京大周辺「ガチ中華」が熱い、中国人留学生増が背景に

壁一面に写真付きのメニューが並ぶ火楓源(京都市左京区で)

 中国人向けの中華料理店が、留学生が多い左京区の京都大周辺に目立つようになった。こうした店は「ガチ中華」と呼ばれ、本場の味を求める日本人学生の来店も多い。人気の理由を探った。(東大貴)

■「帰郷したよう」

 百万遍の交差点から東大路通を北上すると、学生向けのアパートやスーパーが並ぶ1キロ弱の間に、約10店のガチ中華が集まる。

 中国東北部の料理を中心に出す「 火楓源(かふうげん) 」。香辛料としょうゆで味付けした骨付きの豚肉料理などが人気で、平日から大勢の学生らでにぎわっている。

ガチ中華が並ぶ東大路通

 京都府内の中国人留学生らでつくる「京都地区中国留学生学友会」の会長で、この店の常連という京大院生(29)はホルモン料理などがお気に入りだ。

 「中国語のメニューに囲まれ、帰郷したかのような安心感がある。東京に比べ、学生客が多い京都は安価で量が多いのもうれしい」と話す院生。同じ中国人が営むガチ中華には安心感があるといい、「異国で暮らす上で頼りになる大切な存在」と強調する。

■学生街に商機

 同店を営むのは、大連出身の于さん(35)。学生が多い百万遍近くにガチ中華が少なかったことに商機を見いだし、2018年に開店。20年には、京大周辺で別のガチ中華もオープンさせた。

 京都には 出汁(だし) や鶏ガラスープを使った「京中華」が根付き、からしと中華麺を絡めた「からしそば」などが有名だが、日本人向けにアレンジされた中華料理を好まない中国人も多く、「油分が多い本場の味」にこだわる。

 于さんによると、一帯では6~7年前からガチ中華が増えた。中国人留学生の増加などを背景に、在日中国人のネットワークを通じて出店希望者が集まっているとみられるという。

 京都市の統計によると、24年に「留学」の在留資格で来日した中国人は8634人に上り、20年(6656人)から約3割増加した。

 「昔は、本場の味を自炊で再現しようとする中国人留学生も多く、そうした留学生の需要を見込んで出店している店が多い」と于さんは語る。

■日本人にも対応

 一方、京大周辺のガチ中華は、日本人学生にも対応しているのが特徴だ。火楓源は、京都発祥の「 餃子(ギョーザ) の王将」に倣って日本人に好まれる料理もそろえており、客の半数は日本人という。

 最近は、中国語のメニューが読めない日本人向けに写真付きのメニューをそろえる店も多い。大阪府の貿易業者が昨秋にオープンした「瑞香園」で店主を務める中国人男性(31)は「お得な定食メニューを求める日本の学生も多く、繁盛している」と手応えを感じている。

 京大付近のガチ中華によく通う日本人学生(20)は「町中華との対比で語られることが多いけれど、試してみるとほどよい辛さで、好きな日本人も多いはず」と魅力を語る。

 山下清海・筑波大名誉教授(華僑・華人研究)はガチ中華の出店が相次ぐ背景について、「中国人の不動産業者だけでなく、日本が不景気に陥り、中国人向けの不動産取引に応じる日本の業者が増えたことも要因ではないか」と指摘。「コロナ禍での海外旅行控えなどをきっかけに、本場の雰囲気を手軽に楽しめるガチ中華のニーズが高まった可能性もある」としている。

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