金融機関が不正融資247億円 無断で口座開設 ハンマーでパソコン破壊“証拠隠蔽”も

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 福島県にある金融機関が、247億円もの不正融資を行っていたことが、30日、第三者委員会の調査報告で明らかになりました。金融機関側はパソコンをハンマーで壊し、証拠隠滅を図った疑いも持たれています。

■無断で口座開設 組織ぐるみ

いわき信用組合 本多洋八理事長 「改めておわび申し上げます。本当に申し訳ございません」

 30日、謝罪会見の冒頭でおよそ20秒深々と頭を下げる本多理事長。

「発覚を免れるため、現役員を含めた複数の役員が歴代引継ぎ、隠蔽(いんぺい)を続けてきたという、極めて異例な不祥事です」

 組織ぐるみで不正を行ったのは、福島県いわき市に本店を置く「いわき信用組合」です。

 去年11月の時点では10億円を超える不正融資があったと公表していましたが、第三者委員会の調査では、不正な融資額は少なくとも247億円に上るといいます。

 調査報告書では、「我が国の金融機関の歴史を見ても類例をみないほどに悪質な事案」と厳しく非難しています。

第三者委員会 金田康裕弁護士 「この不祥事は明らかに違法行為。不正に関与した役員はすべて解任されるべき」

 いわき信用組合は、組織的に預金者の名義を使って、1300以上の別口座を無断で作り、企業実態のない“ペーパーカンパニー”の口座が作られたケースもありました。

 倒産しそうな大口の顧客に不正な資金を流し込み、資金繰り支援をしていたものとみられます。

 この不正について調査報道を続ける、朝日新聞の沢伸也編集委員は次のように述べています。

「金融機関は財産などの個人情報をすべて持っている。国の許可を得た金融機関だから、預けても大丈夫だよねって預けている。そういうところが組織的に名前を悪用し(預金者が)借金させられている。いわゆる特殊詐欺を受けているんですよね」

 これは朝日新聞が入手した、不正融資に使われていた印鑑です。預金者に無断で用意された数は少なくともおよそ90本。袋ごとに分けられ、店舗名が書かれているといいます。

第三者委員会 新妻弘道弁護士 「基本的には役員であったり職員の親族、知人といった一定の関係のある方の名義を使っていたのは調査で明らかになっているのですが、一見関係ない顧客の名義を使っている事例も少なからず見受けられました」

 沢編集委員によると、無断で口座が作られた名義人への取材を進めると、死亡者も含まれていたといいます。

 さらに驚くべきは、第三者委員会が設置されるのと同時期に、パソコンがハンマーで破壊され、証拠隠滅が図られた可能性が浮上しました。

沢編集委員 「第三者委員会を設置しているのは信用組合。信用組合の職員が自らハンマーで壊すっていう行為、調査をほごにしている行為に等しい」

 組織ぐるみの一連の不正行為は、およそ20年間行われていました。

 不正は悪質だとして、東北財務局は29日付で業務改善命令を出しています。

加藤勝信金融担当大臣 「東日本大震災の被災地の復興に貢献するために、国からの資本参加を受けながら、それを奇貨として架空融資の償却を行っていたことはきわめて遺憾であり、金融庁としても非常に重く受け止めております」

■経営陣7人辞任 会見で記者から“苦言”

 いわき信用組合は前代未聞の不祥事を受けて、現経営陣ら7人の辞任を発表しましたが、なぜか笑顔を浮かべる場面も…。

本多理事長 「隠蔽体質は少しずつ氷解したのが3月ぐらいから。この5月からは変質しつつあると私は思っています」

 パソコンをハンマーで破壊した職員が、誰かの指示ではなく、独断で「不安になって壊した」と証言していることについては次のように述べました。

「組織の中からみた印象は、回答自体に強い疑念を持つことでもない。キャラクターの問題とか私がよく知っている問題もある」 「(Q.正常化して溶け出すのに時間がかかったとか、自然現象を眺めているような回答が多いんですが)自然現象のような表現になってすみません。こういう場なので言葉を選んでしゃべっているとご理解ください」

 第三者委員会の調査では、10億円近い使途不明金も明らかになり、調査に限界があった形での結果報告となりました。

「名前を使ったことに対する謝罪があってしかるべき」
沢編集委員 「(会見で)不満だったのは、勝手に預金者の名前を使ったことに対する謝罪があってしかるべきじゃないかと思いました。我々の金融機関に対する考え方を変えなくてはいけないし、国も変えなくてはいけないという分岐点にたっていると思う」

(「グッド!モーニング」2025年5月31日放送分より)


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