊」災害時に街を復旧させる人がいなくなる?   川畑:そう考えると、国土の大半を占める地方の道路や家を守るのに、各地に地域密着の建設業者がいることは大事なのですね。  高内:はい。特に顕著なのが災害時だと思います。私の地元でも数年前に集中豪雨で河川が決壊しましたが、地元業者がすぐ駆けつけて復旧させました。

 地元密着の建設業者はその地域の財産だと思います。施工管理をはじめとする建設業界の人手不足は、災害対策としても重要な課題です。  川畑:「20代で500万円でも施工管理職の希望者ゼロ」という現実に対して、できることは何でしょうか?   高内:大学や工業高校、高専などで建築や土木を学んでいる学生さんは現実にいるので、まずは業界として魅力を発信していくことだと思います。  私の時代は女性が非常に少ない職場でしたが、今は男女関係ありません。処遇も変わっているので、まず「3K」といった誤解を解きたいですよね。

 川畑:大卒者が建設業界に入ると施工管理職を担当することが多いようですが、未経験でもやれるものですか?   高内:知識や経験がないのは当然です。私も現場で教わりながら毎日成長させてもらいました。必要なのは、人間関係を大切にすることと、「わからないことを素直に聞ける」ことです。施工管理は、都市部でビルを建てるだけの仕事ではありません。それぞれの地域の生活道路や水路、水道や下水道、橋など生活インフラを守る事業や、災害後の暮らしを立て直す事業は、ほかに代役がいない仕事です。そのやりがいを、たくさんの人に味わってもらいたいなと思います。

筆者は以前インフラ崩壊の将来的なリスクについて記事を書いたが、今回高内さんの話でわかったのは、それが「地方ではすでに始まっている」という現実だった。 せっかく国や業界が進めてきた待遇改善が、若者の8割には情報として全く届いていない事実をふまえると、「条件さえ良くすれば来る」という甘い認識を捨てる必要があるのは明白だ。 これからさらに人手不足が顕著になる昨今、業界の魅力を、自分たちでしっかりアピールすることは喫緊の課題だろう。それが、地方の災害対策をはじめ、生活インフラを守るためにできる最初の一歩になると、この取材を通じて感じた。

川畑 翔太郎 :UZUZ COLLEGE(ウズウズカレッジ) 代表取締役、IT/AI人材育成アドバイザー

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