求む国債発行減額、財務省へ圧力強める債券市場-規模と実施時期焦点

日本国債市場で金利が高止まりする中、財務省に国債の発行減額を求める声が主要投資家を中心に強まっている。超長期債で買い手不在が顕在化し、供給抑制などの対応は避けられないとの見方が広がる中、市場の関心はもはや「減額の有無」ではなく「規模とタイミング」になっている。

  りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは「財務省が7月から超長期債の発行額を減額することを前提に動いている 」と話す。この時期の発行額調整は異例であり、再度の減額を迫られないように大幅な減額を市場は期待しているとも語った。

  28日に実施された40年国債の入札は、市場の一部で楽観論が浮上していたにもかかわらず、不調に終わった。入札の好不調を示す応札倍率は事前の予想を下回り、2024年7月以来の低水準に沈んだ。これを受けて新発40年債のみならず、20年債や30年債の利回りも一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度上昇。債券先物も下落幅を拡大した。

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  先週の20年債に続く40年債入札の不調により、国債市場の不安定さが改めて浮き彫りとなった。日本銀行が国債買い入れ額を段階的に縮小する中、27日には財務省が国債発行額などに関するアンケートを幅広い市場参加者に送付したと伝わり、超長期債の発行減額への期待が高まっていた。しかし、関税や財政を巡る懸念から国内機関投資家は慎重な姿勢を崩さず、買い手不在という構造的な問題が市場に重くのしかかる。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「投資家に買い余力がないのであれば、需給を改善するには発行額を減らすしかない」と言う。特に30年債には即時の対応が必要だとし、減額の方向性はすでに明確であり、焦点はその規模とタイミングに移っていると述べた。

  SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、発行減額への期待から超長期金利はピークを打ったが、実際の減額幅が明らかになるまで投資家の慎重な姿勢が続くとみる。減額は7月の入札からと予想する。

  20日の20年債入札が記録的な不調に終わったことを契機に、日本の金利はドイツや米国を上回るペースで上昇、30年債と40年債の利回りは過去最高を更新した。かつて国内投資家が寡占していた超長期債市場の現在の積極的な買い手は海外勢であるため、需給の軟化は国内にとどまらず、海外市場にも波及し始めている。

関連記事:海外勢の超長期国債買い越しが3カ月連続で過去最高-国内勢は売り

  ただ、発行額の減額などの措置は付け焼き刃に過ぎないとの指摘もある。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「投資戦略として超長期債は買わない」と明言。国債買い入れの消却や発行減額の効果は一時的で、問題の根本にある「日本の巨額の債務残高」が解消されない限り、超長期債市場の地合いは改善しないと分析している。

その他の市場関係者の声:

明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャー

  • 財務省は7月から超長期債を減額してくるだろう。このタイミングでやらないと再び売られてしまう。20年、30年、40年債を減額し、2年債や5年債を中心に増額してくるとみている

米運用会社のブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、キャロル・ライ氏

  • 超長期債の供給が調整されれば、市場の需給環境の改善に大きく寄与する。日銀と財務省が市場の圧力を和らげるためには、量的引き締め(QT)のペースを緩めるか、30年債の発行を減らして10年債以下に供給を増やす選択肢が考えられる

東京海上アセットマネジメント債券運用部の海老原慎司チーフ債券ストラテジスト兼グローバル金利運用グループリーダー

  • 今は発行額と需要のバランスが崩れているので、日銀が発行を買い入れオペで受け止めるというより発行額を何とかするべき

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのシニア債券ストラテジスト、駱正彦氏

  • 6月20日開催予定の国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合に向けたアンケート実施は、早ければ7月にも正式に発行額が調整されることを示唆しており、10-12月期までに発行計画が見直される可能性がある

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