トランプ大統領、DEIを諸悪の根源扱い-旅客機事故やインフレ巡り
米カリフォルニア州ロサンゼルス市近郊の山火事や米インフレ、そして29日に発生した首都ワシントンでの旅客機事故を巡り、トランプ大統領と側近らは多様性・公平性・包摂性(DEI)を諸悪の根源扱いし、非難している。
トランプ氏は就任からわずか10日間で、米国からDEIや極端なジェンダーイデオロギーなど「ウォーク(社会正義に目覚めた)」な政策の排除を目的とした大統領令や行政措置など10件を発令した。
こうした中、トランプ氏は30日、ワシントン近郊の空港で旅客機と軍用ヘリコプターが空中衝突した事故について、連邦航空局(FAA)のDEIプログラムのせいだと非難。その前日には、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がインフレを抑制できないのは、DEIやジェンダーイデオロギー、気候変動を巡り多忙なためだとの主張を展開した。
また、新設された「政府効率化省(DOGE)」を率いるイーロン・マスク氏は、カリフォルニア州で猛威を振るう山火事の拡大とロサンゼルス市消防局のDEIイニシアチブとの関連性を指摘するX(旧ツイッター)への投稿を繰り返し再投稿した。
ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのアリソン・テイラー准教授はトランプ氏の発言について、大きな失敗があり、同時にDEIプログラムも実施されていたことを受けて、DEIプログラムが失敗の原因になったという論調だが、「これが真実ではないことは周知の事実だ」と述べた。
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旅客機事故に関する記者会見で、トランプ氏は事故に関する新たな情報をほとんど提供しなかった一方、FAAが特定の障害を持つ人々に対して多様な採用方針を持っていることを指摘。FAAの方針では「多様性が安全かつ効率的な旅行を保証するFAAの使命の達成に不可欠としているが、私は正反対だと思う」と述べた。
DEIプログラムが事故の要因と判断した理由について問われると、トランプ氏は「常識」からそう結論付けたと言及。「私には常識がある。だが残念ながら、多くの人々はそうではない」と話した。
米国障害者協会(AAPD)の広報担当者、ジェス・デビッドソン氏は、トランプ氏が多様性を求める採用方針に反対するために「この悲劇を活用するのは極めて不適切だ」と非難。「そのようなことをすれば全ての米国民がより安全ではなくなる」とコメントした。
トランプ氏は29日、米金融当局が「DEIやジェンダーイデオロギー、グリーンエネルギー、偽の気候変動」などに費やす時間が少なければ、インフレは問題になっていなかっただろうと発言した。
これについてテイラー氏は「まったくもって悪意のある愚かな主張だ」とした上で、しかし「DEIの取り組みに対して広範かつ本心からの不満を抱く企業は多く、トランプ氏はこれをうまく利用している」との見方を示した。
原題:From Air Crash to Inflation, DEI Is Trump’s Latest Bogeyman(抜粋)