ロシアのペスト研究員死亡をめぐる不可解な状況とこれまでにわかっていること(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)

シベリア・極東イルクーツク・ペスト対策研究所が2019年に公開した写真(撮影日不明)。研究員たちが研究室にいる様子が写されている。(The Irkutsk Anti-Plague Research Institute of Siberia and Far East via AP)

10月2日、イルクーツクの研究所に勤める職員が肺炎で死亡した。女性の死因となった病気が何だったのかについて現地からは相反する情報が出ており、混乱が広がっている。世界保健機関(WHO)は、アメリカがペストにさらされるリスクは「非常に低い」としている。シベリアにあるペスト対策の研究施設で研究員が死亡したことを受け、ロシア当局は世界に広がる懸念の火消しに追われている。

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シベリアのペスト対策研究所(Anti-Plague Research Institute)で働いていた28歳の職員、ダリア・シピロワ(Daria Shipilova)氏は、数日前に肺炎で入院していた近隣の町シェレホフで、10月2日に死亡した。世界保健機関(WHO)は10月6日、AP通信に対し、ペストがヨーロッパの広範な地域に及ぼすリスクは「非常に低い」と述べた。しかし、事態の全容が解明されたわけではない。実のところ、現時点ではほとんど何も分かっていないに等しい。これまでのところ、ペストの集団発生は確認されていない。だが、いわゆる「最初の感染者(patient zero)」とされる女性がどのように感染したのか、職場で感染したのか、そしてロシアの現在の安全管理体制について矛盾する情報が相次いでおり、一部の医療専門家は懸念を強めている。WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は10月6日、Xに投稿し、同機関がロシアの保健当局と連絡を取っていることを明らかにした。あわせて、同じ研究所に関連して発生したとされる2例目の感染例についても、追加の情報を求めているという。「奇妙な状況だ。もっと透明性を高め、状況をはっきりさせるためにはもっと多くの情報が必要だ」ボストン大学新興感染症センター(Boston University Center on Emerging Infectious Diseases)の創設所長、ナヒド・バデリア(Nahid Bhadelia)医師はBusiness Insiderにそう語った。

今、明らかになっていることを整理してみよう。


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ペスト菌(Yersinia pestis)による感染症、つまりペストは進行が非常に速い細菌感染症だと、バデリア氏は説明する。肺ペストの患者は、24時間足らずで発症することもある。放置すれば命を落とす恐れがある。幸いなことに、早期に発見できれば治療は極めて簡単だ。抗生物質を投与すればいいのだ。2025年7月には、アリゾナ州の男性が病気の猫2匹から肺ペストに感染した。彼は腹痛、胸の痛み、空咳が2日続いたため、医療機関で診察を受けたが、入院から8時間後に死亡した。ただ、男性と接触した46人は全員、予防措置として抗生物質を服用したが、感染者はいなかった。バデリア氏は、これがロシアの事例に関して、これまでで最大の謎の一つを示していると指摘する。シピロワ氏が経験豊富で、自身が病原体にさらされたことを認識し、それを報告していたのなら、なぜ隔離され、速やかに薬を投与されなかったのか、というものだ。

「早期の特定と曝露後予防(感染の恐れがある接触のあとに薬を投与する予防措置)は、このような事態を回避できる方法の一つだ」とバデリア氏は述べた。


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ダリア・シピロワ氏の死因については、まだほとんど何もわかっていない。独立系の地元メディア、リューディ・バイカラ(Lyudi Baikala、英語名People of Baikal)は、同氏が9月29日に入院したと報じている。また、シピロワ氏が10月2日に亡くなったと、彼女の友人がCNNに語った。ロシアの公衆衛生監督当局ロスポトレブナドゾル(Rospotrebnadzor)は、シピロワ氏を検査したところ「患者の業務に関連する微生物は検出されなかった」とし、死因は「原因不明の肺炎」だと発表した。一方、リューディ・バイカラは、研究所の同僚の1人の話として、シピロワ氏が「万が一のことが起きて誰かに感染させてしまうことを、ひどく心配していた」と報じている。

別の同僚たちは、彼女を「責任感のある人物」と評し、ペスト対策研究所の安全対策については「しっかりした施設」だと語った。

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