「自民党政治は左傾化している」 参政党などの「第三極」、参院選で保守層を切り崩し

演説に耳を傾ける有権者ら=18日、大阪市北区(彦野公太朗撮影、一部画像処理しています)

20日投開票の参院選で、政権与党でも主要野党でもない「第三極」が支持を広げている。物価高対策や外国人政策などが争点となる中、経済や外交を巡る閉塞(へいそく)感を背景に「自民党政治は左傾化している」と反発する保守系支持層を切り崩し、受け皿になっている。

候補者が首相に異例の注文

石破茂首相(自民総裁)は16日、大阪選挙区(改選数4)の新人候補の応援に入った。首相演説に先立ち、比例代表に立候補した自民新人で元衆院議員の長尾敬氏がマイクを握り、訴えた。

街頭演説を行う石破茂首相=16日、大阪市

「中国は日本を獲(と)りにきている。石破総裁は中国共産党にもっと厳しい姿勢で臨み、日米同盟を基軸とした価値観外交を続けていただきたい」

党の公認候補が選挙戦でトップに注文を付けるのは異例。中国軍機の自衛隊機への異常接近をはじめ、中国は日本周辺で挑発行為を繰り返しており、毅然(きぜん)と対応しない首相に憤慨する自民支持層は少なくない。前政権下で成立したLGBT理解増進法への反発も根強い。保守系として知られる長尾氏の訴えは強い危機感の裏返しといえる。

衆院で少数与党の自民、公明両党は参院選で非改選議席を含む過半数(125議席)の維持を目指すが、達成は困難な情勢だ。選挙結果は政権枠組みにも影響する。

参政、目標議席引き上げ

街頭演説する参政党の神谷宗幣代表=17日、大阪市

今回の〝台風の目〟が「日本人ファースト」を掲げて外国人対応と消費税の段階的廃止を政策の柱とする参政党だ。

神谷宗幣代表は首相来阪の翌17日、首相と同じ大阪市の南海難波駅前に立ち、欧米で台頭する移民受け入れ規制を念頭に「日本人ファーストは排外主義ではない。反グローバリズム。これが新しい潮流だ」と訴えた。

外国人総合政策庁の設置などは保守層の支持を得る一方、「差別主義」といった激しい反発も生む。もっとも陣営関係者は「ここまで支持されるのは初めて。活動が浸透してきた」と手応えを示す。参政は獲得議席目標を当初の6議席から20議席に引き上げた。

元自民支持者で京都市に住む男性(60)は参政支持に転じた理由を「大企業や大株主、外国資本を優遇し、消費税の使い道を説明しない政権与党に嫌気が差した」と説明し、続けた。

「安倍(晋三)元首相が亡くなってから自民は保守政党でなくなった。自民が頑張っていたら、参政はここまで支持されなかったと思う」

国民民主は「対決より解決」

街頭演説する国民民主党の玉木雄一郎代表=18日、大阪市

昨年の衆院選で「手取りを増やす」と訴えて躍進した国民民主党は所得税が生じる「年収の壁」の178万円への引き上げなど現役世代を重視した政策のほか、外国人土地取得規制法の制定などを公約に掲げる。交流サイト(SNS)での発信も強化し、無党派層への浸透を図る。

18日に大阪入りした玉木雄一郎代表は「対決より解決」をアピールし、声をからした。

「日本を変えたい。今のまま同じことを繰り返したって、この国はよくならない。もっと日本人の力を発揮でき、皆さんが働くことで報われる社会を一緒につくりたい」

保守「維新の牙城崩す」

街頭演説する日本保守党の百田尚樹代表=18日、大阪市

日本保守党は入管難民法改正やエネルギー分野への外国資本の参入禁止を中心に訴える。比例候補の百田尚樹代表は出身地の大阪で都市部を重点的に巡回。陣営関係者は「(大阪が本拠地の)日本維新の会や自民は本当の保守層の受け皿になれていない。維新の牙城を崩したい」と意気込む。(山本考志、藤谷茂樹、鈴木文也)

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