迫る天井、がれきに挟まる顔 「もう死ぬかも」 過酷な5時間

ビル(奥)の崩落に巻き込まれ救助された清村浩二さん(右)と、励まし続けた長女優子さん=熊本県八代市で2026年7月31日午後7時4分、滝川大貴撮影

 地震で落ちてきた天井が目の前に迫る。身動きを取ろうとしても、顔はがれきに挟まれている。

 その後も続く揺れで、徐々に天井がずり落ちてくる。「まだ自分は生きている。誰か、助け出してくれ」。過酷な5時間だった。

2階部分がゆっくり落ち…

 熊本県八代市役所の近くで、清村浩二さん(62)は東南アジアの雑貨販売店を営んでいる。7月28日夕はいつも通り、3階建てビル1階の店にあるカウンターで、椅子に座っていた。

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 「ドン」。強い衝撃と揺れが襲った。座ったまま身動きが取れずにいると、2階部分がゆっくり落ちてくるのが目に入った。

 最初の揺れが落ち着くと、天井は50センチ先にあった。顔の周りにはコンクリートや鉄骨が押し寄せている。

 頭を必死に動かすも、10センチほどの隙間(すきま)しかなく、抜け出せる気配がない。

 「お父さん!」。ほどなくして駆けつけた長女優子さん(17)の声が聞こえた。必死に叫んだ。「大丈夫だ。救助隊を呼んでくれ。俺はカウンターのところにいる」

 優子さんは、近くを通ったパトカーに父が閉じ込められていると伝えた。ただ、救助隊はすぐにはやってこない。

押し寄せる暗闇と不安

 家族が励ましてくれた。「頑張って」。それに応えることで心細さを紛らわせた。

 夜になると、暗闇が押し寄せてきた。不安が募ってくる。すると、ライトの光が届いた。救助隊だった。

 「大丈夫ですか」と声を掛けられた。がれきをかき分ける音が響く。足元には屋外に脱出するルートが作られ、右足をトントンとたたかれた。

 その頃、度重なる揺れで徐々に天井は近づき、5センチ先にあった。顔の圧迫も強まり、首が横にねじれていった。底知れぬ恐怖が襲ってくる。「もう、死んでしまうかもしれない」

 救助隊は、はいつくばって自身に近づいてくる。もう、残された時間は少ない。顔を挟むがれきはジャッキで取り除かれた。体を抱きかかえられ、椅子の脚は切断された。

生死の説明ないまま病院へ

ビル(奥)の崩落に巻き込まれ救助された清村浩二さん(左)と、励まし続けた長女優子さん。浩二さんは「命の危機だったけれど、家族が全員無事だった。それ以上のことはない」=熊本県八代市で2026年7月31日午後7時9分、滝川大貴撮影

 閉じ込められてから約5時間がたっていた。

 ブルーシートで覆われた現場で、優子さんからは救助活動の様子がよく見えなかった。そこから1台の救急車が走り出した。

 優子さんは絶望した。「死んでしまったのかな」。救助隊から生死の説明がないまま、告げられた病院に急いで向かった。

 病室に入ると、ベッドで点滴を受けながら笑顔で手を上げる父がいた。けがは、右のひじを擦った程度で済んだ。

 家族4人が顔を見合わせて言い合った。「生きてて良かった」

 清村さんはすぐに退院し、店舗とは別にある自宅に家族で帰った。倒壊は免れたが、室内は足の踏み場がほぼなかった。台所に布団を敷き、4人で眠りについた。

 「家族全員が生きていた。これ以上、いい未来はない」と語る清村さん。何度も「救助隊のおかげで命がある。感謝しかない」と口にする。

 暗闇だった現場では、救助隊の顔も分からなければ、名前も分からなかった。

 いつか伝えよう。「ありがとう。あなたのおかげで生き延びました」と。【川畑岳志】

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