KADOKAWAをめぐる株主提案のなか、フロム・ソフトウェアは、これからも自由にゲームを作れるのか
最近、KADOKAWAを巡るひとつの「騒動」が、ネット上で話題を呼んでいる。
発端は、同社の筆頭株主であるアクティビストファンド「OASIS(オアシス・マネジメント)」が公表した意見書だ。
アクティビストファンド──いわゆる“物言う株主”とは、企業の株式をまとまった量保有した上で、経営陣への提言や株主提案を通じて、企業価値(≒株価)の向上を目指す投資家のこと。近年は日本でも活動が活発化しており、大手企業がその対象となるケースも珍しくなくなってきた。ゲーム業界関連で言えば、ガンホー・オンライン・エンターテイメントやスクウェア・エニックスなどが、アクティビストの活動によって、経営に圧力がかけられている事例としてあげられる。
香港を拠点とするオアシスは、KADOKAWAの株式を約14%保有する筆頭株主。その意見書の内容をざっくり言えば、「KADOKAWAの業績低迷は、現経営陣に責任がある」というもので、さまざまな改善策の提案を並べつつ、6月24日に開催される定時株主総会で、現社長の再任議案への反対票、ひいては自社提案への賛成票を投じるよう他の株主に対して要請している、といったものだ。
なお、当然ながらKADOKAWA側はこれに真っ向から反論しており、両者はそれぞれの主張をまとめた資料を公開し合うなど、総会を前に対立を深めているというのが、現在の状況だ。
そして今回、ゲームファンの間でとくに話題となったのが、この意見書の中に、子会社であるフロム・ソフトウェアに言及する箇所があったことだ。
『ELDEN RING』をはじめ、世界的なヒット作を生み出し続けるフロム・ソフトウェアは、いまやKADOKAWAグループの「稼ぎ頭」のひとつ。意見書の中では、同社を「戦略的に最も重要な子会社」と位置づけた上で、その価値を十分に活かしきれていないといった趣旨の指摘がなされている。
それだけに、一部のゲームファンからは、「経営を巡るこうした対立が、ゲーム開発の現場に影響するのではないか」と、その動向を注目(心配)する声も上がっていた。
正直に言えば、株主と経営陣のどちらの主張に分があるのか、といった話は、外野である我々が軽々に論評できるものではない。それは最終的に、株主総会の場で株主たちが判断することだろう。
ただ、ゲームメディアとして、ひとつ気になったことがある。
それは、こうした騒動のさなか、実際にゲームを作っている「現場」は、いったい何を思っているのか? ということだ。というのも、ゲーム会社の経営を巡って、株主や親会社といった「資本側」の意向が取り沙汰されるケースは、なにもKADOKAWAに限った話ではない。むしろ世界的に見れば、近年増え続けている話題だと言っていい。大規模なレイオフやスタジオ閉鎖のニュースが、ここ数年、絶えず業界を賑わせているのは周知の通りだ。
その背景にあるのは、ゲーム開発費の急激な高騰だ。
一昔前、AAAタイトルの開発費は「100億円」と言われれば超大作だったものが、それがいまや、2〜3億ドル(320億〜480億円)は当たり前、『Call of Duty』シリーズの近作に至っては、1本あたり6〜7億ドル(約1000億円)。そして今年11月に発売を控える『グランド・セフト・オートVI』は、開発費10億ドル超。アナリストの推定では15億ドル(2000億円超)に達するとも言われている。
結果として、AAAタイトルの開発は、「一発外せばスタジオ閉鎖」すらあり得る、極めて高リスクなビジネスになっている。
そして、投じる金額が大きくなれば、出資する側・経営する側の目が厳しくなるのも、ある意味では当然のこと。昨今の保守的な内容や、続編偏重の流れも、その「失敗できない」状況が生んでいる──そう言っても、過言ではない。
では、そんな時代にあって、当のゲーム開発の現場は、自分たちの置かれた環境をどう見ているのだろうか?
そこで電ファミニコゲーマーでは、今回の意見書でも名前の挙がったフロム・ソフトウェア。その舵取りを担う社長であり、『ELDEN RING』のディレクターとしても知られる宮崎英高氏に、短いながらもメールで質問を投げかけてみた。
今回の騒動について、当のデベロッパー(開発側)としてはどう考えているのか? 頂いたコメントを、そのまま紹介したい。
宮崎英高氏ご質問頂いた件について、報道されている一通りの事実は把握しています。
ですが、それ以上の詳細を知る立場にはありませんし、我々以外にも多くの関係者、当事者がいらっしゃる話なので、本件について踏み込んだコメントは難しいというのが正直なところです。
なので、あくまでも私に言える範囲で、ということになりますし、会社ではなく私個人の意見として、ということになりますので、その点はご了承ください。
まず、私としては、現在フロム・ソフトウェアの置かれている開発環境には、概ね満足しています。改善すべき点がないとは言いませんが、過度な干渉なく、自由に、自分たちの作りたいゲームを作れていますから。
そして、将来においてもそうした環境が維持され、できるだけ、ゲーム制作だけに集中していられることが、私にとっても、我々フロム・ソフトウェアにとっても、最も重要であろうと思っています。
これまで、我々がユーザーさんにとって価値のあるものを作れていたとするなら、その源泉の大きな一つは、そうした環境であったろうと思います。
最後に、もしこのメッセージをユーザーさんに読んで頂けるのなら。我々はこれからも、これまで以上に全力で、価値のあるゲームを作ろうと努めていきますので、発表済のタイトル、またその先の未発表のタイトル含め、是非、ご期待頂ければと思います。
まぁ、当たり障りのないコメント(とはいえ、こういう質問に宮崎氏が答えることは珍しいのだが)ではあるかもしれないが、
「現在フロム・ソフトウェアの置かれている開発環境には、概ね満足している」「自由に、自分たちの作りたいゲームを作れている」
といった見解が、騒動の渦中のいま、こうやって宮崎氏自身の言葉として得られたことは、なかなかに興味深い部分かもしれない。
前述の通り、いまやゲーム開発は、「一発の失敗」が許されない時代に突入しつつある。世界中のスタジオが保守的にならざるを得ない、そんな状況の中にあって、
フロム・ソフトウェアは、なぜ独創的なゲームを作り続けていられるのか?
その秘訣が、ちょっとだけだが垣間見える──そんな内容だったようにも思う。
なんにせよ……ゲーマーとしては、フロム・ソフトウェアをはじめ、各デベロッパーにとって、自由に面白いゲームを作るための環境が守られることを願うのみ。まだ見ぬ新作タイトルも含めて、今後の動向に注目したい。
ライター
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