中国、少数民族に標準語学習を義務付け 全人代で「民族団結進歩促進法」を承認

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画像説明, 中国政府は長年、チベットなどで少数民族の権利を制限していると非難されている

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は12日、民族の「団結」を促進するためとする大規模な新法を承認した。この法律をめぐっては、少数民族の権利をさらに損なうとの批判も出ている。

「民族団結進歩促進法」は形式上、教育や住宅政策を通じて、公式に認められた56民族の統合を促進する。中国では漢民族が圧倒的多数を占める。同法の反対派は、人々を言語や文化から切り離すものだと指摘している。

この法律は、すべての子どもに対し、幼稚園に入る前から高校を終えるまで、中国の標準語である「普通話(マンダリン)」を教えるよう義務づける。これまでは、チベット語やウイグル語、モンゴル語など、それぞれの母語でほとんどのカリキュラムを学ぶことができた。

米コーネル大学のマグナス・フィスケショー准教授(人類学)は、「この法律は、1949年以降に公式に認められてきた民族的多様性を抑え込むという、最近の劇的な政策転換に沿ったものだ」と指摘した。

「次世代の子どもたちは、いまや孤立させられ、自分たちの言語と文化を忘れるよう強制されている」

しかし中国政府は、次世代に普通話を教えることが、就業の見通しにプラスになると主張。

また、「民族団結進歩促進法」が、「さらなる統一による近代化」促進に不可欠だと説明している。

同法は、全人代で12日に法案が採決・可決された。全人代は、提出された議案を退けたことがない。

この法律は、民族の団結に影響を与え「有害」だと当局がみなす視点を、子どもに植え付ける可能性のある親や保護者を訴追する法的根拠にもなる。

同法はさらに、「相互に組み込まれたコミュニティー環境」の成立を求めている。この点について一部のアナリストは、少数民族の多い地域コミュニティーが分断される可能性があるとみている。

中国政府は2000年代後半に、少数民族の「中国化」と称する取り組みを強めた。少数民族を多数派である漢民族文化に同化させることで、より統一された国家アイデンティティーの構築を始めた。

漢民族は、中国の人口約14億人のうち9割以上を占めている。

中国政府は、チベット、新疆、内モンゴルといった地域で、少数民族の権利を制限していると長らく批判されてきた。

これらの地域で、人々が同化を強制されているという批判も出ている。こうした国家主導の政策は、少数民族居住地での抗議や異議に対してより強硬な姿勢を取るようになった、習近平国家主席の下で加速したと指摘されている。

チベットでは、人々がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世を崇拝しないよう、当局が僧侶を拘束し、寺院を管理している。

BBCが昨年7月に、チベットの抵抗運動の中心となってきた寺院を訪れた際には、僧侶らは恐怖と威圧の下で暮らしていると語った。

僧侶の一人は、「私たちチベット人は基本的人権を奪われている。中国政府は私たちを抑圧し、迫害し続けている。あれは人々に奉仕する政府ではない」と話した。

画像説明, BBCは昨年、数十年にわたりチベットの抵抗運動の中心となってきた僧院を訪れた

人権擁護団体は、中国政府が新疆地区で、イスラム教徒のウイグル人100万人を「再教育」施設と呼ぶ場所に拘束してきたと報告している。国連も2022年、同地域で「深刻な人権侵害」が見られるとして、中国を非難する報告書を公表した

2020年には、中国北部のモンゴル民族が、モンゴル語教育を縮小し普通話を優先する措置に対し、異例の抗議行動を行った。

一部のモンゴル民族が、この措置を自らの文化的アイデンティティーへの脅威と見なし、保護者らは子どもを登校させない形で抗議した。当局はこれを異議の表明だとして、すぐさま取り締まりに動いた。

中国共産党は、さまざまな民族を包摂していると述べている。中国の憲法には、「各民族には自らの言語を使用し発展させる権利」や「自治を行う権利」があると明記されている。

しかし、今回の新法によって習氏の同化政策が固定されると批判する声があがっている。

米コーネル大学のアレン・カールソン准教授は、「この法律は、習近平氏が率いる中華人民共和国では、非漢民族が漢民族多数派にさらに統合し、何よりも政府に忠誠を示さなければならないということを、これまで以上に明確にした」と述べた。

シンガポール国立大学のイアン・チョン(莊嘉穎)教授もBBCに対し、発展と繁栄に焦点を当てる姿勢は「示唆的だ」と語った。

「この言い回しは、少数民族の言語や文化が遅れており、進歩の妨げになっているという意味に読まれかねない」

チョン教授はさらに、習氏の少数民族に対する姿勢は、「北方の漢民族を核とする偉大で強い中国国家をつくるという彼の考え方と一貫している。(中略)少数民族はその核から枝分かれした存在とみなされ、ある意味で派生的だ」と続けた。

「実際にはこれによって、少数民族の文化と言語に対する統制強化、縮小、さらには取り締まりがさらに進むのではないかという懸念が生じている」

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