「まるで街」特殊詐欺の拠点に病院や風俗店 日本人「攻略本」も

真相・ニュースの現場から

毎日新聞 2026/4/17 05:00(最終更新 4/17 09:34) 有料記事 2614文字
詐欺拠点内にあった総合病院の産婦人科に置かれた分べん台=タイ東北部スリン県近郊のカンボジアとの国境地帯で2026年4月7日、国本愛撮影

 部屋に足を踏み入れてすぐ、違和感があった。

 一見、どこにでもある産婦人科だ。整然とした室内に分娩(ぶんべん)台と、ピンク色の婦人科用機器が置かれている。だが、窓は金属板に遮られ、外の景色は見えない。

 机上に置かれた中国語のプレートには、中国人とみられる医師の顔写真や経歴が記されていた。翻訳アプリが入ったスマホをかざして、電波が届いていないことに気がついた。かろうじて読み取れた漢字によれば、帝王切開や中絶、不妊治療まで行っていたようだ。

奇妙な病院

 この奇妙な病院があったのは、タイ軍が制圧した巨大な特殊詐欺の拠点の一角だ。場所はタイ東北部スリン県チョンチョム近郊のカンボジアとの国境地帯。タイ軍が4月7日に報道陣に公開した。

 「産婦人科」には、特殊詐欺の実行グループのメンバーや、拠点内に設けられた性風俗店の女性らが通っていたとみられる。

 タイ・カンボジアの国境地帯で見つかった特殊詐欺の大規模な拠点では、日本人に詐欺の電話を繰り返した痕跡も見つかりました。記事の後半では、日本人を狙った手口の詳細なマニュアルも掲載しています。

 引き出しを開けると、子宮頸(けい)がん検診とみられる結果通知やカルテが出てきた。患者の多くは20〜30代の女性だが、中には「16歳」「17歳」という記載もあった。

 未成年の少女が受診していた可能性もある――。思わず息をのんだ。

ディズニーランドの1・5倍

 この拠点が見つかったのは、昨年12月に起きたカンボジアとの国境紛争がきっかけだった。タイ軍はこの一帯から無人機(ドローン)攻撃を受けたとして制圧に踏み切った。タイ軍の情報では、ここには「カジノが2棟ある」だけのはずだった。だが、制圧後初めて、大規模な特殊詐欺の拠点だと判明した。

 その規模は、犯罪拠点というより「街」に近い。敷地は東京ディズニーランドの約1・5倍の約80万平方メートル。約160棟の異様な建物群が高い塀で囲まれている。

 周囲には森が広がり、人影はない。かつては1万人以上が住んでいたとみられ、制圧時には大勢の人を乗せたバスが何台も逃げていったという。

性風俗店から総合病院まで

 無人の「街中」を歩いてみると、中華料理店などの飲食店や美容室が並ぶ一角があった。女性が接待する飲食店もあり、壁には至るところに性風俗の案内チラシが張られている。まつげサロンやマッサージチェアを備えた娯楽施設まで完備するホテルもあった。

 極めつ…

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