Anthropicと組んだNEC それでも森田社長が「4つの主権」にこだわる真意

 NECは4月、米AI企業Anthropic(アンソロピック)とグローバルパートナーシップを結んだ。日本企業として初めてAnthropicのグローバルパートナーとなり、生成AI「Claude」(クロード)を活用した業種別のAIソリューション開発や、NECグループへのClaude展開を進めている。 【写真を見る】NEC森田社長の経歴と写真  Claudeを社内利用の標準機軸(ベース)に据えて「AIネイティブカンパニー」への脱皮を急ぐNEC。その裏側では、最新AIモデル「Claude Mythos」(クロード ミュトス、以下「Mythos」)が持つ驚異的な脆弱(ぜいじゃく)性発見能力の悪用リスクを巡り、世界中の政府機関が警戒を強めている。  テクノロジーが進化する中で、NECはセキュリティをどう実装し、データ主権を守り抜くのか。【NEC森田社長が語る「脱・人月商売」の行方 組織の壁を破るAI人材育成法】に続く今回の記事では、英ロンドンにおけるAnthropicとの直接交渉からわずか3週間で合意を取り付けた舞台裏と、NECの森田隆之社長が明かす「4つの主権」(ソブリン)の真意を聞いた。

――中期経営計画(中計)の発表会では、AI産業革命の時代には自ら変革し、AIネイティブカンパニーを目指すとの説明がありました。AIネイティブカンパニーを一言で定義すると、どんな会社でしょうか。どのような将来像をイメージしていますか。  一言で表すのは難しいのですが「(ビジネスのやり方や、業務における意思決定の)プロセスそのものが変わる」と考えています。教育や仕事の在り方、時間の使い方も含めて全てが変わってくるでしょう。  AIネイティブカンパニーを目指すということは、そういった新しい価値観や産業構造を理解した組織や会社になっていくという意味です。  将来像はまだ全てが見えているわけではありませんが、新しい価値観へのシフトは確実に起こります。例えば、過去の産業革命によって移動が自由になり、観光業が生まれたように、今までとは違う新たな産業が現れます。NECも、そのような新産業に関わっていきたいと考えています。 ――Anthropicとのグローバルパートナー提携の背景について教えてください。また、日本企業では日立製作所や富士通もAnthropicと提携している中で、NECのパートナーとしての位置付けはどのようになるのか、長期的な提携の在り方についても展望があればお聞かせください。  Anthropicと他社との関係性については、私がコメントする立場にありません。われわれは発表の通り、Anthropicの本社とグローバルなフレームワークの中での戦略的パートナーシップを結んでいます。これにはセキュリティを含めた先端技術の継続的な協力関係が含まれています。  今後、われわれが力を入れていく産業別の特化型AIの開発についても、Anthropicと連携していくことになりました。そのため、他社がどのようなパートナーシップを結ぶのかについては、やはりその会社に聞いていただくのがよいと考えています。  今後の展望や提携の将来像については、最新モデルも含めて、AIモデルそのものは、実際にわれわれがさまざまな業界のAI化を進める際に、その都度(顧客に)適したモデルを選択して使用していく方針です。自社開発の「cotomi」も含め、必要なときには複数のモデルを自在に使い分けることで、トークン(データ単位)当たりのコストとアウトプットを最適化できる形で提供していきます。  例えばサービスによっては、最先端の巨大モデルではなく、より軽量なモデルをベースにしてファインチューニング(追加学習)を施した方が、効率的かつ効果的に機能するケースも出てきます。  一方、社内でのソフトウェア開発やコーディングを含め、われわれ自身が内部的に利用するものについては、ある程度の標準化が必要です。現状、社内利用のベースにはClaudeを据えており、他のAIを併用するにしても、一定の標準化を進めていく経営判断をしています。 ――Anthropicとの提携交渉を担当した吉崎敏文副社長は、4月のロンドンでの直接交渉を経て、わずか3週間というスピードで合意に至ったと明かしています。森田社長は、Anthropicの意思決定の速さについて、同じような印象をお持ちでしょうか。また、NECとして同等のスピード感を目指す上で、Anthropicの組織の在り方から学べることがあれば教えてください。  Anthropicに限らず、グローバルトップの企業は意思決定のスピードが非常に速いです。トップ自らが動いてスピーディーに決断していくため、われわれもそのスピード感に合わせた動きをしなければなりませんし、それはNECでも十分に可能だと確信しています。また、世界は意外と小さく、こうしたイノベーションの中核的な人脈(インナーサークル)に日本企業としてしっかり入ることが極めて重要です。  今回、ポール・スミスCCO(最高事業責任者)のミーティングの進め方や、ミーティング後のコミュニケーションは非常にスピーディーで気持ちの良いものでした。日本企業もやろうと思えばできるはずですし、実際にそのように動こうとしている国内企業も増えていると感じています。

ITmedia ビジネスオンライン
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