5000万ユーロのロスコの抽象画を子供が損傷、オランダの美術館(BBC News)

オランダ・ロッテルダムの美術館で25日、訪問客の子どもがアメリカの抽象画家マーク・ロスコの作品を損傷する出来事があった。同国メディアによると、「グレー・オレンジ・オン・マルーン No.8」は、推定で最大5000万ユーロ(約81億円)の価値があるとされている。 この出来事は、子どもが「監督されていない瞬間」に起きたという。 ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館の広報担当者はBBCに対し、損傷は「表面的なもの」であり、「絵画の下部のニスを塗っていない塗料層に、小さな傷が見える」と述べた。 また、「現在、オランダ国内外の保存専門家の意見を求めており、絵画の修復の次のステップを模索している」とし、「将来的にこの作品を再び展示できると思う」と語った。 ロスコの絵画は、博物館の隣で一般公開されている保管施設「デポ」に展示されていた。美術館コレクションから「一般に人気のある」作品を選んで展示する展覧会の一部だった。 ■特に損傷を受けやすいと専門家 美術品修復を行っている「ファイン・アート・レストレーション・カンパニー」の保存部門トップ、ソフィー・マカルーン氏は、「ロスコの『グレー・オレンジ・オン・マルーン No.8』のようなニスを塗っていない現代の絵画は、特に損傷を受けやすい」と述べた。 「複雑な現代の素材を使っていることや、伝統的なコーティング層がないこと、重厚なカラーフィールド・ペインティングから、どんなに小さな損傷でもすぐに見つかってしまう」、「この場合、上部の塗料層の傷が、作品の鑑賞体験に大きな影響を与える可能性がある」と、マカルーン氏は説明した。 カラーフィールド・ペインティングとは、キャンバス全体に大きく平坦に色のブロックを配置する手法を指す。 アート修復サービス「プラウデン&スミス」のマーケティングマネージャー、ジョニー・ヘルム氏も、「ロスコが使った顔料、樹脂、接着剤の混合物は非常に複雑」だと述べ、修復は困難だろうと指摘した。 特に、絵画にニスが塗られていないこと、つまり「環境にさらされている」ことが、修復者にとってさらなる課題となるという。 今回の修復に取り組む保存専門家は、現在、損傷の程度を記録し、ロスコの絵画の「修復に成功した過去の方法」を研究している可能性が高い。 「ロスコの作品は運が悪いようだ。過去にも、ロスコの絵画が損傷したと聞いたことがある」とも、ヘルム氏は述べた。 ロスコの1958年の作品「ブラック・オン・マルーン」は、2012年10月にロンドンのテート・モダンで、ウロジミエシュ・ウマニエツ氏によって故意に破壊された。 ウマニエツ氏は禁錮2年の実刑判決を受け、その後、自身の行為について謝罪した。 同氏の裁判中、グレゴール・マッキンリー検察官は、同作品の修復には約20万ポンドかかると述べていた。また、修復には18カ月を要した。 ■誰が費用を支払うのか 保険会社Aonのレイチェル・マートル氏は、美術品に対する保険規約は通常、「作品の物理的な損失や損傷に関連するすべてのリスクをカバーしている」と述べた。 これには「子供や訪問者による偶発的な損傷も含まれるが、特定の除外事項がある」という。 マートル氏によると、芸術作品が損傷した場合、ギャラリーの保険会社が専門の損失調整人を、展示施設に派遣する。 損失調整人は通常、「芸術作品の損傷を確認し、損失の正確な原因を特定するために監視カメラ映像を調査し、保存の選択肢を評価する」とマートル氏は述べた。 ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館は、今回の損傷の責任を誰が負うかについてコメントしなかった。 「グレー・オレンジ・オン・マルーン No.8」は1960年に制作され、1970年代にギャラリーが購入したとされる。 同美術館は過去に、展示されている芸術作品の損傷について、原因となった訪問者に費用を請求したことがある。 2011年には、オランダの芸術家ウィム・T・シパーズの、床にピーナッツバターを広げた作品「ピンダカースフロア」を何も知らずに踏んでしまった観光客に対し、作品の修復費用を支払うよう求めた。 美術館の広報担当者だったシャロン・コーエン氏は当時、「芸術作品を損傷した場合、支払うのは通常の手続きだ」と述べたと、現地メディアは伝えている。 オランダでは近年、現代美術作品が損傷を受けた例が多い。 昨年11月には、南部オイステルウェイクのアートギャラリーで強盗未遂事件があり、その際にアンディ・ウォーホルの複数のスクリーンプリントが損傷された。 ほかにも、オランダの市役所が昨年の改修工事中に、46点の芸術作品を誤って処分した可能性が高いと認めている。これには、アンディ・ウォーホルによる元オランダ女王の版画も含まれていた。 一方、美術館や博物館は、子供による損傷について、さまざまな対応方針を持っている。 昨年8月、イスラエルのヘクト博物館で、展示されていた3500年前のかめを4歳の男の子が誤って割ってしまった。 同博物館職員のリヒ・ラズロ氏は当時、BBCに対し、「かめは幼い子供によって偶然に損傷されたため、厳しく対処することはない」と述べた。 事件の直後、家族は再び展示会に招待され、観覧ツアーに参加した。 (英語記事 Child damages €50m Rothko painting in Dutch museum)

(c) BBC News

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