米雇用統計、「利下げ先送りの余地さらに与える」-市場関係者の見方

Rita Nazareth

5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが減速し、前月分も下方修正された。失業率は横ばい。

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  市場関係者のコメントは以下の通り。

◎BNPパリバの最高投資責任者(CIO)室責任者、フロリアン・ロジャー氏:

データは予想外ではなく、コンセンサスに近い内容だが、労働市場が依然として底堅いことを示している。

全体として、どちらかというと市場にとっては良いニュースだ。

◎22Vリサーチのディレクター、ケビン・ブロックス氏:

投資家はこの日、労働市場データの軟化を憂慮していた。

雇用者数が予想を上回り、失業率が横ばいだったことは強材料だ。

◎ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのリンゼイ・ロズナー氏 :

予想を上回る米雇用者数の伸びと安定した失業率は、最近のショックにもかかわらず米労働市場の底堅さを示している。

米金融当局が物価安定の方の責務に対するリスク管理に注力しているため、この日の予想を上回る雇用統計がその忍耐強いアプローチを変えることはほとんどないだろう。

◎eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏:

今回の雇用統計は労働市場の崩壊を懸念していた投資家に安心感をもたらすだろう。労働市場は絶好調というわけではないかもしれないが、深刻な悪化の兆しは見られない。

投資家にとってこれは何を意味するのか。強い労働市場は、米金融当局に利下げ先送りの余地をさらに与えることになる。

当局はさらなる時間稼ぎが可能になるが、仮にインフレ率の低下が続けば、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は景気抑制的な金利政策を正当化しづらくなるかもしれない。

◎LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏:

雇用者の増加がこうした鈍いペースで続く場合、FOMCは様子見姿勢を維持する可能性が高い。けさ発表された雇用統計を受けて市場には安堵(あんど)感が広がった

◎ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏:

雇用市場は持ちこたえており、経済が依然として底堅いのは明らかだ。

連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げに慎重であるべきだ。関税の影響がインフレ指標にまだ完全には反映されておらず、雇用市場も利下げを強いられるほど悪化していないからだ。

こうした背景を踏まえると、依然として慎重姿勢が求められる。バリュエーションは高く、関税リスクの多くが解消されておらず、経済は減速の兆しを見せているからだ。

◎プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏:

貿易を巡る不確実性がピークにある時でさえ、労働市場は比較的堅調を維持した。市場は経済リスクに対して明らかに神経質になっているが、現時点ではデータは堅調に推移しており、株式相場のさらなる上昇が依然として、市場参加者にとって最も苦痛を伴う展開(ペイントレード)となっている。

連邦公開市場委員会(FOMC)にとって、利下げの緊急性は低い。特に平均賃金が予想の上限付近で推移している現状において、貿易を巡る霧が晴れるまで金利を維持することは、政策ミスのリスクを軽減する。最初の利下げは2025年終盤に実施されると予想する。

原題:Stocks Rise as Jobs Surprise Spurs Treasury Losses: Markets Wrap(抜粋)

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