【米国市況】株反落、サービス業の足踏みでFRBの責務に新たな課題
5日の米株式相場は反落。経済指標で米国のサービス業停滞が示され、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策課題を巡る懸念が強まった。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6299.19 -30.75 -0.49% ダウ工業株30種平均 44111.74 -61.90 -0.14% ナスダック総合指数 20916.55 -137.03 -0.65%S&P500種株価指数は小高く始まり、一時は過去最高値に迫ったが、米供給管理協会(ISM)の非製造業総合景況指数が発表されると勢いを失い、売りに押される展開となった。
ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は「夏の後半にかけて不安定な相場が続くとみている。金利政策の道筋が依然として不透明であり、相次ぎ発表される経済指標に極めて敏感な状態にあるからだ」と語った。
ISM非製造業総合景況指数では、サービス業の活動が実質的に停滞したことが示された。需要は振るわず、コストが上昇するなかで、企業は人員を削減した。
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今回の指標は景気に警戒のシグナルを送る他の統計と整合した。先週発表された7月の雇用統計では従来の想定より著しい弱い労働市場が浮き彫りになり、インフレ調整後の個人消費支出は微増にとどまった。
ルネサンス・マクロの米経済調査責任者、ニール・ダッタ氏は「雇用が冷え込むなかで、物価上昇圧力が持続するとは考えにくい」と話す。物価上昇を家計が吸収できるほどの強い需要は見込めず、「だからこそ保険としての利下げは理にかなっている」と述べた。
注目が集まる次期FRB議長候補についてトランプ大統領は、ベッセント財務長官が指名を辞退したとCNBCとのインタビューで明らかにした。
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ISM非製造業統計について、キャピタル・エコノミクスのアレクサンドラ・ブラウン氏は「米金融当局が向こう数カ月にわたって直面する課題を浮き彫りにしている。活動や雇用の指標が弱含む一方で、仕入れ価格指数は直近の景気サイクルでの最高水準に達した」と述べた。
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「根強いインフレ兆候と弱い経済指標が綱引き状態となるなか、トレーダーは引き続き次の米利下げ時期について考えを巡らせている」と語る。
景気減速が続くなかで過熱気味の株価バリュエーションへの警戒感が広がれば、S&P500種種株価指数の見通しが短期的に悪化し始める可能性もあるとも指摘した。
国債
米国債相場は総じて軟調。短・中期債を中心に利回りは上昇した。今週は3回の国債入札が予定されている。第1弾の3年債入札が行われたが、需要は低調だった。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.78% -1.6 -0.33% 米10年債利回り 4.21% 1.4 0.33% 米2年債利回り 3.72% 4.5 1.22% 米東部時間 16時40分今回の入札結果は利回りが下げ過ぎており、インフレ指標が利下げを阻むリスクを考慮すると割に合わないという市場の一部懸念を裏付ける内容となった。ISM非製造業総合景況指数では、仕入れ価格指数は2022年10月以来の高水準となった。
5800億ドル規模の3年債入札では最高落札利回りが3.669%。入札前取引(WI)水準は3.662%だった。最高落札利回りが事前の市場水準を上回る場合、市場では「テールした」と表現される。これは、投資家がより高い利回りを求めたことを意味する。
ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「ISMのインフレ指標を受けて3年債入札がテールしたのは無理もない」と指摘。同指標は米金融当局に様子見の余地を与えるものだと述べた。
為替
外国為替市場ではドルが小幅安。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は3営業日続落した。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1209.72 -0.91 -0.08% ドル/円 ¥147.58 ¥0.49 0.33% ユーロ/ドル $1.1573 $0.0002 0.02% 米東部時間 16時40分スイス・フランは対ドルで上昇。米国がスイスに39%の関税を課すとしたことを受け、市場ではスイス側の対応に注目が集まっている。同国のケラーズッター大統領とパルムラン副大統領兼経済相は5日にワシントンを訪れ、関税の引き下げを求める提案を行う。米国の関税の発動は7日に迫っている。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のグローバル市場調査責任者、デレク・ハルペニー氏は「合意が成立して関税が引き下げられなければ、スイスは今後、国内総生産(GDP)成長率低下とインフレに直面する可能性が高い」と述べた。
円相場は対ドルで下落。午前の取引では一時1ドル=147円83銭まで売られる場面もあった。
原油
ニューヨーク原油先物は4日続落。ロシアがウクライナでの戦争をめぐる二次制裁の可能性を回避すべく、トランプ米大統領に対する譲歩案の選択肢を検討しているとの報道を受けて、売りが膨らんだ。
関係者によると、空爆の一時停止がロシア側からの提案の一つとなり得る。ただ、フィナンシャル・タイムズの報道が伝わると、原油先物はこの日の安値を離れた。同紙によると、プーチン大統領が停戦に同意しない場合、トランプ氏はロシアの「シャドーフリート(影の船団)」と呼ばれる石油タンカーをブラックリストに載せることを検討している。
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ウクライナとの停戦合意の期限である 8 月 8 日を数日後に控え、ウィトコフ米特使は今週、ロシアを訪問する予定。
ラボバンクのグローバル・エネルギー・ストラテジスト、ジョー・デラウラ氏は「トランプ氏のロシア制裁はほとんど効果がない。地理的に広大で、インドと中国との経済的結びつきが深い、世界有数の産油国ロシアによる石油流通に、影響を与える唯一の手段は物理的な封鎖だ」と述べた。
原油市場では荒い値動きが続いており、最近は70ドル前後まで上昇した後、再び下落局面にある。ロシア産原油購入者への制裁措置をトランプ大統領が実行するかどうかを、市場は見極めようとしている。
英石油大手BPのマレー・オーチンクロス最高経営責任者(CEO)はブルームバーグテレビジョンでのインタビューで、「ロシアとイランに対する制裁や、中国の在庫に、原油市場の需給要因が絡み合う中、何が起こるかを予測するのは非常に困難だ」と発言。「これらの要因が今後の原油価格を左右するだろう」と述べた。
トレンド追随型の商品トレーダーである商品投資顧問業者(CTA)は、価格下落時に最大規模の66%を売却するなど下落に拍車をかけていると、TDセキュリティーズのシニアストラテジスト、ダニエル・ガリ氏が指摘。「ほぼすべてのシナリオにおいて、CTAは今週中にWTIとブレント原油のロングポジションを大量に売却するだろう」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、前日比1.13ドル(1.7%)安の1バレル=65.16ドル。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.6%下げて67.64ドルで引けた。
金
金スポット相場は小幅ながら4日続伸。最近の経済指標悪化を受けて、連邦公開市場委員会(FOMC)が来月に金利を引き下げるとの見方が強まり、金の買いが優勢になった。
貿易紛争に加え、ロシアのプーチン大統領に対するウクライナとの停戦合意期限が迫る中での緊張も、金の支援材料となった。
INGグループの商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏は「トランプ大統領の関税措置によるインフレ上昇懸念と、米経済の減速懸念が金需要を押し上げている」と述べた。「利下げ観測が強まる中、金の強気な勢いはさらに強まり、新たな高値を更新する可能性がある」と語った。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時46分現在、前日比6.14ドル(0.2%)高の1オンス=3379.73ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、8.30ドル(0.2%)高の3434.70ドルで引けた。
原題:Stocks Fall as US Services Flash Warning Signals: Markets Wrap
Treasuries Hold Losses as Week’s First Auction Draws Cool Demand
Oil Falls as Possible Russia Air Truce Eases Crude Supply Risks