道端で子猫が絶命、草むらから聞こえた「ミー」という別の小さな声→生き残った1匹を保護 10年後は5匹の猫のボス的存在として君臨

もう1匹は絶命ーー生き残ったキビくんを保護(画像提供:やまざきうなむーさん)

「道端で遭遇。2匹いた子猫のうち1匹は車に轢かれて亡くなっていました。生き残った1匹を保護。今では大きく成長しボス的存在です」

そんなコメントとともに公開された愛猫のビフォーアフター写真が、ネット上で大きな反響を呼んでいます。写っているのは、キジトラ猫の男の子「キビ」くん。

1枚目の写真は、保護された当時のもの。生後推定2カ月ほどだったキビくんは体がほっそりとしており、どこか心細そうな表情を浮かべています。一方、2枚目の写真は10年が経過した現在の姿。ふっくらと丸みを帯びた体つきに、毛並みはつやつや。飼い主さんをまっすぐに見つめるそのたたずまいからは、数々の困難を乗り越えてきたたくましさが伝わってきます。

飼い主のやまざきうなむーさん(@unamuu2014)は、「貝猫商事」の屋号で、動物をモチーフにした立体造形の創作活動を行っています。キビくんと出会ったのは2016年7月。自転車での帰宅途中に感じた、ある「嫌な予感」がきっかけでした。

絶命したきょうだい猫、そばから小さな鳴き声が…

2016年、保護当時のキビくん(画像提供:やまざきうなむーさん)

その日、飼い主さんは自転車で鹿野山(かのうざん)へ向かっていました。その下山中、前方の道路上に何かが横たわっているのを見つけます。

近づいて確認すると、そこにいたのは生後1〜2カ月ほどと思われる小さな子猫でした。すでに車にはねられており、息を引き取ったあとだったといいます。

「もっと早くここを通りかかっていれば、助けられたかもしれなかった」

そんな悔しさと後悔の念にさいなまれ、飼い主さんは激しく落ち込みました。しかし、このまま道路上に残していけば、さらに車にひかれてしまうかもしれない。そう思い直した飼い主さんは、亡くなった子猫をそっと道路脇の草むらへと移動させました。

自転車に積んでいたボトルの水を子猫の口にふくませ、周囲の草を集めて小さな体の上にかけ、静かに合掌したそのときでした。

「ミー」

かすかな鳴き声が、静寂を破って耳に飛び込んできました。耳をすますと、さらにもう一度「ミー」と聞こえます。あたりを見回すと、すぐそばの草むらに、亡くなった子猫と同じくらいの大きさ、そして同じような毛柄をしたもう1匹の子猫がいました。怯えるような目つきで、こちらを見上げていたといいます。

「亡くなったのは、この子のきょうだいだ」

飼い主さんは直感的に、そう感じました。命を落としたきょうだいのそばを離れず、ずっと寄り添っていたのでは――。その健気な姿を見た瞬間、一気に涙があふれてきたと振り返ります。

「うちの子になるかい?」 家族に迎える決意

草むらで鳴いていたキビくんを保護(画像提供:やまざきうなむーさん)

そっと手を差し伸べると、子猫は少し逃げるそぶりを見せたものの、すんなりと手の中におさまりました。腕に抱き上げると、安心したように「ミーミー」と鳴き始めたそうです。

亡くなっていた子猫の方がやや体が大きく、お兄ちゃんのように見えたという飼い主さん。抱き上げた子猫に向かって、優しく語りかけました。

「お兄ちゃんは天国に行ってしまったよ。うちの子になるかい?」

その場で体を確かめると、性別はおそらく男の子。ノミやダニはほとんど見当たらず、お尻が少し汚れている程度で、健康状態はそれほど悪くなさそうでした。ちょうど近くに実家があったため、飼い主さんは子猫を抱いたまま立ち寄り、一時的に母親に預けることに。急いで工房へ戻ると、車に猫用のケージを積み込んで再び実家へと向かいました。

飼い主さんのお腹の上で落ち着くキビくん(画像提供:やまざきうなむーさん)

実家に戻ると、子猫は居間でおとなしく待っていました。その体の状態や落ち着いた様子から、飼い主さんは「とても野良の世界で生きていた子とは思えなかった」と語ります。

おそらく、人間の手によって捨てられたのだろう――。亡くなったきょうだい猫のことを思うと、深い悲しみとともに激しい憤りが込み上げてきました。複雑な思いを胸に抱きながら、飼い主さんは生き残った子猫を工房へと連れ帰りました。


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ケージの中から飼い主さんを見つめるキビくん(画像提供:やまざきうなむーさん)

子猫を保護するのは、飼い主さんにとって久しぶりのことでした。

まずは寝室に保管されていた、長らく使っていなかったケージを引っ張り出して徹底的に掃除。ベッド、トイレ、水飲み場、ごはん皿を整え、子猫をケージの中へと迎え入れます。

最初は落ち着かない様子を見せる子猫。飼い主さんは「いつかまたこのような機会があるかもしれない」と、日ごろから子猫用のミルクを常備していました。必要な分量を調べるために体重を測ると、550g。やはり生後2カ月ほどと思われました。

液状おやつを夢中で食べるキビくん(画像提供:やまざきうなむーさん)

口の中を確認すると、すでに歯はきれいに生えそろっています。どうやらミルクよりも固形食の方がよさそうな状態でした。ただ少し下痢気味だったこともあり、まずは消化のよい液状のおやつを与えてみることに。すると子猫は夢中で食べ始め、あっという間に完食してしまいました。

その後、子猫用のキャットフードや猫砂を買いに走り、必要な環境をすべて整えた飼い主さん。お腹が満たされた子猫は少し安心したのか、すやすや――。飼い主さんも子猫のケージの隣にあるベッドで就寝しました。

お腹の上がくつろぎスポットになったキビくん(画像提供:やまざきうなむーさん)

そして数時間後、子猫の寂しげな鳴き声で目を覚まします。子猫はケージの中をうろうろと歩き回りながら、大きな声で鳴いていました。しかし、ケージから出して優しく抱きしめると、ピタリと鳴き止みます。頭をなでてあげると、のどをゴロゴロと鳴らしながら、飼い主さんの体に頭をすり寄せてきました。

「あまりのかわいらしさに、すっかりメロメロになりました。それと同時に、虹の橋を渡ってしまった『お兄ちゃん猫』の分まで、この子を絶対に幸せにするぞと心に誓いました」

2013年に保護した「ワムハチ」くん、「コトラ」くん以来となる子猫のお世話。飼い主さんにとっては、まさに“子猫のとーちゃん”が復活した瞬間でした。

先住猫のポップくんが、キビくんのお兄さんがかりに(画像提供:やまざきうなむーさん)

保護された翌日になると、子猫はすっかり緊張が解けたようで、大の甘えん坊に変わっていました。常に飼い主さんのそばに寄り添い、抱き上げて頭をなでると、コロコロ、ぐるぐるとうれしそうにのどを鳴らします。どうやら、頭をなでてもらうのが大好きな性格のようでした。

やがて、先住猫の「ポップ」くんも、まるでお兄ちゃんのように子猫の面倒を見てくれるように――。新たな家族のかたちができあがっていったのです。

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