映像には森林地帯に集められた多数の女性や子どもと、武装した男たちが…ナイジェリアで武装勢力がモスクを襲撃し30人を殺害、女性や子ども600人を拉致し、動画を公開(ニューズウィーク日本版)
ナイジェリア中北部ニジェール州ボルグ地区で8月21日、武装集団が複数の集落を襲撃。約30人の死者を出したほか、各地のモスクで金曜礼拝を行っていた住民らを連れ去った。8月23日には、武装集団が公開したとされる映像がフェイスブックやWhatsAppで拡散された。 【動画】森林地帯に集められた多数の女性や子どもと、武装した男たち 映像には森林地帯に集められた多数の女性、子ども、高齢者らと、その周囲にいる武装した男たちが映っている。現地住民は映像にいる人々について、デカラで拉致された住民が含まれていることを確認し、拘束者は約600人に上ると証言した。自分の妻や子ども、知人を映像内で確認したと話す住民もいるという(ただし、拘束された人数については、発言者によって大きな幅がある)。 地元メディアによると、武装集団は8月21日午後、デカラ、ギダンザナ、サボンギダ、マサタなどの集落を襲った。ニジェール州警察は事件直後から救出部隊を投入したが、救出は思うように進んでいないのが現状だ。地元メディアによると、警察報道官ワシウ・アビオドゥンは、道路状態の悪さに加え、被災地域とボルグ地方行政区中心部を結ぶ橋が崩落していることが部隊の移動を遅らせていると説明している。 ボルグはカインジ湖国立公園周辺の広い森林地帯を抱え、ベナン国境にも近い。ロイターは8月25日、襲撃後に約2000人の住民がベナンへ逃れたとの証言を報じている。 犯行主体は確定していない。地元メディアが取材した生存者によると、襲撃を行ったのは「ラクラワ」と呼ばれる武装勢力だった。ニジェール州の情報・広報担当委員も8月27日、ラクラワやボコ・ハラムが関与した疑いがあるとしているが、その武装勢力の特定には至っていない。州政府も8月27日時点で、拉致犯から身代金要求などの連絡は届いていないとしているなど、どの組織が襲撃を実行し、どのような目的で人質を拘束しているのかは現在も調査中だ。
背景には、ナイジェリアで深刻化している身代金目的の誘拐がある。ナイジェリアの治安調査会社のSBMインテリジェンスによると、2025年7月から2026年6月までの1年間に国内で前年同期比66%増の7825人が誘拐された。関連する事件では少なくとも1142人が死亡し、身代金の支払額は確認されているだけでも約580万ドル相当に上った。 特にナイジェリアの北西部と中北部では、武装集団による村落や学校、道路利用者などを狙った集団拉致が繰り返されている。今回のボルグ襲撃も、こうした治安悪化が続く中で発生した事件といえる。 『ボイス・オブ・ナイジェリア』など複数の現地メディアによると、ナイジェリアのティヌブ大統領はニジェール州で犯罪者によって罪のない市民が誘拐され殺害されたことを非難し、国軍、ナイジェリア警察、国家保安局、その他の治安・情報機関に対し、誘拐された被害者の救出に向けて連携して活動するよう指示した。また、軍・治安機関の責任者に対し、すべての拉致被害者の安否が確認されるまで定期的に報告するよう求めた。 そして、攻撃の責任者は処罰を免れることはないと宣言し、犯人を平和と人類の敵と呼び、必ず裁きを受けさせると断言したという。 「無防備なナイジェリア国民に対するこの卑劣な攻撃を実行した者たちは、平和の敵であり、人類の敵だ。彼らが処罰を免れることはない」 また、警察も救出作戦を強化し、オラトゥンジ・ディス警察長官は29日にニジェール州を訪問した。現地メディアによると8月30日、ディス長官が情報収集や治安機関間の連携を強化し、救出作戦が進展していると説明した。 事件には宗教界や政界からも批判が相次いだ。現地メディアによると、ナイジェリア・イスラム問題最高評議会は26日、ボルグの4集落への襲撃を非難し、殺害・負傷・拉致された住民の中に金曜礼拝中のイスラム教徒が含まれているとして救出を求めた。 一方、ナイジェリア・キリスト教協会ニジェール州支部も8月30日、モスクと教会の双方について、金曜礼拝や日曜礼拝の時間帯に警備を強化するよう治安当局に要求した。北部選出の上院議員で構成する北部上院議員フォーラムも、拉致被害者の即時救出と中北部の治安体制の見直しを政府に求めているという。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部