「黎明」と「富岳」を連携。世界初となるハイブリッドスーパーコンピューターの運用を開始
ただでさえすごいスーパーコンピューターに量子コンピューターが組み合わされたらどうなるのか? それは理化学研究所の今後を見ればわかるだろう。
このほど埼玉県和光市にある理研のキャンパスで、世界初となるハイブリッド量子スパコンの運用が開始されたそうだ。
イオントラップ型量子コンピューター「黎明(れいめい)」は、世界で6番目に高性能なスパコン「富岳(ふがく)」と連携され、量子ハイブリッドコンピューティングの新時代を切り開くと期待されている。
量子コンピューターのすごいところは、現代最強のスーパーコンピューター(スパコン)でも、100垓(がい)年かかる計算をほんの数分で完了する潜在能力を秘めているところだ。
100垓年は10の22乗年なので10,000,000,000,000,000,000,000,000年。つまり宇宙誕生から始めてもまだ解けない計算量となる。
そんな量子コンピューターの大きな課題の1つは、計算ミスをすることだ。量子コンピューターが計算に利用する量子ビットは、非常に繊細で、周囲のノイズや温度の影響を受けやすい。それによってエラーが生じてしまう。
どれほど計算が速くても、正しくなければ意味がない。ゆえにいかに計算を正確にするか、間違いがあればそれをいかに訂正するかが、実用的な量子コンピューターを開発するにあたって重要となる。
今回の量子コンピューターとスパコンの統合は、量子コンピューターの信頼性を高め、かつ従来のスーパーコンピューターを超える計算を実現するため最先端のプラットフォームだ。
この画像を大きなサイズで見るPhoto by:iStock2024年12月に発表されたGoogleの量子コンピューター用チップ「Willow」は「超電導方式」を採用したものだ。
「超電導方式」は、量子コンピューターの素子である量子ビットを絶対零度に近い極低温で超電導状態に保つことで、量子ビットの重ね合わせを実現するチップのこと。
これに対して、世界最大の総合量子コンピューター企業クオンティニュアム社と理化学研究所が共同で開発された「黎明(れいめい)」は、「イオントラップ型」という方式を採用する。
「イオントラップ型」は、原子から電子を1つ取り除くと生じるイオンを真空に閉じ込め、その量子の状態をレーザーで制御することで演算を行う。その大きなメリットの1つは、計算ミスが少ないことだ。
また「黎明」は、物理的なイオン量子ビットをまとめて「論理量子ビット」を作り出す。これは同じ情報をいくつかの場所に保存することになるので、計算ミスの発生を防ぐことにつながる。
なお黎明と富岳のハイブリッドコンピューターは、すでに運用が始まっている。
理化学研究所によれば、それは今後さまざまな科学的発見やイノベーションを起こし、物理・化学・その他応用分野における量子コンピューティング技術の進歩をリードしていくだろうとのことだ。
References: 量子コンピュータ「黎明」が理化学研究所で本格稼働、量子ハイブリッド高性能コンピューティング新時代を切り拓く | 理化学研究所 / World's 1st hybrid quantum supercomputer goes online in Japan | Live Science
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。