米空軍、老朽化した戦闘機部隊を強化するため新型のF
米空軍のブラウン参謀総長は2021年「F-16VとF-35の中間くらいの新しい戦闘機」について言及し、2022会計年度の予算要求資料に「手頃な価格の戦闘機=MR-X」が登場していたが、Air & Space Forces MagazineとAviation Weekは「F-16Gと呼ばれる新型のF-16導入が米空軍首脳会合で議題に取り上げられる見通しだ」と報じた。
参考:Air Force Eyes New-Build F-16s to Boost Fighter Force 参考:Lockheed Pitches Advanced F-16G To U.S. Air Force
ロッキード・マーティンは2017年「テキサス州フォートワースでF-35を増産するため、同じ敷地にあるF-16の最終組立ラインをサウスカロライナ州グリーンビルに移転する」と発表、2017年11月にイラク向けのF-16IQ(Block 50/52ベースの能力制限バージョンでAIM-120やAIM-9Xを運用できない)最終号機を出荷した後に移転が始まり、17ヶ月後の2019年4月にグリーンビルの最終組立ラインが稼働を始めてF-16C/D Block70/72(マーケティング上の名称はF-16V)の生産が始まった。
出典:Lockheed Martin
2019年4月までにバーレーン(16機)とスロバキア(14機)から、2020年4月までにブルガリア(8機)、台湾(66機)、モロッコ(25機)から、2023年にもブルガリアから第2バッチ分として追加発注(8機)が舞い込み、最初に受注したバーレーン向けの納入開始は2020年に予定されていたものの、COVID-19流行の影響で9ヶ国470社(主翼、垂直尾翼はIAIが、中央胴体、後部胴体、コックピット構造、コックピット側面パネルはPZLが生産を担当)で構成されるサプライチェーンが大混乱に陥って納入開始は大幅に遅延してしまう。
2026年9月時点でバーレーン(16機)、スロバキア(14機)、ブルガリア(8機)向けの納入はほぼ完了しているが、台湾、モロッコ、ブルガリアの第2バッチ分は依然として2年から3年の納入遅延に直面しており、ロッキード・マーティンのサンチェス副社長は2024年7月「将来的な需要は300機近くになる」と主張していたが、トルコのBlock70/72発注とインドのF-21購入構想は事実上の立ち消えとなり、タイ需要とコロンビア需要はグリペンEにオフセット内容で競り負け、フィリピンでもグリペンEに押され気味で、2026年4月にペルーから12機(12機の追加発注も計画中)の発注を獲得しただけだ。
出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Jennifer Nesbitt
米空軍はF-15C、F-16C/D、A-10といったレガシーな航空戦力をF-35Aで更新する予定だったのだが、依然として高額な運用コスト、構造的な問題で低下し続ける即応性(Mission Capable RateとFull Mission Capable Rate)、先の見えないBlock4の開発遅延といった問題で、F-15Cと一部のF-15EをF-15EXで更新する計画が始まっており、ブラウン参謀総長は2021年「4.5世代もしくは第5世代マイナス」「F-16Vよりも高度でF-35よりは高度ではない」と表現する新しい戦闘機導入に言及。
この発言は「全てのF-16C/DをF-35Aで更新すると米空軍の予算は運用コストの負担に耐えられなくなる」という意味で、2022会計年度の予算要求資料に第5世代マイナス機に該当する「MR-X」が正式に登場し、この中で「ハイエンドなミッション以外を手頃な価格で遂行可能な戦闘機がMR-Xで、本格的な開発に着手するのは6~8年先、F-16C/Dを2035年頃からMR-Xで更新する。F-35Aの運用コストが大幅に削減された場合はMR-Xの役割をF-35Aが果たす可能性も残されている」と説明。
出典:U.S. Air Force photo by Zelideth Rodriguez
F-16プログラム・マネージャーを務めるベイリー大佐や戦闘機プログラムを統括するホワイト准将は「MR-X開発を語るにはまだ早い」と述べたものの、ベイリー大佐は「新規設計のMR-X」と「T-7ベースのMR-X」の存在に言及していたが、ウクライナ侵攻や中東での戦争の影響でF-16C/Dの後継機問題が語られなくなった間もF-16Cの即応性(Mission Capable Rate)は2022年の70.70%から2024年の64.05%に、 F-16Dは68.90%から59.03%に下がり続け、2026年1月から6月まで日本の嘉手納空軍基地に展開していた第120戦闘飛行隊のフランク・プロコップ中佐は「F-16C Block30の運用維持に課題がある」と言及した。
プロコップ中佐は「F-16が最初に製造された当時、1飛行時間あたりにかかる整備工数=整備マンアワーは概ね6〜8時間程度だったが、現在は1飛行時間あたり平均15〜20時間の整備工数を費やしている」と述べ、これは機体のひび割れなど構造的欠陥が非常に高い頻度で発生し「より綿密な整備」が要求されているためで、プロコップ中佐は「恐らく我々が直面している最大の課題は機体の整備時間の要求が高まっているにもかかわらず、それに見合うだけの人員増強が整備部隊に対して行われていないことだ」と指摘。
出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Melany Bermudez
ミッチェル航空宇宙研究所のヘザー・ペニー氏(元F-16パイロット)も「老朽化した機体は運用稼働率と日常の運用ペースに悪影響を及ぼすだろう」「例えるなら35年前の車でF1に出場するようなものだ」「本当にそんなことをやりたいか?」「今のところF-16を運用し続けることは出来るが、空軍はF-16に関する長期的な計画をまだ示しておらず、旧型機を置き換えるのに十分な速さで新型機を購入する予定もない」と指摘し、さらに問題なのはF-35AやF-15EXの大半が現役部隊に配備されて州兵部隊に回ってこないことだ。
この点についてペニー氏は「空軍が現役部隊と並行して州兵部隊の機種更新を行わなければ戦力全体の重要な要素を失うリスクがあるだけでなく、実戦では通用しない機体を州兵部隊に抱えさせるリスクがある」と警告していたが、Air & Space Forces Magazineは16日「複数の関係者によれば米空軍は老朽化した戦闘機部隊の能力不足を補うため新型のF-16導入を検討している」「この新型のF-16はF-16C/Dからのアップグレードを反映してF-16Gと呼ばれる可能性があり、米空軍の大将が集まる秋の空軍首脳会合(Corona)で議題に上がる見通しだ」と報じた。
出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Francisco Huerta
“空軍はF-16を826機保有しており、そのうち484機が現役部隊で運用されているものの機体の平均機齢は34年に達しており、保有する最も新しい機体でも2005年から飛行を続けている状態だ。匿名を条件に語った関係者は「新たなF-16にはIVEWSを含む新しい機能が複数搭載される可能性が高く、旧型のC/D型だけでなくBlock70をも凌駕する機体になる」「もし空軍が新型のF-16を購入するとしても古いF-16ではない。F-15EXを調達するケースに近いものになる」「機体自体の強度と完全性が失われ始めるまでに寿命延長プログラム(SLEP)を実施できる回数には限度がある」と述べた”
Aviation Weekも「ロッキード・マーティンが退役時期を迎えるF-16部隊の戦力維持のためF-16Gと呼ぶ新型のF-16を米空軍に提案している」「F-16GはBlock70の改良型で、同機に詳しい関係者によればコンフォーマル・フューエル・タンク、600ガロンの増槽、赤外線捜索追尾(IRST)システム、照準ポッドのスナイパー、ドラッグシュートが装備されるという」と報じており、今回の動きが具体的な調達計画に繋がるかまでは不明だが、仮にF-16Gの調達が具体化すると「F-35Aを1,763機調達する」という公式目標の達成は非常に怪しくなる。
出典:Anduril
米空軍は2026年5月時点でF-35Aを525機保有し、発注済み分を加えるとF-35Aの保有数は約700機程度(計画値の約40%)になる見込みで、1,763機調達のためにはF-35Aをあと1,000機ほど発注しなければならないが、2027会計年度予算で要求している38機の調達ペースなら約26年かかる見込みだ。
米空軍はF-15EXの調達数を129機から267機(議会は329機まで増やす権限を空軍長官に与えようとしている)に増やす方針で、CCAについてもひとまず1,000機(内500機は2032年までに配備予定)調達するため、ここにF-16Gが200機~300機程度加わるとF-35Aの調達は1,000機程度で終わるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Heather Amador Paulino