韓国情報機関の北朝鮮情報と分析は恥ずかしくもなく常に「後出しジャンケン」(辺真一)

 韓国のメディアは昨日(9月1日)、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)が、「ジュエ」と称されている金正恩(キム・ジョンウン)総書記の娘について、「事実上の後継者に内定した段階にある」との見方を示したとして、一斉に報じていた。

 「国情院」は確か、昨年2月にも国会情報委員会の全体会議で、娘について「後継者に内定した段階にあると判断している」と報告していた。当時、情報委員会の与野党幹事を務める与党「共に民主党」の朴善源(パク・ソンウォン)議員と最大野党「国民の力」の李成権(イ・ソングォン)議員が伝えたところによると、その理由として、▲2月8日の人民軍創建記念日行事への出席、▲平壌の錦繍山太陽宮殿の参拝、▲一部の施策について意見を述べていること、などが挙げられていた。

 今回も、内定の根拠は何かというと、▲今年に入り、射撃を行う姿や新型主力戦車を自ら操縦する姿が公開されるなど、メディアへの露出が増えていること、▲朝鮮戦争の休戦協定締結から73年となる「戦勝節」(7月27日)の記念行事にも父親と共に出席し、公演を観覧する姿を見せるなど、公開活動が活発なことを挙げていた。

 いずれも北朝鮮が公開した情報である。「国情院」の分析は北朝鮮の報道をベースにしたもので、外部には分からない独自情報、ヒューミント情報に基づいたものではない。

 「国情院」の見解をメディアに伝えた国会情報委員会の与党「共に民主党」の幹事、尹建永(ユン・ゴンヨン)議員は、「国情院は、北朝鮮が(娘を)北朝鮮の住民に指導者として印象づけることを目的としているのではないかと見ているようだ」と補足説明していたが、正直、何をいまさらという感じだ。娘がデビューしたのは2022年11月であり、国情院は「後継者内定」に実に3年10か月も時間を要したことになる。

 そもそも、これほど時間がかかった原因は何かというと、2022年11月17日に父親に連れられて娘が「火星ー17」発射に立ち会った際、国情院が「第2子のジュエと判断している」と、当時、国会情報委員会の与党幹事だった劉相凡(ユ・サンボム)「国民の力」議員に伝えたことに起因している。

 「第2子」と判断した根拠は、「10歳程度の女児にしては大きいので多少疑問も残るが、背が高くて、図体が大きいとの既存の情報院の情報と一致していたからである」と、もっともらしく説明していた。

 当時、筆者は、仮にこの女の子が第2子の「ジュエ」ならば、2013年生まれなので、まだ9歳に過ぎない。父親の金総書記はなぜ、未成年の小学生の娘をミサイル発射場に引っ張り出したのかという素朴な疑問を抱いたが、「国情院」からはそれ以上のコメントはなかった。

 「国情院」は2023年まで、金総書記には3人の子供がいて、第1子は「男子」と把握していた。金奎顕(キム・ギュヒョン)情報院長(当時)は国会情報委員会での報告で、「具体的な物証はないが、諜報上、(第1子が)息子であるのが確実ということを外国情報機関との情報共有を通じて確信している」とし、「但し、息子は露出したことが一度もなく、一部で提起されている身体的、精神的問題があるという部分については、別途の情報で確認されたことはない」と話していた。すなわち、「第1子が息子という情報があり、依然として確認中」というのが国家情報院の一貫した立場だった。

 さらに同年9月には、「国情院」は国会情報委員会に「北韓(北朝鮮)は『白頭血統』に対する執着が強く、男性中心社会のため、現段階でジュエを後継者と判断するのは性急だ」と報告していた。

 それが、10月になると、第1子が男の子との判断に関わった「国情院」の関係者が、「当時の判断は間違っていた」と、北朝鮮問題の専門家らに吐露した。驚いたことに、第1子を男子と判断した根拠は、北朝鮮の外貨獲得に従事している人物が、北朝鮮に男児用のおむつやおもちゃを送ったことだった。ロイヤルファミリーにこうした男児用の用品を送ったことから、金総書記の子供を男の子と判断したようだ。金総書記の実兄、正哲の息子用かもしれないのに、である。

 「国情院」は2024年1月になって、「現在のところ有力な後継者とみられる」と方針転換したが、その理由については今回同様、「公開活動の内容や礼遇のレベルを総合的に分析した結果」としていた。

 最初に誤った情報や分析を示し、それを反省することもなく、二転三転させた「国情院」の分析を、金科玉条のように報じる国会議員やメディアにも問題がある。そのことを問題視し、追及しようともしない。

 「情報院」は今回、娘の件以外にも、トランプ米大統領と金総書記の首脳会談について、「いつでも可能な状態にある」と分析していたが、その根拠についても「対話の兆候が見られる」とだけ述べ、その兆候については全く触れなかった。仮に、トランプ大統領が金総書記に再三にわたってラブコールを送っていることを「対話の兆候」とみているとするならば、あきれ果ててしまう。誰にでもわかる事実だからだ。

 膨大な予算を手にし、中国やロシア、モンゴルなど、北朝鮮と国交のある大使館に情報部員を常駐させるなど、さまざまな対北ネットワークを構築しているはずなのに「情報院」の北朝鮮情報は素人並みで、その分析もまた、いつも「後出しジャンケン」なのである。

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